【過去最多26万件】負の不動産や借金を回避する「相続放棄」急増の背景
- はじめに:過去最多を更新し続ける相続放棄
2020年度、全国の家庭裁判所が受理した相続放棄の件数は26万497件に達し、
過去最多を記録しました。
司法統計によれば、
この件数はここ10年ほど右肩上がりで増え続けています。
この背景には、
現代の日本が抱える深刻な社会問題が映し出されています。
- 変容する相続放棄の理由
かつての相続放棄は、
亡くなった親に多額の借金があり、
預貯金では到底返済しきれないといった
「マイナスの財産」から身を守るための手段が中心でした。
しかし、
近年の急増には別の要因が大きく関わっています。
それは、都市部への人口集中と、
それに伴う「実家の空き家化」です。
- 「利用価値のない不動産」という負担
地方の過疎化が進み、
人口が増加している都道府県がごく一部(3〜4都県)に限られる中、
利用価値のない土地や住宅が市場に溢れています。
- 空き家問題:
子世代が都心に住まいを構え、
誰も住む予定のない地方の実家を相続しても、
管理の手間や維持費だけがかさみます。 - 固定資産税の負担:
特に山林や農地、
あるいは建物が立っていない更地(住宅地)などは、
所有しているだけで高額な固定資産税が発生します。
利用価値のない不動産は、
相続人にとって「不要な廃棄物」を押し付けられるのと同義になっており、
それならば最初から相続権をすべて手放そうという選択が増えているのです。
- 現場で見える「独居老人」と「縁の切れた土地」
不動産活用の現場でも、
切実な状況が見て取れます。
例えば、
独居老人が亡くなった際、
隣地の所有者が「駐車場を広げたいので土地を買い取りたい」と希望しても、
相続人である孫や親族にとってその場所は「地元」ではなく、
すでに縁が切れた土地となっています。
「誰が住むわけでもない」
「売るのも手間」
「固定資産税は払いたくない」という三重苦から、
不動産を含むすべての遺産を放棄せざるを得ないケースが後を絶ちません。
- 根本的な解決に向けた課題
相続放棄の増加は、
単なる家庭内の問題ではなく、
日本の構造的な課題の結果です。
- 少子化問題の解決と景気の回復
- 土地の利用価値の再定義と税制の見直し
- 所有者不明土地問題への抜本的な対策
こうした根本的な要因を政治が解消しない限り、
相続放棄の件数は今後もさらに増え続け、
国庫に帰属する管理不能な土地が増大していくことになるでしょう。
要約
- 何が起きているか
- 2020年度の相続放棄は26万497件で過去最多。ここ10年ほぼ一貫して右肩上がり。
- なぜ増えているか(構造要因)
- 従来の「多額の借金回避」だけでなく、都市集中と地方過疎で「使い道のない不動産(負動産)」が増加。
- 空き家・山林・農地・更地など維持費(固定資産税・管理負担)だけがかかり、
資産価値が乏しい物件を避けたい相続人が増加。
- 現場の実態
- 都市部に生活基盤がある相続人にとって、
地元との縁が薄い地方不動産は「売りにくい・使えない・税だけ重い」の三重苦。
- 社会的含意
- 少子化・景気停滞・税制・所有者不明土地の拡大など構造的課題の帰結。
放置すれば国庫帰属地の増加や地域インフラ維持の困難化につながる。
- 結論
- 相続放棄は個人の判断に見えて、国家的課題の鏡。
制度の正しい理解と、相続土地の出口設計(利活用/売却/国庫帰属)を早期に検討する必要がある。
例え話
穴の空いたバケツに水(固定資産税や管理費)を注ぎ続けるようなものです。
水を注ぐ前に「ふさぐ」のか、
「バケツを替える」のか、
「そもそも持たない」のかを決めることが、
相続判断の核心です。
専門家としての付加価値(実務の勘所)
- 相続の三択の要点
- 単純承認:一切受け継ぐ(借金も含む)
- 限定承認:プラスの範囲内でマイナスを弁済(相続人全員共同で申述)
- 相続放棄:最初から相続人でなかった扱い(債務も不動産も引き継がない)
- 期限と延長
- 原則「相続開始を知ったときから3カ月(熟慮期間)」内に家庭裁判所へ申述。
資料収集に時間がかかる場合は「熟慮期間伸長申立」で猶予を確保。
- 禁忌行為(うっかり単純承認)
- 預金の引出し・不動産の処分・高額な形見分け等は「処分」に該当し得る。
葬儀費用の立替や最低限の保存行為は通常許容。
- 不動産の出口設計
- すぐ放棄せず「限定承認+売却/分筆/隣地買取打診」も検討余地。
- 相続土地国庫帰属制度(2023年開始):一定の条件を満たす不要土地は審査・負担金を経て国庫へ。
境界不明・残置物・崩落危険などは原則不可。
- 空き家・税の留意点
- 空家対策特別措置法の改正で「管理不全空家」も優遇(住宅用地特例)除外対象になり得る。
放置は税負担増のリスク。
- 実務の標準手順
- 財産目録化
→債務照会
→評価・維持費見積
→相続方針決定(限定承認/放棄)
→不動産の出口(売却・利活用・国庫帰属)設計
→申述・実行
この動画から得られること
- 相続放棄が増える構造(負動産・空き家・税負担)の理解
- 相続の三択と「熟慮期間」「延長申立」の実務
- うっかり単純承認を避ける行動規範
- 負動産の出口戦略(売却・隣地活用・分筆・国庫帰属)
- 空家対策特措法と固定資産税のリスクポイント
- 判断から申述までのチェックリスト
視聴後アクション
- いま持っている情報を集める
- 通帳・借入明細・督促状・固定資産税通知・登記事項証明を一か所にまとめる。
- 財産の一覧表を作る
- プラス(預金・保険・不動産の評価)とマイナス(借金・未払い)を別々に書き出す。
- 期限を決める
- 相続開始を知った日を起点にカレンダーで3カ月後をチェック。
間に合わなければ家庭裁判所へ延長申立。
- 触らない・処分しない
- 預金を引き出す、物を売るなどは「単純承認」になり得るため避ける。
最低限の保存行為に留める。
- 相談先を決める
- 弁護士・司法書士・税理士の無料相談を予約し、方針(放棄/限定承認)を確認する。
- 不動産の出口を考える
- 隣地への売却打診、分筆、賃貸、国庫帰属制度の可否を専門家と検討する。
- 申述の準備をする
- 家庭裁判所の様式を入手し、戸籍一式を集める。
郵券・収入印紙の用意も同時に進める。
迷ったら、まず「数字」と「期限」を押さえましょう。
今日、財産目録の雛形を作り、
熟慮期間の最終日をカレンダーに記入し、
専門家相談を予約してください。
負動産の連鎖は、早い一手で止められます。
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引用
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