【遺言書と異なる遺産分割は可能か?】その条件と注意点を解説

今回は、相続において非常に多い相談の一つである
「遺言書の内容と異なる遺産分割はできるのか」
というテーマについて解説します。

  1. 遺言書があっても、異なる分け方は可能

結論から言うと、
遺言書の内容と異なる遺産分割をすることは可能です。

例えば、
あるご家族で
「長女に財産の大半を譲る」
というお父様の遺言書が見つかったとします。
しかし、
他の兄弟が納得していなかったり、
あるいは長女自身も
「私は十分に受けてきたので、これ以上は必要ない。皆で分けよう」
と考えていたりする場合、
遺言書に従わない選択をすることができます。

  1. 遺言書と異なる分割をするための「3つの条件」

ただし、
自由に分けられるわけではなく、
以下の条件を満たす必要があります。

  1. 遺言者が「異なる分割」を禁止していないこと
    遺言書の中に「遺言と異なる分割を禁止する」といった記載がないことが前提となります。
  2. 相続人・受遺者全員の同意があること
    長女を含むすべての相続人と、遺言で財産を受け取る予定の人(受遺者)全員の合意が必要です。
    一人でも反対する人がいれば、
    原則として遺言書に従うことになります。
  3. 遺言執行者の同意を得ること(指定されている場合)
    遺言書の内容を実現する「遺言執行者」が指定されている場合は、
    その執行者の同意も必要です。
  1. 「特定遺贈の放棄」という選択肢

今回の例のように、
長女が「自分はもう要らない」とする場合、
「特定遺贈の放棄」という手続きが重要になります。

遺言で指定された財産を受け取る権利を本人が放棄すると、
その財産は一旦「未分割の財産」となり、
改めて相続人全員による
「遺産分割協議」で分け方を決めることができるようになります。

  1. 実務上の注意点

手続き自体はそれほど難しくありませんが、
現実には「遺言書通りの分け方をしたくない」という相談の背景には、
親族間のトラブルや不満が潜んでいることが少なくありません。

感情的な対立があると、
全員の合意を取り付けることは容易ではありません。
後でもめないためには、
生前から家族でよく話し合っておくことや、
遺言書を作成する側もバランスを考慮した内容にすることが非常に重要です。

まとめ

遺言書は故人の最後の意思ですが、
残された家族全員が納得できるのであれば、
話し合いによって新しい分け方を決めることは法律で認められています。
もし遺言の内容に疑問や不満がある場合は、
まずは相続人全員の意思を確認し、
専門家に相談しながら解決の道を探ってみてください。

相続に関するご相談の中でも、
「遺言と違う分割は可能ですか?」
という質問は非常に多いです。  

たとえば、こんなケースを考えてみましょう。

具体例:遺言書が家族の間で問題に

ある家族で、
お父様が亡くなった後に遺言書が見つかりました。

そこには、
「長女に財産の大半を与える」
と書かれていました。

しかし、
ほかの2人の兄弟は納得がいきません。

さらに長女も、
「お父さんからたくさんもらったから、これ以上は十分」
と言っています。

遺言と異なる分割はできるの?

結論:可能です!ただし条件があります。 

遺言がある場合、
原則としてその内容に従う必要があります。

しかし、
以下の条件を満たせば、
遺言と異なる分割をすることもできます。

1.  遺言者が「遺言と違う分割を禁止する」と書いていないこと  

   遺言書に「この遺言以外の分割は認めない」と明記されていなければ問題ありません。

 2. 相続人全員が同意すること  

    長女を含む相続人と、遺言で財産を受け取る予定の人(受遺者)全員の合意が必要です。

3. 遺言執行者が同意すること(必要な場合のみ)

    遺言執行者が指定されている場合、その同意も必要です。

特定遺贈の放棄について

このケースで重要なポイントは
「特定遺贈の放棄」
です。

遺言に書かれた財産を受け取る予定の人(この場合は長女)は、
その権利を放棄することができます。

放棄の手続きは簡単!

特別な手続きは不要です。  

・他の相続人に対して「放棄します」と意思表示するだけでOK。  

・放棄が成立すると、その財産は他の相続人に戻ります。

放棄後の流れ

放棄が成立したら、
改めて相続人全員で遺産分割協議を行い、
新しい分配方法を決めます。  
これにより、
法律的にも税法的にも問題なく進められます。

遺言執行者がいる場合の注意点

もし遺言執行者が指定されている場合、
注意が必要です。

遺言執行者は、
遺言の内容を実現する責任を持っています。

したがって、
次のことに気をつけてください。

・相続人全員と受遺者が同意するだけでは不十分。  

・遺言執行者の同意も必要です。

遺言執行者の同意を得られれば、
遺言と異なる分割も可能です。

逆に同意がなければ、
分割協議を進めることはできません。

円満な相続を目指して

相続は、
残された家族にとって大切なテーマです。  

遺言者の意思を尊重することはもちろん重要ですが、
何より大切なのは家族みんなが納得できる解決策を見つけることです。

このような場合、
法律や税務の専門家と一緒に話し合いを進めることで、
トラブルを未然に防ぎ、
スムーズな相続が実現できます。  

記事の要約(MECE・専門家視点)

- 結論(できる/できない)

  - 遺言書と異なる遺産分割は可能。ただし条件付き。

- 可能にする3条件(法的要件)

  - 条件1:遺言書に「遺言と異なる分割を禁止する」旨の記載がないこと。

  - 条件2:すべての相続人+受遺者(遺贈の受取人)の全員合意があること。

  - 条件3:遺言執行者が指定されている場合は、その同意を得ること。

- 実務上の主要手段

  - 特定遺贈の放棄:受遺者が受け取りを放棄当該財産は未分割財産へ全員で遺産分割協議を実施。

  - 遺産分割協議書(遺言と異なる内容)の作成・押印・添付書類整備(戸籍・印鑑証明ほか)。

- 注意点(税務・手続・対人)

  - 税務:相続税の申告期限(10か月)との整合。特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等)は分割未了だと使えない場合あり。未分割申告・3年内分割特例・更正の請求での対応を計画。

  - 手続:不動産は登記(相続登記/遺贈登記)の論点、金融機関の遺産整理実務に沿った書類整備が必要。

  - 対人:背景に感情対立があることが多く、合意形成の設計(説明・記録・第三者関与)が肝心。

- まとめ

  - 「禁止の有無全員合意執行者同意」の三段チェックが鍵。放棄・協議・登記・税務までを一連のフローとして設計すれば、遺言と異なる分割でも法的安定性を確保できる。

例え話

  遺言は航路図、遺産分割は船の操舵に似ています。
航路図は指針ですが、
乗組員(相続人・受遺者)全員が同意し、
航海長(遺言執行者)も了承すれば、
安全な別ルートに進路変更できます。

この動画から得られること(学習・実践)

- 遺言と異なる遺産分割を可能にする三つの条件の理解

- 特定遺贈の放棄から遺産分割協議への実務手順

- 登記・金融口座の名義変更に必要な書類と段取り

- 相続税の期限・特例・やり直し(更正の請求)の具体像

- 合意形成を円滑にする説明・記録・第三者関与の方法

視聴後アクションのやさしい解説(初学者向け)

- 今すぐやること

  - 禁止条項の確認:遺言書に「異なる分割禁止」の記載がないか精読。

  - 関係者の意思確認:相続人・受遺者の合意可否を個別にヒアリング。

  - 放棄書の準備:受遺者が放棄する場合は、放棄の意思表示書を作成・保管。

  - 協議書ドラフト:新しい配分案を条項化(不動産・預貯金・有価証券別に明記)。

  - 税務・登記の相談:10か月期限と特例の可否、登記に必要な書類を専門家に確認。

- 何が得られるか

  - 法的に有効な手順で、遺言と異なる分割を進めるための全体像が把握できる。

  - 税務・登記の手戻りを防ぎ、合意形成をスムーズに進められる。

専門家としての付加価値(実務チェックリスト/実装指針)

- 事前チェック

 ①遺言の種類(公正証書/自筆)・効力確認、
禁止条項の有無、
遺言執行者の指定・権限、
受遺者・相続人の範囲確定(戸籍連続取得)。

- 放棄協議の書類

  - 受遺放棄書(氏名・対象財産・放棄意思・日付・署名押印)、遺産分割協議書(物件特定・持分・代償金・期限・実行方法)、本人確認資料、印鑑証明。

- 登記・金融実務

  - 不動産:相続登記/持分移転の登記原因・必要添付書の整備。金融機関:遺産整理の所定書式・調停/協議書添付。

- 税務・スケジュール

  - 相続税10か月の申告計画、未分割申告・3年内分割特例・更正の請求の可否。配偶者特例・小規模宅地等の適用条件の再点検。

- 合意形成・紛争予防

  - 事実関係の共有メモ(生前贈与・介護負担等)、面談記録、第三者(弁護士・税理士・司法書士)の同席、議事録の交付と保管。

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引用
税理士法人A to Y メルマガ 令和6年12月3日配信
【相続】遺言と異なる分割をしてもいいの?分かりやすく解説します!

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