相続税は原則として現金で一括納付するものですが、
金銭での支払いが困難な場合には「物納(ぶつのう)」という選択肢があります。
今回は、物納の手続きの流れや必要書類、
注意点について分かりやすく解説します。

  1. 物納の手続きの流れ

物納を行うためには、
まず以下のステップを踏む必要があります。

  1. 税額の算定と財産の選定:
    物納を希望する税額を算出し、
    相続財産の中から物納に適した財産(不動産や有価証券など)を選びます。
  2. 書類の提出:
    「物納申請書」のほか、
    現金での納付が困難であることを証明する「金銭納付を困難とする理由書」、
    および財産ごとの必要書類(不動産の場合は境界確認書など)を作成します。
  3. 税務署への申請:
    原則として、
    相続税の納付期限までに被相続人の住所地を管轄する税務署へ提出します。
    期限内の提出が難しい場合は、
    最長1年間の期限延長を申請することも可能です。
  1. 審査と現地調査

申請後は、
書類の提出期限の翌日から原則3ヶ月以内に審査が行われます。
物納対象が不動産の場合、
税務署や財務局による現地調査も実施され、
管理上の問題がないか厳格にチェックされます。

  • 許可された場合:
    所有権移転の手続きを行い、
    「物納財産収納済通知書」が交付されることで納付完了となります。
  • 却下された場合:
    法律の要件を満たさない、
    あるいは財産が物納に適さないと判断されると「却下通知書」が送付されます。
  1. 物納を利用する際の注意点

物納は便利な制度ですが、以下の点に留意が必要です。

  • 審査基準が厳しい:
    物納できる財産には順位があり、
    不動産であっても境界が不明確であったり、
    利用制限があったりするものは認められません。
  • 利子税の発生:
    審査期間中も本来の納付期限からは遅れている扱いとなるため、
    利子税が発生する場合があります。
  • 事前の計画性が不可欠:
    納付期限までにすべての書類を揃える必要があるため、
    早めの準備が求められます。

まとめ

物納は相続税対策として有効な手段の一つですが、
必ずしも最適な方法とは限りません。
まずは現金の「延納(えんのう)」を検討し、
それでも難しい場合の最終手段として物納を考えるのが一般的です。

ご自身の状況に合わせて最適な納税方法を選択するためにも、
早めに税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。
円滑な納税手続きに向けて、
正しい知識を身につけておきましょう。

【この動画から得られること(Learning Outcomes)】 

- 物納の位置づけ:金銭納付延納物納(最終手段)の順序と適用要件

- 物納のメリット/デメリット 
  - 〇 大口の現金流出を抑制/納税資金化が難しい不動産の処理
  - × 要件が厳格/却下リスク/利子税発生の可能性/整備コスト・時間 

-
手続の流れ(不動産物納を中心に) 
  1) 物納対象税額の算定・対象財産の選定 
  2) 申請書・理由書・必要書類の準備(登記事項証明、公図/測量図、境界確認書、評価資料 等)
  3) 申告納付期限までに税務署へ提出(延長届で最長1年延長可) 
  4) 審査(原則3か月以内)・税務署/財務局の現地調査 
  5) 許可→所有権移転→収納済証書/却下→代替納付策 

- 不動産の適否チェック(主なポイント)
  - 単独所有・抵当/差押なし・担保権抹消済み 
  - 境界確定・越境/私道負担の整理・地目/用途制限の適合 
  - 占有者なし(または明確な賃貸契約・滞納なし) 
  - 管理費・修繕積立金等の滞納なし(区分) 
  - 土壌汚染・法令違反・未登記建物の解消 

- 却下時の対応と資金繰り選択肢:延納見直し/資産売却/借入/分納交渉 ほか

 

【例え話】 

物納は「非常口」。
火災(資金不足)時に脱出できますが、
通路(権利関係・境界・滞納)の障害物を片付け、
扉(要件)を開けられる鍵(書類と期限)を持っていないと出られません。
準備なく頼ると、扉の前で立ち尽くすことになります。

 

【実務チェックリスト(要点)】 

- 期限:申告納付期限までに申請(延長届で最長1年)/審査3か月目安
- 理由書:金銭納付困難の客観資料(資金繰り表・売却困難性等) 
- 権利:単独所有/抵当・差押・仮登記の抹消/共有は避ける 
- 境界:確定測量・越境是正・私道承諾/地目・用途制限の適合 
- 占有:無権限占有者なし/賃貸は契約明確・滞納なし 
- 区分:管理費・積立金滞納なし・管理体制の健全性 
- 書類:登記事項証明、公図/測量図、固定資産評価、境界確認、管理関係資料
- コスト:測量・登記・抹消費用/利子税発生の有無

 

【視聴後アクション(CTA)】 

- 延納の可否を先に検討し、物納を選ぶ場合は期限カレンダーを作成 
- 物納候補不動産の適否をチェックリストで診断(権利・境界・占有・滞納) 
- 申請書・理由書・添付書類を着手、必要なら延長届で時間を確保
- 却下時の資金繰り代替策(売却・借入・分納)も並行で検討し、専門家に早期相談

 

【専門家としての付加価値】 

- 物納は「選べば通る」制度ではありません。
却下リスクを初期診断(権利・境界・占有・管理)で数値化し、
延納・換価・借入を含めた多経路で納税計画を組むのが現実解です。

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引用
相続・贈与相談センターマガジン2025年6月号
不動産で相続税を支払う?知っておきたい物納の仕組み

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