生前贈与された不動産の遺産分割における評価方法と注意点

生前贈与を受けた不動産がある場合、
いざ相続が始まった際の「遺産分割」で
その不動産をどう評価すべきかは非常に重要な問題です。
今回は、その評価基準となる時期や実務上の注意点について解説します。

  1. 不動産評価の難しさと「特別受益」

不動産の価値は、
立地、経済状況、法律の改正など様々な要因によって常に変動します。
バブル期を経験された方はイメージしやすいかと思いますが、
時期によって価格が大きく変わるため、
公平な評価が求められます。
相続において、
特定の相続人が生前に受けた贈与は「特別受益」として扱われ、
遺産の前渡しとみなされます。
このとき、もらった側(特別受益者)は評価を低く見積もりたいと考え、
他の相続人は公平を期すために高く評価したいと考えるため、
意見が対立しやすくなります。

  1. 評価の基準は「相続開始時」の時価

実務上、
最も一般的に採用されているのは
「相続開始時説」です。
これは、贈与された時点の価格ではなく、
被相続人が亡くなった(相続が始まった)時点
での不動産価値を基準に評価する方法です。

  • 具体例:
    贈与を受けた当時の価値が1,000万円だった不動産が、
    相続開始時に2,000万円に値上がりしていた場合、
    遺産分割においては
    2,000万円の利益をすでに受けた」ものとして計算されます。
  1. 特殊なケース(売却済みや負担付き贈与など)

たとえ生前贈与された不動産を相続開始前に売却していたとしても、
あるいは「負担付き贈与(一定の義務を負う贈与)」であったとしても、
原則として
相続開始時の状態で評価を行うという考え方は変わりません。
ただし、こうした特殊なケースは判断が複雑になるため、注意が必要です。

  1. 事前の把握と専門家への相談が重要

相続が「争族(親族間の争い)」にならないためには、
事前に以下の点を把握しておくことがベストです。

  • 時価の把握:
     親御さんが健在なうちに、
    もし今相続が発生したらその不動産がいくらで評価されるのか、
    目安を知っておくことが大切です。
  • 相続と相続税の違い:
     遺産分割における「相続の話し合い」と、
    国に納める「相続税の計算」は、評価のルールが異なります。
    不動産会社、税理士、相続の専門家など、
    それぞれの分野のプロに相談し、
    言葉の定義や計算方法の違いを正しく理解しておく必要があります。

相続発生後に慌てて不公平感を感じたり、
予想外の税金に驚いたりしないよう、
早めに専門家の知見を借りて準備を進めることをお勧めします。

要約

- 何が論点か
  - 生前贈与を受けた不動産を、相続(遺産分割)でどの価額で評価するか。
    特別受益(遺産の前渡し)の扱いが核心。

- 原則(評価時点)
  - 実務と判例は「相続開始時説」が原則。
    生前贈与時の価格ではなく、被相続人の死亡時の時価で評価して持戻し計算する。

- よくある対立点
  - 受贈者は低く、他の相続人は高く見積もりたい(公平性の衝突)。
    生前贈与物件が売却済み・負担付き・用途変更済みでも、基本は相続開始時の価額で整理。

- 税務との違い
  - 遺産分割で用いるのは「市場実勢の時価」。
    相続税は路線価・固定資産税評価等の税務評価。
    混同すると判断を誤る。

- 結論
  - 生前贈与不動産は、相続開始時の時価で特別受益に算入し、全体の公平を確保。
    事前の価額把握、証拠化、持戻免除の意思表示など、準備が争いを減らす。

 

例え話

 生前贈与は「前渡しの食券」のようなもの。
食堂(相続)が開店した時点のメニュー価格(相続開始時の時価)で
精算するのが公平、
という発想です。

 

専門家としての付加価値

- 評価の技術
  - 実勢時価の把握:近隣成約事例(レインズ等)、
                                不動産鑑定士の簡易鑑定、
                                収益還元(賃貸)の併用でレンジ(上限・下限)を提示。
  - 条件補正:階層・方位・道路付・建ぺい容積・借地/底地・再建築可否・賃貸借の有無・残存修繕費を反映。

- 特別受益の設計
  - 民法903条・持戻し(原則)と持戻免除の意思表示(遺言・贈与契約書・公正証書で明文化)。
  - 代償分割の準備:受贈者が他の相続人へ金銭で調整できるよう、保険・現預金・与信枠を事前確保。

- 争いを避けるための書証
  - 贈与時の契約書・資金移動記録、
    登記事項、当時の査定・鑑定、
    利用状況の履歴を保全。

- 税務と民法の切り分け
  - 相続税(路線価等)と遺産分割(時価)は評価軸が異なる。
    双方の計算書を別建てで作成し、混同を避ける。

 

この動画から得られること

- 生前贈与不動産の評価時点(相続開始時説)と特別受益の基本
- 売却済み・負担付贈与等の特殊ケースの考え方
- 遺産分割の時価と相続税評価の違い、計算書の分離管理
- 実勢時価の算定手順(事例比較・鑑定・収益還元)と条件補正
- 持戻免除の意思表示、代償分割・保険活用などの設計
- 証拠化と合意形成の進め方(書類リスト・手順)

 

視聴後アクション

- いまの価格を知る
  - 近隣の成約事例を3件以上集め、不動産会社23社の査定と簡易鑑定を取り、価格の幅を掴む。

- 書類をそろえる
  - 贈与契約書、
    登記事項証明、
    資金移動記録、
    当時の査定・写真、
    利用状況のメモを一つのフォルダにまとめる。

- 言葉を分けて考える
  - 遺産分割は時価、相続税は税務評価
    計算書を別々に作り、混ぜない。

- 事前に合意しやすくする
  - 持戻免除の意思表示を遺言や公正証書に明記。
    代償分割用の資金は保険や預金で準備。

- 第三者に聞く
  - 税理士・弁護士・不動産鑑定士へ事前相談。
    評価方法と合意形成の段取りを確認。

- 家族で共有する
  - 評価レンジと方針(持戻しの有無・代償方法)を簡単な資料にして、家族会議で共有する。

 

 評価は「時点」と「証拠」で決まります。
今日、近隣成約の抜粋表と査定依頼リストを作成し、
贈与書類を一つに束ね、
遺産分割用の時価と相続税評価を別建てで試算してください。
準備を前に倒せば、争いは小さく、公平は大きく守れます。

 

 

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引用
税理士法人 A to Y 
生前に贈与された不動産は遺産分割でどのように評価される?

税理士法人 A to Y
〒460-0014 愛知県 名古屋市中区富士見町7-11
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