- 昨今の融資環境と不動産投資の現状
最近、アパートローンなどの不動産融資は非常に厳しくなっています。
金融機関が融資に慎重、
いわゆる「及び腰」になっているのが実情です。
背景にはコロナ禍の影響もあり、
銀行の資金供給先が不動産投資から、
一般企業の資金繰り支援へとシフトしていることが挙げられます。
国が保証する融資スキームなども増えており、
金融機関側からすれば、
リスクの低い企業融資に注力している状態です。
- 不動産M&Aとは何か
このように不動産単体への融資が難しい局面で、
一つの有力な選択肢となるのが「不動産M&A」です。
M&A(Mergers and Acquisitions)とは「企業の合併・買収」を指しますが、
不動産M&Aとは、
魅力的な収益物件を所有している「会社そのもの」を買い取る手法です。
通常、不動産を購入する際はアパートローンを検討しますが、
M&Aの形を取ることで
「事業の買収資金」として融資を受けられる可能性が出てきます。
銀行にとっても、
単なる不動産購入より「事業全体を買収する」という形の方が、
融資の土俵に乗りやすいケースがあるのです。
- 成功しやすいターゲットと「仕掛け型」のアプローチ
しかし、不動産M&Aに適したターゲット企業を見つけるのは容易ではありません。
特に、大家業を法人で営んでいるような会社は、
管理の手間が少ないため、
経営能力が多少不足していても事業を継続できてしまいます。
そのため、なかなか売りに出されることがありません。
狙い目となるのは、以下のようなケースです。
- 非専門業者が物件を保有している場合:
本業は部品商社や製造業だが、
安定収益のために収益物件を数棟保有している会社。 - 本業の支援が必要な場合:
経営が悪化した本業を助けるため、
保有している収益物件を含めて会社を売却したい、
あるいは事業譲渡したいというニーズ。
こうした情報を、
不動産登記簿などを地道に調べて探し出し、
ダイレクトに交渉を持ちかける「仕掛け型」のM&Aが、
成功率の高いアプローチとなります。
- 不動産M&Aにおける注意点とリスク
不動産M&Aは有効な手段ですが、
物件単体の購入とは異なる難しさがあります。
- 適正な評価(デューデリジェンス):
会社を丸ごと買うため、
物件の価値だけでなく、
会社の負債や法的なリスクも精査しなければなりません。
個人間では適正な評価が難しいため、
専門家の介入が不可欠です。 - 銀行のシビアな視点:
銀行は「買い手に、買収した事業を運営する能力があるか」を厳しくチェックします。
事業内容に精通していない場合、
融資のハードルは高くなります。 - 事業の引き継ぎ:
会社を買うということは、
その会社の従業員やこれまでの取引も引き継ぐ可能性があるため、
それ相応の覚悟とノウハウが必要です。
まとめ
不動産M&Aは、
融資が厳しい時代に収益物件を手に入れるための高度な戦略の一つです。
しかし、表面的な物件の魅力だけでなく、
企業の財務状況や事業継続性までをしっかりと組み立てていく必要があります。
一つの手法に固執するのではなく、
数ある「引き出し」の一つとして、
専門家と相談しながら慎重に検討してみてください。
要約
- 融資環境の変化:アパートローンが厳格化する中、銀行は企業融資へシフト。
物件単体の調達が難しい局面が続く。
- 不動産M&Aの要点:収益物件を「保有する会社そのもの」を買う手法。
事業買収としての融資(土台は事業性評価)を得られる余地があり、打開策になり得る。
- ターゲット選定:非不動産本業が副業的に保有する物件会社、
本業支援のために資産をまとめて売却したい会社が狙い目。
登記・ネットワークを基に「仕掛け型」で直接打診が奏功しやすい。
- リスクと留意点:会社丸ごとの買収ゆえ、負債・法務・税務・労務を含む総合デューデリが不可欠。
銀行は買い手の運営力・PMI計画を厳しく審査。
承継(人・契約)の実務負荷も高い。
- 結論:不動産M&Aは「引き出し」の一つ。
物件の魅力だけでなく、会社・契約・税務・資金調達を統合設計し、専門家と進めることが成功条件。
例え話
建物だけを
買うのではなく、
建物を載せた「船」ごと
引き受けるのが
不動産M&Aです。
出航前にドックで
船底(負債・契約・法務)を
点検するのが
デューデリジェンスに当たります。
この動画から得られること
- 不動産M&Aの全体像(メリット/デメリット、株式譲渡vs事業譲渡の違いと税務影響)
- 銀行の評価軸(事業性・スポンサー力・運営計画・DSCR/LTV・担保/コベナンツ)と資金調達の設計
- ターゲティングとソーシング(登記・士業ネットワーク・M&A仲介・ダイレクト打診の作法)
- デューデリの勘所(財務・税務・法務・不動産・環境・労務)と赤旗の見抜き方
- 契約実務(表明保証・価格調整・競業避止・付随合意)とPMI100日プランの作り方
専門家の付加価値(実務ポイント・チェックリスト)
- スキーム選択(税務・コスト)
- 株式譲渡:不動産取得税・登録免許税・消費税の発生を回避しやすいが、
簿価引継で減価償却のステップアップ不可。
潜在負債承継リスクは高い。
- 事業譲渡:資産選別と簿価ステップアップが可能。
建物等に消費税、登録免許税・不動産取得税が発生。契約移管・対抗要件整備が必要。
- 買収ファイナンス設計
- 指標:LTV目安60〜70%、DSCR>1.2、
金利+1〜2%感度試算、
返済期間は賃料残存期間・建物耐用年数と整合。
- 担保:株式譲渡担保、賃料債権譲渡、根抵当・保証、財務コベナンツ(稼働率・DSCR閾値)。
- ターゲット探索(仕掛け型)
- 登記簿で所有者属性・担保状況を抽出→企業DBと突合→決算公告の健全性チェック。
- 入口:顧問税理士・地銀・信金ネットワーク、M&A仲介(地場含む)、業界団体・商工会議所。
- デューデリジェンス(赤旗)
- 財務/税務:賃料の期ズレ、広告料・PMフィーの水準、未払租税、公租公課の滞納、消費税申告の整合。
- 法務:権利関係(借地・地役権)、賃貸借契約の瑕疵(定借/普通、更新料、原状回復)、反社チェック。
- 不動産:検査済証の有無、既存不適格、耐震・消防・用途違反、修繕履歴、長期修繕計画。
- 環境:土壌汚染、アスベスト、PCB、水質。
是正コストの見積。
- 労務/取引:従業員の雇用条件、主要取引の解約条項、サプライヤー集中。
- 契約(SPA)の勘所
- 表明保証の範囲・存続期間・上限(Cap)・少額免責(De Minimis)・バスケット・エスクロー/保証保険。
- 価格調整(運転資本/純有利子負債)とクロージング条件、競業避止・経営者の協力条項。
- PMI(100日プラン)
- ガバナンス整備(権限/社内規程)、口座・会計科目統一、PM/AM契約の再交渉、AD最適化、
修繕計画の更新、KPI(稼働率/NOI/回収日数)の週次管理。
- 実務チェックリスト(着手順)
- 1)投資仮説・想定リターン・許容LTV/DSCRの定義
- 2)スキーム比較(税額・諸税・法務コスト)と資金計画
- 3)ターゲットリスト作成→NDA→資料室→Q&A
- 4)財務/法務/不動産/環境DDの実施と赤旗対策
- 5)タームシート→SPA交渉(表明保証・価格調整)
- 6)クロージング準備→PMI100日プラン開始
視聴後アクション
- 今日やること:投資方針を1枚に。
目標利回り、許容LTV、DSCR基準、希望エリアと規模を書き出してください。
- 今週中:ターゲットの当たりを付けます。
登記簿で所有者属性が「非不動産本業」の物件を3件洗い出し、NDA前提の打診先候補を作成。
- 2週間以内:銀行に「事業買収としての融資ヒアリング」を実施。
想定賃料・費用・返済案をA4一枚で提示し、審査観点を把握。
- 今月中:DDのひな形(財務・法務・不動産・環境・税務)を整え、
表明保証の標準条項案と価格調整スキームの草案を準備。
- 迷ったら:「物件だけでなく何を引き継ぐのか(契約・負債・人)」を紙に列挙し、
分からない項目に丸を付けて専門家へ相談してください。
ここからが最短距離です。
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