不動産実務において、
先祖代々引き継いできた土地や建物には、
現代の所有者が認識していない「過去の負の遺産」が残っていることが少なくありません。
今回は、実際にあった「70年前の抵当権」をめぐるトラブルと、
その解決のための訴訟手続きについて解説します。
- 70年以上放置された抵当権の壁
今回の事例は、
静岡県浜松市内にある親戚所有の土地に関するものです。
この土地には、
昭和27年(1952年)に債権額30万円(当時の債権者3名)、
および昭和29年(1954年)に債権額40万円(当時の債権者4名)の抵当権が
設定されたままになっていました。
当初の債権者は合計7名。
おそらく、当時の親族間での家を建てるための資金調達が目的だったと推測されます。
その後、お金は返されたものの、
登記上の抵当権は抹消されずに放置されていました。
- 債権者7名が75名に増殖
問題が表面化したのは、
現在の所有者が家の建て替えを検討し、
銀行へ融資の相談に行った時でした。
銀行は、土地に古い抵当権がついている状態では融資を行いません。
第一順位の抵当権として、
古い記録を抹消することが条件となりました。
しかし、抹消しようにも昭和20年代の債権者たちはすでに全員亡くなっています。
抵当権という権利は相続の対象となるため、
当初の7名から世代交代を経て、
現在の法定相続人は実に75名にまで膨れ上がっていました。
権利関係が複雑になり、
面識のない親戚や、
所在すらわからない人が多数含まれる状態では、
一人ひとりを訪ねて承諾を得ることは物理的・時間的に不可能です。
- 解決策としての「抵当権抹消訴訟」
このように、通常の合意による抹消が不可能な場合に取られる手段が、
司法書士を通じた「裁判所への訴訟手続き」です。
この訴訟は、
一般的な「争いごと」としての裁判ではなく、
事実上消滅している抵当権を登記簿上の記載と一致させるための、
いわば「形式的な裁判」です。
裁判所が状況を判断し、
判決を出すことで、
所有者が単独で抵当権を抹消できるようになります。
- 「被告」という言葉が招く心理的抵抗
実務上、
注意が必要なのは親族への配慮です。
この手続きを進める際、
75名の相続人には裁判所から書類が届きます。
法律用語として、
彼らは「被告」と呼ばれます。
不動産の実務に慣れていない方にとって、
「裁判所から書類が届く」「被告になる」という言葉は非常にショッキングです。
「何か悪いことをしたのか」「借金を背負わされるのか」と不安になり、
クレームやトラブルに発展することもあります。
事前に丁寧な説明を行い、
「これは登記を整理するための形式的な手続きであり、
金銭的な負担を強いるものではない」という理解を得ることが、
円滑な進行には不可欠です。
まとめ:早めの登記整理が将来のリスクを防ぐ
今回のケースでは、
最終的に相続人が75名もいたにもかかわらず、
幸いにも大きな反対意見は出ず、
無事に手続きが進みました。
しかし、さらに放置して相続人が100名、200名と増えていけば、
手続きの難易度は跳ね上がります。
農地の仮登記や古い抵当権など、
権利関係が不透明な不動産を所有している場合は、
次の世代に問題を先送りせず、
早めに専門家(司法書士や税理士)に相談し、
登記のクリーンアップを行っておくことを強くお勧めします。
要約
- 背景と課題
- 70年前(1952・1954年)の抵当権が登記上残存。
返済済みでも抹消登記を放置すると、相続を重ねるたびに権利者(債権者相続人)が爆発的に増加。
- 事例では当初債権者7名→相続を経て75名へ。
建替え融資の審査で「古い抵当権の抹消」が条件となり、個別合意での抹消は物理的に不可能な状態に。
- 解決手段(抵当権抹消訴訟)
- 抹消合意が不能な場合は、司法書士主導で「抵当権抹消訴訟(形式的当事者訴訟)」へ。
実体的には消滅した権利を登記簿の状態に整合させるための“形式裁判”。
判決確定で単独抹消が可能に。
- 実務上の注意(心理抵抗の緩和)
- 相続人全員に裁判所から書類(被告表示)が届くため、誤解・不安を招きやすい。
事前説明で「金銭負担なし、権利整理のための手続き」と丁寧に周知することが不可欠。
- 結論(先送りしない登記のクリーンアップ)
- 放置すれば相続人は100名・200名と指数関数的に増加し、難易度・コストが跳ね上がる。
農地の仮登記・古抵当・古い差押えなど“負の遺産”は早期に専門家と整理を。
この動画から得られること
- 返済済みでも登記を放置すると危険な理由(権利者の指数関数的増加と実害)
- 抵当権抹消訴訟の全体像(要件・手順・書類・期間・費用の目安)
- 公示送達・相続人探索など、合意不能時のプロセス設計
- 家族・親族への周知文面と説明ポイント(不安・誤解の解消)
- 今すぐ行うべき登記クリーンアップのチェックリスト
例え話
古い抵当権の放置は、
庭のツタを根から抜かずに
切り口だけ隠すようなものです。
時間が経つほどツタは広がり、
壁一面を覆って剥がすのに
何十倍の手間がかかる。
根(登記の原因)から早めに処理すれば、
小さな作業で済みます。
専門家としての付加価値
- 初動DD(デューデリジェンス)リスト
- 登記事項証明(抵当権設定日・順位・債権額・債権者氏名)
- 返済の痕跡(領収書・通帳・覚書・関係者の陳述書)
- 相続関係の基礎資料(故人の戸籍・除籍・改製原戸籍、相続関係説明図)
- 抹消訴訟の流れ(概観)
1) 司法書士・弁護士と方針決定(合意抹消可否の判断)
2) 相続人調査(戸籍収集・住民票附票・職権消除の確認)
3) 訴状・当事者目録作成→提訴(被告多数は書式統一)
4) 送達(通常/公示送達)→判決→確定証明→単独抹消登記申請
- 期間・費用の目安(実務感)
- 期間:被告数・送達状況により6〜18カ月程度
- 費用:戸籍収集・送達・司法書士/弁護士報酬・登録免許税等で数十万〜事案により百万円超も(放置期間・相続人数に比例)
- コミュニケーション雛形(要旨)
- 手続の目的:登記の整合化・金銭請求なし
- 被告表示の意味:形式的な当事者表示で不利益なし
- 必要対応:特段なし/照会があれば司法書士窓口へ
視聴後アクション
- 具体ステップ(5項目)
1) 登記事項証明を取得し、古い抵当・仮登記・差押えの有無を棚卸
2) 返済記録・覚書・通帳など「消滅の痕跡」を収集(無ければ関係者の陳述を準備)
3) 司法書士へ相談し、合意抹消or抹消訴訟の方針・見積・スケジュールを確定
4) 相続人調査(戸籍一式・相続関係説明図)を開始、送達先リスト化
5) 親族向け周知文を送付(目的・不利益なし・問合せ窓口)し、訴訟手続へ着手
- 用語の簡潔説明
- 形式的当事者訴訟:権利の実体的争いではなく、
登記等の形式的状態を実体に合わせるための手続を裁判所で行う訴訟。
- 公示送達:相手方の所在不明時に、掲示等で「送達があった」とみなす制度。
補助資料
- チェックリスト(抜粋)
- 古い権利の棚卸(抵当・根抵当・仮登記・差押)
- 返済痕跡・証拠の有無
- 相続人リスト・連絡先・送達方法
- 司法書士・弁護士の役割分担・費用見積
- 予定タイムライン(提訴→送達→判決→確定→抹消登記)
- テンプレ(要点)
- 親族向け周知文(被告表記の説明・不利益なし・窓口明記)
- 相続関係説明図フォーマット
- 訴訟提出書類リスト(登記・戸籍・陳述書 等)
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