防衛費の財源確保などを背景に、
今後の法人税増税が現実味を帯びてきました。
政府の税制改正大綱にも増税の方針が盛り込まれており、
政権が大きく変わらない限り、
負担増は避けられない見通しです。

このような状況下で、
中小企業がいかに自衛し、
キャッシュを内部に留めるかは極めて重要な経営課題です。
今回は、資本金1億円以下の中小企業が活用できる、
主な税制優遇措置とその注意点について解説します。

  1. 赤字を武器にする「欠損金」の処理

会社が赤字(欠損金)を出した際、
それを利益と相殺して税負担を軽減する仕組みが2つあります。

  • 繰越欠損金の控除(将来の利益と相殺)
    青色申告法人であれば、
    発生した赤字を翌年以降、
    最長10年間にわたって繰り越すことができます。
    将来黒字が出た際にこの赤字と相殺することで、
    法人税をゼロに近づけることが可能です。
    資本金1億円以下の中小企業の場合、
    期限内であれば赤字の全額を利益から差し引ける点が大きなメリットです。
  • 欠損金の繰戻し還付(過去に払った税金を取り戻す)
    「昨年は黒字で税金を払ったが、今年は赤字になった」という場合、
    今年の赤字を前年に遡って適用し、
    既に納めた税金の還付を受けることができます。
    【注意点】
    直近の資金繰り(キャッシュフロー)改善には非常に有効ですが、
    この還付請求を行うと、
    税務調査の対象となる確率が大幅に上がる傾向があります。
    調査のリスクと還付額を天秤にかけ、
    慎重に判断する必要があります。
  1. 中小企業だけに認められる「軽減税率」

法人税の基本税率は23.2%ですが、
中小企業(資本金1億円以下)には軽減税率が適用されます。

  • 年所得800万円以下の部分:15%
  • 年所得800万円を超える部分:23.2%

地方税を含めた実効税率で見ても、
所得800万円以下に抑えられれば約28%程度ですが、
それを超えると3334%程度まで跳ね上がります。
この「800万円のライン」を意識した利益管理が重要です。

  1. 積極的に活用したい各種「税額控除・特別償却」

増税への対策として、
特定の条件を満たすことで税金が直接安くなる制度があります。

  • 所得拡大促進税制(賃上げによる減税)
    役員報酬を除く従業員への給与支給額を前年より一定以上増やした場合、
    その増加額の一部を法人税から直接控除できます。
    人手不足の中での賃上げを、
    実質的に国が補助してくれる制度です。
  • 中小企業経営強化税制(設備投資による減税)
    経営力向上計画の認定を受けた企業が、
    特定の設備を購入した場合、
    購入額の全額を即時償却(100%経費化)するか、
    税額控除を受けることができます。
  • 研究開発税制
    試験研究費を支出した場合、
    その額に応じて法人税額を控除できる制度です。
  1. 対策は「決算前」が鉄則

ここで挙げた優遇措置の多くは、
決算が過ぎてからでは適用できないものがほとんどです。
特に、経営力向上計画の申請や設備投資、
賃上げの計画などは、期中に準備を進めておく必要があります。

また、これらの特典を享受するためには「青色申告」の承認が必須条件です。
無申告やずさんな帳簿管理によって青色申告が取り消されてしまうと、
赤字の繰り越しすらできなくなり、
経営に致命的なダメージを与えかねません。

結論:制度を正しく理解し、賢く納税を

近年、国税局は大企業(ソフトバンクの事例など)や富裕層への課税強化をアピールしていますが、
その裏で中小企業にもじわじわと増税の波が押し寄せています。

「払わなくてよい税金」を払わないためには、
決算の数ヶ月前から専門家(税理士など)と綿密な打ち合わせを行い、
自社に最適な優遇措置を組み込むことが不可欠です。
節税によって浮いた資金を従業員の待遇改善や新規事業への投資に回し、
企業の生命力を高めていくことこそが、
最強の増税対策となります。

要約

- 背景
  - 防衛費財源などを背景に法人税の増税方針が現実化。
 資本金1億円以下の中小企業は、合法的な優遇措置でキャッシュを守る設計が急務。

- 主要な打ち手(骨子)
  - 欠損金の活用:繰越欠損金(最長10年・中小は原則100%控除可)
       /繰戻し還付(前年納税の還付。調査リスクは上昇)
  - 軽減税率:年所得800万円以下部分は15%、超過分は23.2%。
      地方税を含む実効税率は約28⇔3334%へ跳ね上がるため、800万円のライン管理が有効
  - 税額控除・特別償却:所得拡大促進税制(賃上げ減税)、
           中小企業経営強化税制(即時償却 or 税額控除)、
           研究開発税制 など

- 実務上の要諦
  - 適用の大半は「期中の設計」が必要。
 決算後は手遅れになりやすい
  - 青色申告は大前提。
 帳簿不備や無申告は優遇の土台を失う

- 結論
  - 決算数カ月前から税理士と設計し、「払わなくてよい税金」を払わない。
 浮いた資金を人件費・投資に再配分することが最強の増税対策

 

この動画から得られること

- 制度理解:欠損金(繰越/繰戻)・軽減税率・各種税額控除/特別償却の全体像
- 収益設計:800万円ラインの利益管理、役員報酬・賞与・投資とのバランス
- 投資減税:賃上げ減税・経営強化税制・研究開発税制の適用手順と留意点
- キャッシュ戦略:繰戻還付の資金繰り効果と調査リスクの見極め
- ガバナンス:青色申告の維持、帳簿・証憑整備の要点
- 実行計画:決算前のスケジュール、申請・認定・取得の順序と必要書類

 

専門家の付加価値

- 欠損金のKPI
  - 繰越欠損:最長10年、青色・期限内申告・帳簿保存が前提。
      中小は控除限度原則100
  - 繰戻還付:前期黒字×税率相当額のキャッシュイン。
      調査選定リスク上昇(過去年度の論点洗い出しを先行)

- 800万円ラインの運用
  - 目標課税所得レンジ:600800万円に収める設計(超過分は実効税率急上昇)
  - 期末調整メニュー:役員報酬見直し、決算賞与(要事前通知・支給要件)、前倒し投資/修繕の費用化

- 設備と賃上げの減税
  - 中小企業経営強化税制:経営力向上計画の認定
           →対象設備の取得
           →即時償却/税額控除(いずれか選択)。
            事前の計画認定が鍵
  - 賃上げ減税:要件・控除率は年度改正で変動。
       対象は役員報酬を除く給与等。
       賃上げ方針・就業規則・支給実績の整合を証憑化

- 研究開発税制
  - 試験研究費に応じた税額控除。
 範囲・算式は最新通達を参照、費目の線引きを事前整理

- コンプリアンス
  - 青色申告の維持:総勘定元帳・証憑(請求書/契約/見積/検収)・棚卸の整合。
         電子帳簿保存法への対応

- 年間タイムライン(例)
  - 期首:利益計画と800万円ライン設定
    /Q1–Q2:賃上げ方針・投資計画確定、認定申請
    /Q3:進捗点検・利益見通し更新
    /Q4:決算賞与・投資執行・決算整理

 

例え話

増税局面の経営は「登り坂の自転車」に似ています。
重くなるペダル(税負担)に対して、
ギアを落とす(軽減税率・欠損金)か、
軽量化する(即時償却・減税)か、
ペダリングを工夫する(賃上げ減税)。
坂に差しかかる前(決算前)に変速すれば、
失速を防げます。

 

視聴後アクション

- 1. 現状把握:今年度の着地利益・欠損金残高・主要投資計画・賃上げ方針をA4一枚に整理
- 2. 800万円の設計:課税所得のレンジを定め、期末の役員報酬・賞与・投資の調整余地を試算
- 3. 減税の適用可否:賃上げ減税(要件)
         /経営強化税制(認定の可否)
         /研究開発税制(費目の該当)をチェック
- 4. 認定と発注:経営力向上計画の事前認定対象設備の契約・取得の順で実行
- 5. 還付の判断:繰戻還付の還付見込と調査リスクを税理士と二者択一評価
- 6. 証憑を整える:青色の要件を満たす帳簿・契約・給与台帳・議事録を点検
- 7. 税理士と会議:決算23カ月前に優遇の最終組み込みを決定し、申告資料に反映

 

運用の勘所

- 期中主義:決算後は多くが適用不可。認定・発注・取得の順序を厳守
- 人件費の整合:賃上げの実態と帳票(賃金台帳・就業規則・支給決議)を一致させる
- 設備の線引き:経営強化税制の要件(型式・性能・取得価額)を事前確認
- 研究開発の定義:業務委託・外注費の取扱い、成果の帰属を契約に明記
- 青色の維持:電子帳簿保存法・インボイス制度の対応抜けを防ぐ

 

税負担は「設計」で差が出ます。
期中から優遇を計画に織り込み、
証憑で裏付け、
決算で確定
—この一連の流れがキャッシュを守り、
攻めの投資余力を生みます。

 

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