2年間の猶予期間を経て強制適用となる改正電子帳簿保存法が、
中小企業や個人事業主にどのような影響を与えるのか、
その実態と注意点を解説します。

  1. 電子帳簿保存法改正の経緯と「強制適用」の重み

電子帳簿保存法は、
デジタル庁の発足とともに、
帳簿の電子保存を推進するために改正されました。
当初は「事務負担が軽減される」と期待されていましたが、
実際には非常に厳格な要件が課されることとなりました。

当初、要件を満たさない場合の「青色申告の取り消し」といった厳しい罰則が示唆されたことで、
内外から大きな批判が集まりました。
その結果、2年間の猶予期間が設けられましたが、
この期間内に法律が撤廃されることはなく、
全ての事業者に強制適用されるフェーズへと移行しています。
特に中小企業にとっては、
非常に高いハードルとなることが予想されます。

  1. 電子帳簿保存法における「3つの区分」

改正法では、保存方法が大きく3つの区分に整理されています。

電子帳簿等保存(任意)

会計ソフト等で作成した総勘定元帳、仕訳帳、決算関係書類(貸借対照表・損益計算書等)をデータのまま保存する方法です。
現在、多くの税理士事務所が電子申告に対応しているため、
ここは大きな問題になりにくい部分です。

スキャナ保存(任意)

紙で受け取った領収書や請求書を、
スキャナやスマートフォンで撮影して電子データとして保存する方法です。
一定の要件を満たせば、
原本の紙を廃棄することが可能になります。

電子取引(義務)

今回の改正で最も重要なポイントです。
メールに添付されたPDFの請求書や、
EC
サイト(Amazon等)からダウンロードした領収書など、
最初から「データ」でやり取りした取引です。
これまでは「紙に印刷して保存」することも認められていましたが、
改正後は「データのまま、法的な要件を満たして保存」することが義務化されました。

  1. 中小企業を悩ませる「厳格な保存要件」

データの保存には、
単にハードディスクに保存するだけでは不十分で、
以下の要件(真実性・可視性の確保)をクリアしなければなりません。

  • 検索機能の確保:
     「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できるようにしなければなりません。
  • 改ざん防止策:
     タイムスタンプの付与、
    または訂正・削除の履歴が残るシステムの導入。
    システムがない場合は、
    「訂正削除の防止に関する事務処理規定」を作成・運用する必要があります。
  • ファイル名の統一:
     検索性を高めるため、
    ファイル名に日付や金額、取引先を含めて管理するなどの手間が発生します。

若い世代やITリテラシーの高い経営者であれば対応可能かもしれませんが、
高齢の経営者が多い中小企業にとって、
これらのシステム導入や事務負担の増加は極めて大きなコストとなります。

  1. 税務調査のデジタル化と「真の目的」

電子帳簿保存法が施行されることで、
今後の税務調査は劇的に変化します。

  • データの直接分析:
     国税当局は、事業者の会計データを直接吸い上げ、
    専用のソフトで分析を行います。
  • 改ざんの即時発覚:
     ログ(履歴)を確認することで、
    後からの修正や改ざんは即座に特定されます。
  • 削除データの復元:
     専門のソフトウェアにより、
    消去されたメールやデータも復元して調査対象とする体制が整いつつあります。

国側の狙いは、
マイナンバー等との紐付けを含めた「一元的な情報管理」と「調査効率の向上」にあると考えられます。

  1. デジタル化への懸念とリスク管理

IT化によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、
新しい産業を生む側面もありますが、
強制的な移行にはリスクも伴います。

  • システム障害リスク:
     太陽フレアによる磁気嵐や大規模なシステム障害が発生した場合、
    全ての電子データが消失する危険性はゼロではありません。
  • 中小企業の廃業懸念:
     度重なる法改正や事務負担の増大が、
    高齢経営者の引退や廃業を加速させる一因になるという懸念もあります。

結論

電子帳簿保存法への対応は、
もはや避けて通れない法的義務です。
国が無料の標準ソフトを配布するなどのサポートが望まれるところですが、
現状は各事業者が自己責任で体制を整えなければなりません。

経営者は、
自社のITリテラシーに応じた現実的な対応策(システムの導入、あるいは事務処理規定の整備)を早急に検討し、
来るべき強制適用時代に備える必要があります。

要約

- 制度の位置づけと負荷
  -
電子帳簿保存法はデジタル化推進の旗印のもと改正。
    猶予期間を経て「強制適用」フェーズへ。
    中小企業・個人事業主には要件の厳格さが高いハードル。

- 3区分の整理
  -
電子帳簿等保存(任意):会計帳簿・決算書をデータ保存。
  -
スキャナ保存(任意):紙の領収書等を撮影・取込し原本廃棄可(要件充足前提)。
  -
電子取引(義務):メール/PDFEC領収書など最初からデータは、印刷保存が不可。
                                   法要件を満たす電子保存が必須。

- 必須要件の骨格(電子取引)
  -
検索性確保(取引日付・金額・相手先で検索可能)。
  -
改ざん防止(タイムスタンプ付与、または訂正削除履歴が残る仕組み、もしくは事務処理規程の運用)。
  -
可視性(規則化されたファイル命名・保管ルール)。

- 税務調査の変化(デジタル化)
  -
会計データの直接分析、ログで改ざん発覚、削除データの復元も想定。
調査効率の大幅向上。

- リスクと含意
  -
システム障害・データ消失への備え(BCP)が不可欠。
高齢経営者・中小の事務負担増による対応難も現実。

- 結論
  -
回避不能の義務。
自社のIT成熟度に応じて、システム導入 or 事務処理規程でミニマム運用を確立し、強制適用に備える。

 

本動画のポイント

- 電子取引の義務化ポイントと「印刷保存NG」の具体的な境界線
-
検索3キー(日付・金額・相手先)を満たす命名・保管ルール
-
タイムスタンプ運用 vs 事務処理規程の現実解(コストと運用比較)
-
税務調査のデジタル化に備えるログ・バックアップ・BCP設計

 

 

この動画から得られること

- 制度理解
  - 3
区分の要件差、電子取引の義務化と違反リスクの全体像

- 運用設計
  -
ファイル命名規則、フォルダ階層、検索性確保のテンプレ

- 改ざん防止
  -
タイムスタンプ/ログ管理/事務処理規程の選択肢と使い分け

- 調査対応
  -
データ提供の流れ、監査証跡、削除・訂正履歴の提示方法

- レジリエンス
  -
バックアップ(3-2-1ルール)、障害時のBCP、運用教育

 

専門家の付加価値(実務テンプレート)

- 命名規則(例)
  - YYYYMMDD_
取引先_金額_書類種別.pdf(例:20250131_ABC_154000_請求書.pdf
  -
書類種別は「請求書/領収書/見積/契約書」など固定語彙に統一

- フォルダ階層(例)
  - 01_
請求書/02_領収書/03_契約書/04_見積/05_決算関連年度>月>取引先の順

- 検索性の担保
  -
保存先をクラウドSaaSまたはNASで統一し、メタデータ(取引日・金額・相手先)をファイル名に内包

- 改ざん防止の選択肢
  - A
:タイムスタンプ運用(受領後一定期間内付与、運用負荷はシステム依存)
  - B
:ログ一体型SaaS(訂正削除履歴を自動保持)
  - C
:事務処理規程(訂正・削除の手順/権限/記録様式/保存期間を明文化し運用)

- 事務処理規程の骨子
  -
目的・範囲/定義/受領~保存のフロー/ファイル命名と検索項目/訂正・削除の記録様式/権限と責任者/点検(内監査)頻度/教育・罰則

- 電子取引ワークフロー(標準)
  -
受領(メール/ダウンロード)
 →命名規則で保存
 →台帳へ記録(取引日・金額・相手先・担当)
 →改ざん防止(タイムスタンプorログ/規程)
 →月次点検決算保管

- 税務調査対応パッケージ

  - データ提供範囲の合意検索キーの提示
 →期間・取引先ごとの抽出データを提供
 →訂正・削除履歴のログ提出

- レジリエンス設計(3-2-1バックアップ)
  - 3
つのコピー/2種類の媒体/1つはオフサイト。
    復旧テストを年1回実施

- 導入プラン比較
  -
ミニマム:既存ストレージ+命名規則+事務処理規程(低コスト・教育重視)
  -
スタンダード:ログ一体型SaaS+ワークフロー(中コスト・運用容易)

 

視聴後アクション

- 取引の棚卸しをする
  -
電子取引(メール/PDF/EC)と紙の取引を一覧化し、保存方法を振り分けます。

- 命名規則を決める
  -
日付・金額・相手先・書類種別を含むルールを1行で定義し、全員で統一します。

- フォルダ構成を作る

  - 年度>月>書類種別>取引先の階層を作り、過去分も順次移行します。

- 改ざん防止の方式を選ぶ
  -
タイムスタンプ/ログ一体型SaaS/事務処理規程のいずれかを選び、今日から運用を開始します。

- 事務処理規程をドラフトする
  -
受領~保存~点検~訂正・削除の手順をA4数枚にまとめ、責任者と承認フローを明記します。

- 税理士にレビューを依頼する
  -
命名規則・規程・保存先・バックアップの草案を共有し、改善点を洗い出します。

 

例え話

 図書館で背表紙のない本は、
棚にあっても見つけられません。
電子帳簿も同じで、
背表紙(ファイル名)と目録(検索機能)がなければ、
税務上存在しないに等しいのです。

 

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