相続税の納税は金銭納付が原則ですが、
延納によっても金銭での納付が困難な場合に、
一定の要件を満たせば、
不動産で納税する物納という方法も選択できます。
今回は、物納の仕組みやメリット・デメリット、
手続きの流れ、注意点などについて説明します。
物納の手続きの流れは、
大きく次の通りです。
まず、
物納を申請する税額を算定し、
物納対象の相続財産から適切な財産を選定します。
次に、
物納申請書のほか、
金銭納付を困難とする理由書、
財産ごとの必要書類を作成します。
そして、
物納申請書と必要書類を
原則として相続税の納付期限までに、
被相続人の死亡の時における住所地を所轄する税務署に提出します。
なお、
期限内の提出が困難な場合には、
提出期限延長届出書を提出することで、
最長1年まで期限延長が可能です。
物納申請を行うと、
申請書の提出期限の翌日から原則3ヶ月以内に審査が行われ、
物納申請財産が不動産である場合には、
税務署と財務局による現地調査も実施されます。
審査によって、
物納申請の内容が法律で定める要件を満たしており、
物納申請財産が物納に充てる財産として適当であると判断された場合は、
相続税物納許可通知書が送付されます。
そして、
物納が許可された財産について所有権移転手続きを行うと
物納財産収納済証書が交付されます。
一方、
物納申請の内容が要件を満たしておらず、
物納申請財産が不適格であると判断された場合には、
相続税物納却下通知書が送付されます。
なお、
物納する際には、
相続税の納付期限までに申請しなけばならない、
要件が厳しく申請しても却下されることもある、
利子税がかかることがある点に注意する必要があります。
【この動画から得られること(Learning Outcomes)】
- 物納の位置づけ:金銭納付→延納→物納(最終手段)の順序と適用要件
- 物納のメリット/デメリット
- 〇 大口の現金流出を抑制/納税資金化が難しい不動産の処理
- × 要件が厳格/却下リスク/利子税発生の可能性/整備コスト・時間
- 手続の流れ(不動産物納を中心に)
1) 物納対象税額の算定・対象財産の選定
2) 申請書・理由書・必要書類の準備(登記事項証明、公図/測量図、境界確認書、評価資料 等)
3) 申告納付期限までに税務署へ提出(延長届で最長1年延長可)
4) 審査(原則3か月以内)・税務署/財務局の現地調査
5) 許可→所有権移転→収納済証書/却下→代替納付策
- 不動産の適否チェック(主なポイント)
- 単独所有・抵当/差押なし・担保権抹消済み
- 境界確定・越境/私道負担の整理・地目/用途制限の適合
- 占有者なし(または明確な賃貸契約・滞納なし)
- 管理費・修繕積立金等の滞納なし(区分)
- 土壌汚染・法令違反・未登記建物の解消
- 却下時の対応と資金繰り選択肢:延納見直し/資産売却/借入/分納交渉 ほか
【例え話】
物納は「非常口」。
火災(資金不足)時に脱出できますが、
通路(権利関係・境界・滞納)の障害物を片付け、
扉(要件)を開けられる鍵(書類と期限)を持っていないと出られません。
準備なく頼ると、扉の前で立ち尽くすことになります。
【実務チェックリスト(要点)】
- 期限:申告納付期限までに申請(延長届で最長1年)/審査3か月目安
- 理由書:金銭納付困難の客観資料(資金繰り表・売却困難性等)
- 権利:単独所有/抵当・差押・仮登記の抹消/共有は避ける
- 境界:確定測量・越境是正・私道承諾/地目・用途制限の適合
- 占有:無権限占有者なし/賃貸は契約明確・滞納なし
- 区分:管理費・積立金滞納なし・管理体制の健全性
- 書類:登記事項証明、公図/測量図、固定資産評価、境界確認、管理関係資料
- コスト:測量・登記・抹消費用/利子税発生の有無
【視聴後アクション(CTA)】
- 延納の可否を先に検討し、物納を選ぶ場合は期限カレンダーを作成
- 物納候補不動産の適否をチェックリストで診断(権利・境界・占有・滞納)
- 申請書・理由書・添付書類を着手、必要なら延長届で時間を確保
- 却下時の資金繰り代替策(売却・借入・分納)も並行で検討し、専門家に早期相談
【専門家としての付加価値】
- 物納は「選べば通る」制度ではありません。
却下リスクを初期診断(権利・境界・占有・管理)で数値化し、
延納・換価・借入を含めた“多経路”で納税計画を組むのが現実解です。
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