【短期前払費用】家賃等の費用を年払いして当期の損金に算入できる特例の要件

節税対策として非常に有効な「短期前払費用の特例」について解説します。

この特例は、
本来は翌期以降の経費となるべき費用を、
決算月に「年払い」などで一括して支払うことで、
その全額を支払った期の損金(経費)に算入できるというものです。
どちらかと言えば個人事業主よりも法人の方が活用しやすい制度ですので、
その具体的な要件を詳しく見ていきましょう。

  1. 短期前払費用の特例とは

通常、事務所の家賃や保険料などは翌月分を前月末に支払いますが、
税務上これらは「前払費用」として扱われ、
原則としてサービスを受ける期間に応じて月割りで経費化します。

しかし、事務的な負担を軽減するという目的から、
一定の条件を満たせば、
決算月に支払った「1年以内の費用」を一括して経費にできるという
例外的な措置が認められています。
これが「短期前払費用の特例」です。

この特例を活用することで、
法人税だけでなく、
消費税の仕入税額控除も支払った期に受けることができるため、
資金繰りや利益調整の面で大きなメリットがあります。

  1. 特例が認められるための「5つの要件」

この特例はあくまで例外的な措置であるため、
適用には以下の5つの条件をすべて満たす必要があります。

一定の契約に基づいていること

家賃であれば貸主、
保険料であれば保険会社との契約に基づいている必要があります。
単に「多めに振り込んだ」だけでは認められません。
もともと月払い契約だったものを年払いに変更する場合、
決算日より前に「年払い契約」への契約変更(巻き直し)を完了させておくことが重要です。

当期中に支払いが完了していること

3月決算であれば、
3
31日までに実際に全額の支払いが終わっていなければなりません。
「未払金」として計上するだけでは、この特例は適用できません。

支払日から1年以内に役務の提供を受けるものであること

支払った日から1年以内に受けるサービスに対する費用であることが条件です。
例えば、
3
月決算の会社が3月に翌年3月分までの家賃(12ヶ月分)を支払うのは問題ありません。
しかし、
2
年分(24ヶ月分)をまとめて支払った場合などは、
1
年を超えているため原則として特例の対象外となり、
全額が否認されるリスクがあります。
なお、自動車の自賠責保険のように、
制度上2年・3年分を一括で支払うことが一般的なものについては、
実務上認められる傾向にあります。

等量・等質の役務を継続的に受けるものであること

毎月受けるサービスの内容が一定であることが必要です。

  • 対象となる例:
     家賃、地代、保険料、駐車場の賃借料、リース料など。
  • 対象とならない例:
     税理士や弁護士への顧問料、コンサルティング料。
    これらは月によって相談内容や作業量が異なるため、
    「等量・等質」とはみなされず、
    この特例は使えません。

収益と直接対応する費用ではないこと

売上に直接紐づく費用(収益対応費用)には適用できません。
例えば、サブリース事業などで、
借りた物件をそのまま他人に貸して賃料を得ている場合の「借上賃料」などは、
売上に対応する原価としての性質が強いため、
この特例の対象外とされています。
また、従業員から賃料を受け取っている社宅の家賃なども同様です。

  1. まとめ:正しい知識で有効な節税を

かつては「全額損金算入」ができる保険を利用した節税スキームが盛んでしたが、
現在は税制改正により制限が厳しくなっています。
その点、家賃などは現在でも比較的検討しやすい項目です。

ただし、税金の世界には「アメ」のような甘い話は少なく、
ルールの解釈を誤ると税務調査で否認されるリスクがあります。
まずは顧問税理士に
「自社でこの特例が使えるか」
を確認した上で、
適切に契約を整えてから実施することをお勧めします。

要約

- 何の制度か
  - 短期前払費用の特例=翌期以降の費用(家賃・保険料など)を決算月に年払い等で支払うと、
    その全額を「支払期の損金」に算入できる例外措置。
    法人で使いやすく、法人税だけでなく消費税の仕入税額控除も当期に前倒し可能。

- なぜ効くか(メリット)
  - 利益・資金繰りの調整弁:損金前倒しで法人税負担と消費税の資金回収を早められる。
  - 事務負担の軽減:月割り費用化の事務を省ける(適用要件を満たす範囲に限る)。

- どんな要件か(5つ全て必須)
  1) 契約に基づく支払い:月払い→年払いへ変更は決算日前に契約(覚書)を巻き直す。
  2) 当期中に実際に支払済:未払計上は不可。
                                             決算日までの資金決済が条件。
  3) 支払日から1年以内の役務:2年超等は原則対象外(自賠責など制度上の長期例外は実務で容認例あり)。
  4) 等量・等質の継続役務:家賃・地代・保険料・駐車場・リース料など。
                                             顧問料・コンサルのような変動業務は対象外。
  5) 収益に直接対応しない費用:サブリースの借上賃料、社宅家賃など売上原価性の強い費用は不可。

- どこに注意か(否認・リスク)
  - 契約変更が事後(決算後)
 /1年を超える前払い
 /対象外費用の混在
 /「多めに振込んだだけ」などは否認リスク大。
  - 消費税はインボイス要件・課税区分の整合必須。
     課税期間・簡易/本則の適用ミスに注意。

 

例え話

 短期前払費用は、定期券の「一括前払い割」のようなもの。
条件(区間・期間・発行日)を守れば得になるが、
期限や区間を間違えると使えない。
税務も同じで、
契約と支払日、
期間のルールを外すと否認されます。

 

この動画から得られること

- 短期前払費用の仕組みと節税効果(法人税・消費税)
- 適用5要件の実務(契約変更、支払完了、1年以内、等量等質、収益非対応)
- 対象/非対象の具体例(家賃・保険・駐車場・リース/顧問料・コンサル・借上賃料・社宅等)
- 否認されやすいポイントと回避策(事後契約、期間超過、科目混在、形式先行)
- 契約巻き直し・支払・証憑のチェックリストと決算までのタイムライン
- 消費税(インボイス、課税区分、簡易/本則)の前倒し控除の留意点

  

専門家としての付加価値

- 事前準備(決算12か月前)
  - 契約確認:支払主体・物件/対象・期間・支払条件。
                     年払いへの変更覚書を決算日前に締結。
  - 対象費用の選定:家賃・地代・保険・駐車場・リースに限定。
                                顧問料・コンサル・サブリースは外す。
  - 期間検証:支払日から1年以内の役務か。
                      端数月の扱いを明文化。

- 支払・証憑(決算月)
  - 実決済:決算日までに全額振込(未払不可)。
                   請求書・領収書・インボイス番号を保存。
  - 会計・税務:損金算入、消費税仕入控除(課税区分・按分の整合)を仕訳で担保。

- 監査・税務調査対策
  - ファイル一式:契約(変更覚書含む)
                          /請求・領収
                         /支払エビデンス
                         /対象期間メモ
                         /等量等質の説明資料。
  - 科目統制:収益対応費用の混入防止(社宅・借上賃料等の識別)。

- タイムライン例(3月決算)
  - 1月:対象費用洗い出し、契約条項確認
  - 2月:年払い覚書締結、請求発行手配
  - 3月:支払実行、証憑保管、仕訳・消費税処理

 

視聴後アクション

- 対象候補を洗い出す
  - 自社の家賃・保険・駐車場・リースを一覧化し、月額×12か月の年払い可否を確認する。

- 契約を見直す
  - 決算日前に「年払い」への変更覚書を締結。
    支払日から1年以内の役務期間かチェックする。

- 決算日までに支払う
  - 未払は不可。
     領収書・インボイス番号・振込控えをまとめて保管する。

- 消費税の整合を取る
  - 課税区分とインボイス要件を確認。
     簡易/本則の違いも税理士とすり合わせる。

- NG費用を混ぜない
  - 顧問料・コンサル・サブリース借上賃料・社宅関連は対象外。
    科目混在を防ぐ。

- 税理士に相談する
  - 自社で適用できるか、契約文言・仕訳・消費税処理・証憑の整え方を事前に確認する。

 

 まずは「契約」と「支払」の順番を正しく。
今日、対象費用リストを作り、
年払い覚書のドラフトを用意して
決算日前の締結・支払スケジュールを確定してください。
1
年基準・等量等質・収益非対応の3点を外さなければ、
この特例は強力な味方になります。
甘い話ではなく、
正しい段取りで効く節税を実行しましょう。

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