新型コロナ禍の下、若年層を中心に、オンライン投資が拡大しています。
若年層のオンライン投資ばかりでなく、
副業としての投資、
リタイヤ後の投資など先行きの見えないコロナ禍でも、
株高の影響などで個人投資が活発化しています。
個人株主は過去最多の延べ5,981万人となり、
個人金融資産2,000兆円時代の到来です。
政府が以前から推奨していた「貯蓄から投資へ」
の動きは本格化するのでしょうか。

日興リサ ー チセンターの調べでは、
個人投資家の投資信託への投資が活発化し、
2021年度には10兆円の個人金融資産が株式投信に流入したことが分かりました。
株式投信(上場投資信託除く)の2021年度純流入額は約9兆9,000億円と、
前年度比3倍増で、08年度以降で最大となった。

08年度以降で最高の15年度の7兆円を上回ったうえ、
月別でも12ヵ月すべてで流入超になりました。

「長期目線の投資家が増えていて、かつてのように株安時に現預金にシフト
することなく流入が続いている」
と言われています。
若年層による積立投資など、
長期の資産運用の資金が厚みを増しています。
資金流入が多い投信は海外株型で、
21年度は流入額の77%を占めているようです。

日銀の資金循環統計によれば、
21年度末の家計の金融資産は2,
023兆円と初めて大台を突破しました。
これを受け、
その一部が投信に向かう流れが年々強くなり、
実際に3月末で株式投信の飩資産総額は3月末で86兆6,000億円程度と、
過去最大の水準で推移しています。

東京証券取引所が昨年発表した株式分布状況調査によると、
2020年度の個人株主は延べ 5,981万人と過去最多になりました。
前年度から308万人増で、7年連続の伸びでした。
(株主数は各企業分の単純合算で重複があり、
例えば1人が10銘柄
持っていれば延べ10人に。)

保有額でも「個人その他」は125.5兆円と前年度比35.1兆円増で、
初の120兆円
乗せになりました。
株高の影響で個人の株取引が活発化したのが背景だと思われます。
株高に加え、売却益や配当が非課税の「NISA」の浸透で保有銘柄増や投資家の
裾野拡大につながったようです。

実はなのですが、
これが正式に個人投資家と言えるかどうかは別として、
機関投資家でも、
海外投資家でもない最大の投資家は、
日銀なのです。

保有額が全体に占める比率でみると、
個人その他は前年比0.
3ポイント増の16.8%で、
外国人投資家などが同0.6ポイント増の30.
2%で 3年ぶりに30%超になりました。

信託銀行は同0.8ポイント増の22.5%で、
事業会社を
抜いて過去最高を記録しました。
上場投資信託(ETF)
の買い入れで、
日銀が
国内株の最大保有者になった影響もあるようです。
一方、銀行•
保険など金融機関は持ち合い解消などで比率は低下傾向になりました。
また「株主の裾野が広がってきた」との声もあります。

過去の失敗体験にとらわれない若者層が、
新型コロナ感染拡大で相場が下落した局面で参入しています。
日本証券業協会によると、
20年度はネット取引口座数が前年比13%増で、
伸び率は過去5年で最も高いようです。

若い世代ほど新規開設に積極的で、
20代以下は4割強増え、
30代も2割増。
60代以降は6%前後の増加にとどまり、
個人投資家全体では20年度に金額ベースで日本株を売り越しています。
保有額が大きい高齢世代が年度後半の相場上昇で利益確定売りに回ったようです。
「大株主総覧2021年版」によれば、
コロナ禍でも個人株主を増やした企業は以下の図のとおりです。

トップのオリックスは21、22年と1株当たり78円配当、自己株式取得など、
株主還元に積極的で株主優待も充実しています。
2位、
4位の日本航空とANAは公募増資とコロナ後の需要回復ヘの期待で、
3位JTは高配当銘柄です。
10位の
アンジェスは1999年に大阪大医学部森下隆ー教授が創業した創薬ベンチャーで、
新型コロナウイルスDNAワクチン開発を推進している企業です。

4月4日、東京証券取引所は60年ぶりとなる市場区分の見直しと再編を実施しました。
再編前の東証には4つの市場があり、
全体で約3,
700社が上場していて、
内訳は
東証1部が約2,100社で、
2部の約500社、
新興企業のジャスダック約700社や
マザー ズの約300社を大きく上回っていました。

束証1部に直接上場するための時価総額が12年に250億円に引き下げられ、
2部やマザーズからの内部昇格は40億円で1部上場が可能となっていました。
市場からの退出基準も甘く、
時価総額が10億円あれば上場を継続できるため、
企業が自らの価値を引き出す努力を怠る弊害が目立っていました。
つまり、
退出基準が甘く、
東証1部が膨張すると言った現象が起こっていたのです。

東証が60年ぶりに再編に踏み切ったのは、
世界の主要な証券取引所に後れを取り、
東証の地盤沈下が進んだことへの危機感があります。
バフル期には上場企業の株式時価総額が世界ーを誇った東証ですが
日本の低成長を
映すように欧米の証券市場より地盤沈下が進行しました。

東証上場企業の時価総額は直近10年間で2倍ですが、
急成長する米IT大手などが上場する米ナスダックは6倍超なり、
3倍超に膨らんだ上海にも抜かれ、
東証は5位に転落となっています。

「貯蓄から投資へ」という言葉は2001年に政府が掲げたスローカンです。
背景は日本の家計の金融資産が預貯金に偏っていたためで、
政府は貯蓄から投資への流れを進めるため様々な政策をとってきましたが、
効果のほどはどれほどだったのでしょうか?
金融庁金融レポートによると、
1995年のアメリカの家計金融資産のうち、
株式•投資信託の占める割合は25.1%、
1995年の日本の家計の金融資産のうち、
株式•投資信託の占める割合は9.6%となっていました。

スローガンを掲げて20年たった今は、
どうなっているかと言うと、
家計の
金融資産に対する現預金の割合は2000年の53.9%に対し、
20年は53.7%と20年間変化なく、
欧米とは大きな差が出ていることが分かります。

日本では個人金融資産が21年度末で2,000兆円を突破、
ここ数年は株高の恩恵もあり、
30年前に比べ倍増しています。
また株•
投資信託が金融資産の半分を占める米国は30年で6.7倍に増加しています。

日本の家計は株高の恩恵を受けづらく、
企業にもお金が巡りづらい構図になっています。
日本では個人金融資産は増えたものの、
株・
投資信託の金融資産に占める割合は、
20年間変化がなかったという結果となっています。

東京証券取引所の60年ぶりとなる、
市場区分の見直しと再編は、
世界の投資マネーを呼び込めるでしょうか?
最上位のプライム市場では流通株式時価総額が100億円以上などの条件を満たし、
海外投資家の投資対象となる企業を対象としました。
一般投資家が自由に売買できる株式の割合を高め、
市場評価を高めるため、
独立社外取締役の比率を高めたり、
国際基準に基づく気候変動リスクを開示するなどカバナンス向上も必要で、
東証の姿勢だけでなく、
上場企業の改革そのものも問われます。

再編で市場の魅力を高め、
投資マネーを呼び込む意向でしたが、
フライム市場の顔ぶれは大きくは変わらず、
「看板の掛け替え」
との批判もあがっています。
東証1部企業の約8割がプライム市場に移行していて、
投資先の選別のためにもっと上場企業を絞り込んでほしい」
という投資家の意向よりも、
「最上位市場に居続けたい」
という企業や取引先の意向が今のところ優先されたため、
小幅な
再編になったようです。

再編1ヵ月では、
大きな変化はありませんでした。
これまで東証株価指数(TOPIX)が流通時価総額100億円以上を対象としたプライム指数に代わりましたが、
バフォーマンスはTOPIXと動きがほとんど変わらないようです

コロナ禍に株高基調が続いたことで、
若年者を中心に変化の兆しが表れています。
一方、19年の老後資金の2000万円不足問題で資産形成の必要性が認識されたこともあり、
NISAなどの制度面の後押しもあって、
貯蓄から投資•資産形成への流れは緩やかに進んでいるのかも知れませんね。

若年者ほど投資に前向きなのは、
バフル崩壊のトラウマがないからとの声もあります。
社会人になってすぐ積立てを始めたとすると、
今の40~50代はバフル崩壊やリーマン危機の株安で損益がマイナスになる局面が長く続きました。
対照的に20代は長期の株価低迷を経験しておらず、
30代も運用序盤のリーマン危機後、
株価は回復しています。
どちらもNISAの投資促進策の後押しを受けた世代です。

日本で資産形成が進まない背景として、金融に関する知識不足が指摘されています。
日本でも10年ぶりに学習指導要領が改訂され、金融経済教育が追加されました。

●小学校【家庭科】
金銭の計画的な使い方、買物(適切な購入)
●中学校【社会】【家庭分野】
生産や金融の仕組み、計画的な金銭管理
●高校【公民科】【家庭科】
金融商品のメリット・ デメリット、ライフプランニングやリスク管理、
将来に
備えた資産形成

以上が、
10年ぶりに改訂された学習指導要領ですが、
内容もさることながら、
誰がこれらを教えるか、
指導するかがとても大事なことです。

引用 
税理士法人 A to Y
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税理士法人 A to Y 
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