通常、不動産の所有者が変わるときには所有権移転登記を行います。
しかし、
一時的に仲介者が入り、
仲介者が一旦不動産を購入して
すぐに不動産を売却するようなケー
スもあります。
このようなときには、
登記を移転させる
『中間省略登記』
の方がコストも安く済みますが、
法改正により簡単にはできなくなってしまいました。
そこで今回は、
中間省略登記と同じような結果が得られる方法に
ついてご説明しま
す。

法改正で難しくなった中間省略登記

たとえば、
不動産がA→B→Cと移転したとき、
A→Cに直接所有権が移転したように登記をすることを『中間省略登記』
といいます。
間にいるはずのBについては、
所有権移転登記が省略されています。

中間省略登記は、
これまで所有権移転登記の実務でもよく行われていました。
その理由としては、
コストの削減という大きなメリットがあるからです。
たとえば不動産の所有権がA→B→Cと移転する場合、
この通りに所有権移転登記を行うとすれば、
A→Bへの所有権移転登記と、
B→Cへの所有権移転登記という2回の登記が必要です。

登記回数が2回になれば
登録免許税も2回分必要となりますが、
中間省略登記ができれば登記は1回で済むため、
登録免許税も1回分で済むことになるのです。

ただし、
中間省略登記を行うと、
所有権の移転を正確に登記上で追うことができません。
また、
2004年に不動産登記法が改正されてからは、
登記申請をする際に、
登記をする原因となった事実を記載した情報(登記原因証明情報)を添付しなければならなくなりました。

その結果、
登記をする原因となった事実を記載した情報とは異なる内容での登記、
すなわち中間省略登記については認められなくなったのです。
たとえA、B、C、三者の同意があったとしても、
A→B、B→Cと所有権が順に移転する以上、
A→Cという登記は
法務局では認められないというのが現状です。

中間省略登記に代わる方法もある

このように、
法改正によって法務局では中間省略登記が認められなくなってしまいました。
ただ、コストや手間を減らせる中間省略登記は、
依然として需要があります。
そこで現行では、
中間省略登記と同じく登記を一度で済ませられる、
下記のような方法がとられることがあります。

(1)『第三者のためにする契約』という方式にする

●まず、AとBが不動産の売買契約を結ぶ
●次に、BとCが不動産の売買契約を結ぶ

この場合、まず、AB間の第一売買では、

1.第三者のための契約
2.所有権の留保
3.受益の意思表示の受領受託
4.買主の移転債務の履行引受

に関して、特約を設ける必要があります。

これをもう少しかみ砕くと、
『Bが不動産を買うが、所有権は不要である。したがって、Aは所有権について、指定するもの(C)に直接移転する』という内容で特約を設け、
Bがそれについて代金を支払うことになるのです。

これが済むと、BC間の第二売買が行われます。
ここでは、『BがCに不動産を売るが、所有権に関してはAから直接移転してもらう』ものとして、
代金がCからBに支払われることになります。

この際には、
所有権移転債務に関する第三者弁済に関する特約を設ける必要があり、
具体的には『AB間の決裁が先行しても、Bが所有権の移転先(C)を指定するまでは、所有権がAに留保されたままである』ということを改めて確認します。

こうして、
まずCからBに代金を支払い、
BがAに代金を支払い、
Bが所有権移転先としてCを指定することで、
不動産の登記を、
AからCに直接移転することが可能になるのです。

これが『第三者のためにする契約』の全体像です。

(2)『買主の地位を譲渡する』という方式にする

●まず、AとBで不動産の売買契約を結ぶ
●次に、BがCに買主の地位を譲渡する

AがBに不動産を売却した際、
Aは売主、Bは買主ということになります。
しかし、
Bはこの“買主”としての地位を第三者であるCに譲渡するのです。
そうすることによって、
所有権がAから直接Cに移転するので、
不動産の登記はA→Cに
直接移転することが可能となります。

法律の改正によってこれまで行われていた
中間省略登記は認められなくなりましたが、
今は
『第三者のためにする契約』
『買主の地位の譲渡』
という契約方法を使うことによって、
中間省略登記と同じ効果を得ることもできます。
仲介者のいる不動産売買をする場合でも、
法改正があったから仕方ないとあきらめずに、
近い形の取引ができる可能性について
考えてみるのもよいでしょう。

※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。

税理士法人 A to Y
不動産業(登記)メルマガ 12/9号 引用
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