相続の場面において問題になるケースが多いのが、『特別受益』です。
特別受益とは、相続人のなかに特別に被相続人から利益を得ていた人がいる場合の、その受けた利益のことです。
今回は特別受益の対象となった不動産が、遺産分割の際にどのように評価されるかを説明します。
今回は、評価方法について説明します。
なお、ここでは、特別受益にあたる贈与と当たらない贈与についての区別については省きます。
不動産の生前贈与の評価方法とは?
不動産の場合は、時期や状態によってその価値が変わります。
たとえば、同じ広さの同じ土地でも、30年前の土地の価格と現在の土地の価格は異なります。
特別受益者がいる場合、本人は特別受益不動産を安く評価してもらいたいと考えるでしょう。
一方、他の相続人からすれば特別受益不動産を高く評価してもらいたいと考えるでしょう。
では、実際にはどのように評価されるのでしょうか。
不動産の生前贈与の評価は、
被相続人の相続開始時の価値を基に評価する『相続開始時説』が通説といわれています。
実際、実務においても相続開始時説に従って遺産分割が行われることが多いのです。
たとえば、特別受益を受けた当時、
特別受益不動産の価値が1,000万円であったとしても、
相続開始時に2,000万円の価値があれば、
2,000万円相当の特別受益を受けたと評価して遺産分割が行われます。
では、次の場合はどうなるでしょうか。
(1)売却してしまった場合
たとえば、すでに特別受益者が特別受益不動産を売却してしまっていた場合は
どのように特別受益を評価することになるでしょう。
実務的には、
特別受益不動産が特別受益者の下にあるままの状態とみなして、
相続開始時の価値を基に評価して遺産分割を行います。
なお、特別受益不動産の売却のほか、
修繕や特別受益者の行為によって特別受益不動産が滅失した場合も同じ扱いとなります。
(2)負担付贈与を受けた場合
特別受益を受けた当時2,000万円の価値のある特別受益不動産を、
1,000万円の債務を負うことを条件に譲り受けたとします。
そして相続開始時の特別受益不動産の価値が3,000万円であった場合、
どのように特別受益を評価すればよいのでしょうか。
特別受益を受けた当時を基準として、
特別受益不動産の価値から1,000万円の債務を差し引いて、
その残余価値を現在価値に引き直すのでしょうか。
それとも特別受益不動産の相続開始時の価値から1,000万円の債務(金銭価値)を現在価値に引き直した金額を控除して、
その差額を特別受益と評価するのでしょうか。
実務的には後者の考え方で遺産分割を行うことが多いと思われます。
具体的には、特別受益不動産を3,000万円と評価し、
1,000万円の債務を貨幣価値の変動(物価指数等を参考)を考慮してその差額を特別受益とします。
不動産の特別受益は、遺産分割の実務でも度々問題となりますが、
相続開始時の価値を基準とすることを覚えておくとよいでしょう。
※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています
税理士法人 A to Y
生前に贈与された不動産は遺産分割でどのように評価される?
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