家庭裁判所に持ち込まれる年間の遺産分割事件数(1万3040件)の実態と、
相続トラブルが増加している要因について、
専門的な視点から整理しました。
【1万3040件】データから読み解く遺産分割の現状とトラブルの背景
家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割の調停・審判件数は、
年間で約1万3040件(平成30年度データ)にのぼります。
この数字を多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれですが、
相続の実態と照らし合わせると非常に興味深い事実が見えてきます。
- 課税対象者の約1割が紛争化している
平成30年度の統計によると、
年間の被相続人(亡くなった方)は約136万人。
そのうち相続税の課税対象となったのは約11万6000人です。
この「課税対象者」の数に対して「分割事件数」を比較すると、
相続税が発生するケースの約1割強で紛争が起き、
裁判所に持ち込まれている計算になります。
また、実際には相続税がかからない(財産が基礎控除以下の)ケースでも、
感情的な対立から調停に至るケースは少なくありません。
- トラブルになりやすい家族構成
意外なことに、
相続人の数が多いほど紛争が長期化するとは限りません。
過去には相続人が13人というケースもありましたが、
大人数の場合は「話し合いで解決しよう」という力学が働きやすい傾向にあります。
一方で、相続人が2〜4名といった少人数の場合、
顔が見える関係性だからこそ主張が激しくなり、
対立が深刻化しやすいのが現状です。
- なぜ「争族」が増えているのか? 3つの主要因
相続が「争族」化している背景には、
以下の3つの要因が考えられます。
- 意思表示の不足:
亡くなった本人が生前に遺言書を遺していなかったり、
自身の考えを周囲に明確に伝えていなかったりすることが第一の要因です。
本人の意思が不明確なため、
相続人同士が自らの権利を主張し合うことになります。 - 家督相続から均等分割への意識変化:
かつての日本では「長男がすべての跡を継ぐ(家督相続)」という考え方が一般的でした。
しかし現在は、
嫁いだ娘や次男などが「子供は平等である」として正当な権利を主張することが増えています。
ここに、配偶者(夫や妻)からの「平等にもらうべきだ」という助言が加わり、
対立に拍車をかけるケースが目立ちます。 - 不確かな情報の氾濫:
インターネット上で
「裁判所に持ち込めば簡単に財産が増える」
「粘れば得をする」といった安易な情報(フェイクニュースに近いもの)が広まっています。
法的な根拠や制度を正しく理解せず、
周囲の「もらう権利がある」という声に煽られて
紛争に踏み切ってしまう人が増えています。
- トラブルを未然に防ぐために
有名な「大戸屋」のお家騒動のように、
相続争いが発端となり、
最終的に事業の支配権(TOBなど)を失うような大きな事態に発展することもあります。
相続トラブルを避けるためには、
以下の2点が重要です。
- 生前の準備:
親がしっかりとした遺言を遺し、
家族全員に意向を伝えておくこと。 - 自助努力と自立:
相続人に頼るのではなく、
自分自身で資産を形成し(不動産投資など)、
経済的に自立すること。
自らに余裕があれば、
相続財産を巡って泥沼の争いをする必要はなくなります。
相続は単なる「お金の分配」ではなく、
家族の絆や人生の「継続性」をどう保つかの問題です。
正しい知識を持ち、
生前からしっかりと対策を立てることが、
円満な相続への唯一の道と言えます。
要約
- 家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割(調停・審判)は、年間約1万3040件(平成30年度)。
数字だけ見ると一部に見えますが、相続税の課税対象(約11万6000人)と比べると、課税が絡む相続の約1割強が紛争化している計算になります。
- 紛争は「資産が多い家だけの話」ではありません。
相続税がかからない層でも、感情対立や情報の誤解で調停に至ることがあるため、体感以上に発生しています。
- トラブルは相続人が多いほど深刻、とは限りません。
むしろ相続人が2〜4人の“少人数”の方が、互いの距離が近い分、主張がぶつかり長期化しやすい傾向があります。
- 「争族」が増える主因はMECEに整理すると、
- 本人の意思表示不足(遺言・方針不在)
- 価値観の変化(家督から均等分割へ/配偶者の助言も影響)
- 不確かな情報の氾濫(粘れば得、裁判所で増える等)
の3点に集約されます。
- 予防策は、生前準備(遺言+家族への説明)と、相続人側の自立(自分の資産形成)。
相続は「お金の分配」ではなく、家族と人生の継続性を守る設計問題です。
例え話
相続は
「地図のない分岐点」
に似ています。
地図(遺言・方針)がないと、
家族それぞれが
別方向へ進み、
正しさを争って衝突します。
先に地図を用意しておくことが、
最短で確実な予防策です。
この動画から得られること
- 遺産分割事件1万3040件の意味を「相続全体の母数」と「課税相続」との比較で理解できる
- 相続人が少ないほど揉めることがある理由(心理・交渉構造)を把握できる
- 争族を招く3要因を、感情論ではなく構造として整理できる
- 「遺言+説明+書面化」で争いを減らす実務ステップが分かる
- 相続人側が「揉めない体質」を作るための資産形成・自立の考え方を学べる
専門家の付加価値(実務ポイント・チェックリスト)
1)紛争化の起点をMECEで潰す(予防設計)
- 意思(遺言・付言)
- 遺言の有無だけでなく、「なぜその分け方か」を付言事項で言語化
- ルール(法と手続)
- 遺留分・特別受益・寄与分など、争点になりやすい論点を事前に棚卸
- 財産(見える化)
- 不動産・預金・有価証券・負債・保証債務の一覧化(財産目録)
- 感情(合意形成)
- 少人数相続ほど感情が前面化しやすいため、第三者同席(専門家)で議事録化
2)少人数相続が揉めやすい「構造」への対処
- 2〜4名は「誰が何を言ったか」が濃く残りやすい
- 争点を「金額」ではなく「論点」に分解(不動産を誰が取る/代償金/管理負担/介護負担等)
- 早期に「落としどころ」を用意(代償分割・換価分割・共有回避)
3)実務チェックリスト(着手順)
- 1)財産目録を1枚で作成(資産・負債・所在・概算)
- 2)遺言の要否判定(不動産の偏在、再婚、相続人間の温度差があるなら優先度高)
- 3)家族会議を設計(議題・結論・宿題を文書化)
- 4)遺言案作成→公正証書化を検討(証拠力と執行性を重視)
- 5)定期更新(年1回、財産と意向の見直し)
視聴後アクション
- 今日やること
- まず「相続人になり得る人」を書き出してください。
人数と関係性が見えるだけで、準備の優先順位が決まります。
- 今週中
- 財産を「不動産」「預金」「有価証券」「保険」「負債」に分け、分かる範囲で金額と所在をメモにしてください。
完璧でなくて構いません。
- 2週間以内
- 遺言の相談予約を入れてください。
予約が確定すると、準備は半分前進します。
- 1か月以内
- 家族会議を一度だけ開き、「何を大切に分けたいか(公平/事業継続/介護負担の精算等)」を言葉にして残してください。
- 迷ったら
- 「地図(遺言・方針)がないと揉める」という一点だけ思い出してください。
早めの準備が、最も費用対効果の高い相続対策です。
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