【資本性借入金】事業再生や新規展開を支える「劣後ローン」の活用術と注意点

今回は、
金融庁も活用を推進している「資本性借入金(通称:劣後ローン)」について、
その仕組みと中小企業における活用方法を解説します。

  1. 資本性借入金(劣後ローン)とは何か

資本性借入金とは、
中小企業が業績悪化に伴う事業再生や、
新規事業への展開を図る際に、
金融機関から受ける融資の一種です。
最大の特徴は、
会計上は「負債」ですが、
銀行の資産査定においては
「自己資本(資本金)」とみなされる点にあります。

これにより、
財務状況が芳しくない企業でも
「自己資本比率」が改善したと判断され、
他の金融機関からの追加融資が受けやすくなるというメリットがあります。

  1. 従来の融資との違い

通常の融資(証書貸付など)は
毎月元金を返済していくのが一般的ですが、
資本性借入金は「期限一括償還」が原則です。
例えば20年や30年といった長期間、
元金の返済を据え置き、
その間は金利のみを支払います。
また、金利設定も「業績連動型」となっており、
業績が苦しい時期は低金利、
改善してくれば高くなる仕組みが一般的です。

  1. 「劣後性」という高いハードル

「劣後(れつご)」とは、
他の債権よりも支払い順位が後になることを意味します。
万が一、会社が破綻した場合、
返済の優先順位は
「税金」
「人件費」
「一般債権」
が先となり、
資本性借入金は一番最後になります。

貸し手側からすれば
「貸し倒れのリスクを前提に貸す」
ことになるため、
審査のハードルは非常に高く、
緻密な事業計画書が求められます。

  1. 金融マニュアルの弊害と現状

かつて銀行業界には
「金融検査マニュアル」が存在し、
企業の将来性よりも
現状の数字で一刀両断に判断する傾向がありました。
これにより「貸し剥がし」などの問題も起きましたが、
このマニュアルは2019年に廃止されました。

現在は、
企業の将来性や事業性を評価する
「リレーションシップ・バンキング」
への回帰が模索されています。
資本性借入金はその一環として、
2020
年以降、
日本政策金融公庫や商工中金などで積極的に取り扱われるようになりました。

  1. 不動産業界における適用制限

不動産投資家や不動産会社にとって注意が必要なのは、
「不動産業単独での資本性借入金の利用は、原則として認められない」
という点です。
例えば、
不動産業を営む会社が
「別の新事業」を始めるための資金としてなら利用できる可能性がありますが、
不動産の取得資金などとして
劣後ローンを組むケースは、
大手や上場企業を除いて一般的ではありません。
不動産業界は過去のバブルの経緯もあり、
融資の網の目が非常に厳しく設定されています。

  1. 賢い活用の進め方

資本性借入金は非常に強力なツールですが、
誰でも簡単に利用できるわけではありません。
まずは現状の財務分析を行い、
以下のようなステップを検討することをお勧めします。

  • 信用保証協会の活用:
    1
    億円程度までの融資であれば、
    保証協会の制度融資を検討するのが現実的です。
  • 専門家への相談:
    資本性借入金の申請には高度な事業計画書が必要です。
    認定支援機関や税理士などの専門家と共に準備を進めましょう。

資本性借入金は、
中堅規模以上(年商数十億〜)の企業には
比較的利用しやすい傾向がありますが、
小規模な中小企業にとっては
依然としてハードルが高いのが実情です。
制度の理想と現実の差を理解した上で、
自社に最適な融資計画を立てることが重要です。

要約

- 何か(定義と目的)
  - 資本性借入金(劣後ローン)は、会計上は負債だが、金融機関の自己資本とみなされうる資金調達。
    自己資本比率の改善評価を狙い、事業再生や新規事業展開の呼び水(追加融資を呼ぶ杠杆)として機能。

- どう違うか(通常融資との相違)
  - 期限一括償還(長期バルーン)で元金返済は満期時のみ、期間中は利払い中心。
  - 業績連動金利(赤字期は低利、黒字化で上昇)・多くは無担保・無保証が前提。

- なぜ難しいか(劣後性のハードル)
  - 破綻時の弁済順位が最後=貸し倒れリスクが高く、審査は事業性・将来性の緻密な検証が前提。
    高度な事業計画とモニタリング体制が必須。

- どこで使えるか(政策と適用範囲)
  - 金融検査マニュアル廃止後、事業性評価金融が回帰。
    日本政策金融公庫・商工中金等が資本性劣後ローンを積極運用(コロナ後の資本強化策含む)。
  - 但し、不動産業単独の取得資金には原則不適(上場・大手を除く)。
    不動産会社が「非不動産の新規事業」へ展開する資金等なら検討余地。

- どう進めるか(現実的アプローチ)
  - 小規模〜中小は、まず保証協会付きの長期資金で体力回復
 →認定支援機関と伴走し、資本性の要件を満たす計画・管理体制を整備
 →政策金融・商工中金・地銀の順に打診。

例え話

 ビルを高く増築する前に、
見えない基礎に「つっかえ棒」を入れて土台を厚く見せるイメージ。
資本性借入金は土台(自己資本評価)を厚く見せ、
上階(追加融資)を載せやすくする支柱です。
ただし、
最後に抜けば崩れるため、
抜く(満期償還)時の段取り(償還資金準備)が生命線です。

専門家としての付加価値

- ストラクチャ設計
  - 満期一括償還リスクに備え「シンキング・ファンド(償還準備金)」を月次で積み立て。
    満期前リファイナンスの条件(利益水準・債務償還年数)を逆算。
  - コベナンツ(配当制限・レバレッジ・利払比率)と業績連動金利のトリガーを理解し、
    KPI管理(粗利率・在庫/回収/支払サイト)を月次で運用。

- 事業計画の要件
  - 3〜5年のPL/BS/CFDSCR・感度分析(売上▲10%、粗利▲2pt、金利+1%)を添付。
    四半期レビューで差異是正を約束。
  - 既存債務の平準化(借換・返済年限の整合)、
    資本性で「運転資金の先食い」を避け、
    成長投資・構造改革に資金を重点配分。

- 候補先と目的の適合
  - 日本政策金融公庫・商工中金:資本性(挑戦支援等)、
    地銀のメザニン枠、地域ファンド(優先/劣後の共同)。
    目的外流用不可・新規事業は事業別KPIを分離管理。

- 会計・開示
  - JGAAPでは負債計上だが、金融機関のリスクアセット評価で自己資本性を認める。
    監査・税務は利息損金・元金非損金。
    IFRS適用企業は条項次第で分類差異に留意。

この動画から得られること

- 資本性借入金の仕組み(自己資本みなし・劣後性・業績連動金利)
- 通常融資との違い(期限一括償還・無担保性)とリスク管理
- 償還準備金・DSCR・感度分析による「返せる設計」
- 申請に通る事業計画(35PL/BS/CFKPI・四半期レビュー)
- 候補機関(公庫・商工中金・地銀メザニン)の使い分け
- 不動産業での適用制限と、新規事業への資金適用の考え方

視聴後アクション

- 会社の数字を揃える
  - 直近3年の決算書、月次の試算表、資金繰り表を1つのフォルダにまとめる。

- 返せるかを試す
  - DSCR(営業CF/年間元利)と、売上が1割下がっても返せるかの「感度分析」を簡単に計算する。

- 計画を作る
  - 3〜5年の売上・利益・投資計画、四半期のKPI(粗利率・回収サイト等)を紙1枚にまとめる。

- 償還の準備を決める
  - 満期に向けて、毎月いくら積み立てれば良いか「償還準備金」の金額を決める。

- 相談先を決める
  - 認定支援機関(税理士・コンサル)に連絡し、公庫・商工中金・地銀の順で面談予約を取る。

- 目的を絞る
  - 資金の使い道が「新規事業の立上げ・再構築」に当たるかを確認し、
    用途とKPIを分かりやすく説明できるようにする。

 まずは「返せる計画」と「積み立ての約束」を可視化しましょう。
今日、35年の事業計画とDSCR・感度分析の簡易表を作成し、
償還準備金の月額を決定。
認定支援機関への面談を予約し、
公庫・商工中金・地銀への打診順を固めてください。
資本性借入金は強力な支柱です。
正しく設計すれば、
再生と成長の道が開けます。

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