今回は、2022年(令和4年)10月から加入要件が緩和された
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の受け取り方法と税金について解説します。
- iDeCoとは何か?
iDeCoは、公的年金にプラスアルファで準備する「確定拠出年金」の一種です。
高齢期に資産を受け取ることを前提とした商品で、
NISAと同様に運用の仕組みがありますが、
より「老後の資産形成」に特化しているのが特徴です。
- 令和4年10月からの主な改正点
改正により、加入対象や受給開始時期がより柔軟になりました。
- 受給開始時期の選択幅が拡大:
これまでは60歳から70歳の間で選択できましたが、
改正後は60歳から75歳までの間で、
いつ受け取り始めるかを選べるようになりました。 - 加入対象者の拡大:
以前は国民年金の被保険者(自営業者など)が中心でしたが、
今回の改正で、
60歳以上65歳未満の会社員や公務員(国民年金第2号被保険者)、
国民年金の任意加入者、
さらには海外居住者(任意加入している場合)も加入が可能になりました。
- iDeCoの3つの税制メリット
iDeCoには、主に以下の3つの大きな税制優遇があります。
- 掛金が全額所得控除:
掛金(月額5,000円〜68,000円、加入状況により異なる)が
所得から差し引かれるため、
所得税・住民税が軽減されます。
例えば、課税所得100万円の人が年間6万円を積み立てた場合、
所得94万円に対して課税される仕組みです。 - 運用益が非課税:
通常の投資では運用益に対して約20.315%の税金がかかりますが、
iDeCoでの運用益には一切税金がかかりません。 - 受け取り時の税制優遇:
年金として受け取るか、
一時金として一括で受け取るかを選択でき、
それぞれに控除が適用されます。
- 受け取り方法の選択肢と税金
受け取り方には「年金方式」「一時金方式」「併用方式」の3つがあります。
- 年金として受け取る(分割):
5年から20年の間で分割して受け取ります。
税務上は「公的年金等控除」が適用される「雑所得」扱いとなり、
一定額までは税金がかかりません。 - 一時金として受け取る(一括):
資産をすべて売却して一括で受け取ります。
これは「退職所得控除」の対象となり、
給与所得などに比べて大幅に税金が優遇されます。
控除額は勤続年数(iDeCoの加入年数)によって計算されます。 - 年金と一時金の併用:
「資産の3割を一括で、残り7割を10年分割で」といった柔軟な受け取り方も可能です。
- 運用のポイントと注意点
運用面では、資産を売却せずに持ち続け、
最後に一括で受け取るのが最も効率的(複利効果)とされます。
しかし、分割で受け取る場合は元本を切り崩しながら運用することになるため、
受取額が変動する可能性がある点に注意が必要です。
また、将来の税制(控除額の変更など)を正確に予測することは難しいため、
シミュレーションを活用しつつ、
自身のライフプランに合った方法を選択することが重要です。
- 経営者・小規模事業者へのアドバイス
一人法人の社長や家族経営の方で、
60歳未満であれば「企業型DC(確定拠出年金)」の導入も検討に値します。
iDeCoよりも掛金の上限が高い場合があり、
損金算入による節税メリットも大きいためです。
また、「小規模企業共済」も退職金準備として非常に有効ですが、
医療法人は加入できない、
副業のサラリーマンは加入できないなどの制約があるため、
自身の立場に合った制度を見極める必要があります。
- 最後に:自分の身は自分で守る
政府はiDeCoやNISAを推奨していますが、
それがすべての人にとって最適とは限りません。
「75歳まで受給を遅らせれば受取額が増える」という理論もありますが、
男性の平均健康寿命は約75歳といわれています。
健康なうちにお金をどう使うかという視点も忘れてはいけません。
大切なのは、
政府や周囲の情報に惑わされすぎず、
知識を蓄え、
信頼できる専門家に相談しながら、
自分にとってベストな選択をすることです。
要約
- 制度の位置づけと改正点
- iDeCoは老後資金づくりに特化した私的年金。
2022年10月改正で、受給開始年齢の選択幅が60〜75歳へ拡大、
60〜65歳未満の会社員・公務員や任意加入者・一部海外居住者も加入可能に。
- 税制優遇(3本柱)
- 掛金全額が所得控除、
運用益非課税、
受取時に年金なら公的年金等控除、
一時金なら退職所得控除。
- 受け取り方法
- 年金(5〜20年の分割)、一時金(全額一括)、併用(割合指定)。
税制適用が異なるため、トータル税負担と手取りで設計。
- 重要な実務論点
- 一時金は退職所得控除の計算で企業年金・退職金と通算・合算の影響がある
(同年受給は合算、加入期間は通算)。
年金受給は公的年金等控除(65歳以上は控除額が大きい)との相性を確認。
- 帰結
- 「いつ・どう受け取るか」で手取りが大きく変わる。
税制、他の退職給付、健康寿命とキャッシュ需要を踏まえ、
受給開始年齢と受取形態を数値で最適化することが要諦。
この動画から得られること
- 制度理解:iDeCoの改正点(加入範囲・受給開始60〜75歳)と税制優遇の全体像
- 受取設計:一時金・年金・併用の税務(退職所得・雑所得)と控除の当たり
- タイミング最適化:退職金・企業年金との重複調整、同年合算の回避、加入期間通算の影響
- 控除の勘所:退職所得控除・公的年金等控除・基礎控除の相乗効果と閾値
- リスクと運用:分割時の元本取り崩しリスク、受給繰下げのメリット(非課税期間延長)と手数料
- 実務プロセス:データ収集→税・受給シミュレーション→出口方針→金融機関手続の手順
専門家の付加価値
- 退職所得控除(目安)
- 20年以下:40万円×加入等年数(最低80万円)。
20年超:800万円+70万円×(年数−20)。
- 企業型DC/DB・iDeCoの加入期間は「通算」。
別年受給でも控除枠は通算期間ベースで按分され得るため、順序と年を要検討。
- 公的年金等控除(現行目安)
- 65歳未満:年金収入に対する控除60万円〜、
65歳以上:110万円〜(合計所得等で調整)。
基礎控除48万円と合わせ非課税域を確認。
- 年金 vs 一時金の使い分けKPI
- 企業退職金が大きい年=iDeCoは年金で分散/退職金が小さい・無い年=iDeCo一時金で控除活用。
- 65歳以降に年金受給開始で公的年金等控除の枠を広く使う。
- 受給時期の設計
- 退職+1〜2年目に一時金、65歳到達で年金化など、課税所得の低い年に寄せる。
- シミュレーションの前提
- 他所得(給与・年金・配当等)、
世帯控除、
退職金・企業年金の受給額・年、
iDeCoの評価額・加入年数、
手数料・信託報酬。
- 併用時の割合指針(例)
- 一時金:控除枠に収まる上限まで、残りは10〜15年分割で年金控除を活用
(年ごとに非課税帯に入るよう調整)。
例え話
iDeCoの受け取りは「荷物の配送方法」を選ぶのに似ています。
一括配送(一時金)は送料割引(退職所得控除)が効く便、
定期便(年金)は定期割(公的年金等控除)が使える便。
家にいる時間(所得の少ない年)に合わせ、
どの便をいつ受け取るかで受け取り効率が変わります。
視聴後アクション
- 1. 現状を整理:退職金・企業年金の見込額・受給年、iDeCo評価額・加入年数、他所得を一覧化
- 2. 受給年の候補を作る:退職年、65歳、70歳、75歳の各パターンで年金・一時金を組み替え
- 3. 税試算をする:各パターンで退職所得控除・公的年金等控除・基礎控除を反映し手取り比較
- 4. 方針を決める:同年合算を回避、控除枠内で一時金を最大化、残りを年金で平準化
- 5. 金融機関に確認:受給方法の選択期限、変更可否、手数料・必要書類をチェック
- 6. 定期見直し:税制改正・資産評価の変動に応じて2〜3年ごとに再試算
- 7. 併用の実行:一括比率と分割年数を決め、受給開始申出のスケジュールを設定
運用の勘所
- 受給繰下げの本質:公的年金のような増額率ではなく、非課税運用期間の延長と課税時期の先送りが主効果。
- 同年合算の回避:退職金・企業年金・iDeCo一時金の同一年受給は控除按分・課税繰上げを招きやすい。
- 65歳活用:65歳以降の公的年金等控除の増額と、就労・配当等の他所得を合わせて最適年を選ぶ。
- コストにも目配り:口座管理手数料・信託報酬を踏まえファンドの入替・受給時の売却タイミングを計画。
- 代替制度:企業型DC・小規模企業共済・企業年金の併用可否・上限調整を確認し、全体最適で設計する。
iDeCoの出口は「税制×タイミング×併用」で差が出ます。
感覚ではなく数値で比較し、
退職金や企業年金との重複を避け、
控除を最大限に活かす設計に変えてください。
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