身近な方に相続人がいない場合や特別にお世話をしていた方から
「自分が亡くなったら財産を自由に使ってね」
などと頼まれたことはありませんか?

ところが実際には、
「遺言書がない」
「相続人がいない」
というケースは意外と複雑な手続きが絡みます。

今回は、特別縁故者として財産分与を受ける場合、
具体的にどんな手続きを踏み、
そしてどのように課税されるかを簡単に解説します。

特別縁故者って何?

特別縁故者とは、
被相続人(亡くなった方)と生計を同じくしていた方や被相続人の療養看護に努めた方、
その他特別に縁が深い方
をいいます。

相続人がまったくいない場合、
相続財産は最初に、
「相続財産法人」として整理されます。
その後、
相続人がいないまま手続きを進めると、
家庭裁判所の審判により「特別縁故者」へ財産が分け与えられることがあるんですね。


☆たとえば、

一人暮らしの高齢者のお世話を無償のボランティアとして続けていたAさん。
高齢者に相続人がいないまま亡くなってしまったため、
周囲から勧められて特別縁故者として家庭裁判所に財産分与の申立てを行ったところ、
無事その分与が認められました。


特別縁故者への財産分与が決まるまでの流れ

1.相続財産清算人の選任と公告

家庭裁判所が「相続財産の清算人」を選びます。
そして「もし相続人がいるなら、○か月以内に名乗りを上げてください」
といった公告がなされます。

2.債権者・受遺者への弁済手続き

相続財産の清算人は、相続債権者や受遺者に対し、
「○か月以内に請求を申し出て」と公告。
この段階で残る財産がどれだけあるかを確定していきます。

3.特別縁故者への財産分与の申立て

相続人がいない場合、特別縁故者として家庭裁判所に
「財産分与してほしい」と申立てできます。
ここで認められると、晴れて相続財産を受け取ることができるのです。

課税関係はどうなるの?

1. 遺贈として扱われる

特別縁故者が分与を受けた財産は、
相続税法上は「遺贈」による取得とみなされます。
遺贈扱いになると、相続税を計算する必要が出てきます。

2. どの時点の法令が適用されるの?

「被相続人(亡くなった方)が亡くなったタイミング」
で施行されていた相続税法を使います。
実際に財産を受け取るのが何年も後になっていても、
被相続人の死亡時点の相続税法で計算します。

3. 課税価格はいつの時点の価額?

財産の時価は、「分与を受けた時点」の価格が相続税の課税対象になります。
たとえば亡くなったのは2年前でも、
特別縁故者の財産分与が確定した今年の価額で計算します。

4. 特別縁故者にとっての注意点

①基礎控除
特別縁故者は「法定相続人」ではないので、
3,000万円の基礎控除のみ(法定相続人の数による加算はなし)。

②税率の20%加算
被相続人の子や配偶者以外が相続財産を取得すると、
相続税にさらに20%が加算されます。
特別縁故者は基本的に他人なので、
この加算の対象になります。

③過去の生前贈与があれば加算される場合がある
特別縁故者は遺贈取得者と同じ扱いですので、
一定期間内(今後は段階的に「亡くなる前3年→7年」まで延びていく予定)の贈与財産がある場合、
それらも相続税の課税価格に加算されます。

納税義務が確定するタイミングと申告期限

相続税の納税義務は被相続人の死亡時点で成立します。
ただし、特別縁故者が分与を受けると決まったら、
「分与が認められたことを知った日の翌日から10か月以内」
に相続税の申告・納付が必要です。

「亡くなった時点の相続税法を使う」とはいえ、
実際に財産を受け取るのがずっと後になる場合も珍しくありません。
最短でも相続財産清算人の選任から9か月ほど、
長いと数年~10年近くかかるケースもあります。


特別縁故者に対する財産分与は、
「相続人がいなくても大切な存在として認められる」制度です。
ただし、財産取得の手続きは慎重に進み、
相続税の計算と申告をきちんと行わなければなりません。

記事の要約(MECE

- 制度の趣旨

  - 相続人がいない場合でも、被相続人と生計同一・療養看護・特別な関係にあった「特別縁故者」に、家庭裁判所の審判で相続財産を分与できる制度。

- 流れ(手続)

  1) 家庭裁判所が相続財産清算人を選任し公告(相続人探索) 

  2) 債権者・受遺者への弁済で残余財産を確定 

  3) 特別縁故者が財産分与の申立て審判で認容分与確定

- 課税関係(相続税)

  - 取得は「遺贈」扱い。被相続人の死亡時点の相続税法で計算。課税価格は「分与確定時点の時価」。

  - 基礎控除は3,000万円のみ(法定相続人加算なし)。2割加算の対象(配偶者・子以外)になり得る。生前贈与の加算(持戻し期間は3→7年へ拡大移行)。

  - 申告・納付期限:分与が認められたことを知った翌日から10カ月以内。

- 実務の留意

  - 手続は最短でも9カ月、長ければ数年〜10年近く要する。時価評価・申告準備を早期に。証拠・書類の整備が不可欠。

 

この動画から得られること(Learning Outcomes

- 仕組みの理解:特別縁故者の定義、手続(清算人・公告・弁済・分与申立・審判)

- 課税の要点:遺贈扱い、死亡時法×分与時価、基礎控除3,000万円、2割加算、生前贈与加算

- 期限管理:分与確定申告・納付10カ月、長期化を見込んだ逆算スケジュール

- 評価・書類:時価評価の準備(不動産・有価証券・現金)、分与審判書・財産目録・評価明細・申告書の整備

- リスク回避:情報欠落・時効・加算税の回避、自主修正の活用、専門家(弁護士・税理 士・不動産鑑定士)連携

 

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例え話

特別縁故者の分与は「長距離リレー」に似ています。
スタート(清算人選任)から中継(公告・弁済)を経て、
ようやくバトン(分与確定)が渡されます。
最後の直線(10カ月の申告)でスピードを落とさないために、
前半から配布物(書類)とペース(スケジュール)を整えておくことが大切です。

 

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専門家としての付加価値(実務の勘所)

- 手続の設計:複数財産の洗い出し評価難物(不動産・非上場株)は早期に鑑定・時価   算定を手配

- 税務の線引き:死亡時法×分与時価の併存を前提に、物件ごとに評価基準日を明確化

- 2割加算・基礎控除:法定相続人でない前提の税額試算を早期に実施(納税資金計画を同     時に策定)

- 贈与加算:被相続人から特別縁故者への過去贈与の有無を網羅的に確認(3→7年移行期の注意)

- 期限対応:長期化に備えた逆算Gantt(審判見込み評価申告)と、加算税回避の自主修正オプション

 

視聴後アクション

- まず流れを確認する 

  1) 清算人選任公告弁済分与申立審判確定の順番を紙に書き出しましょう。

- 必要書類を集める 

  2) 財産目録・通帳・不動産資料・有価証券明細・負債一覧を集め、評価が必要な資産をマークします。

- 税額の目安を掴む 

  3) 基礎控除3,000万円のみ・2割加算を前提に概算税額を計算。納税資金(預貯金・売却・借入)を検討します。

- 専門家に相談する 

  4) 弁護士(手続)・税理士(相続税)・鑑定士(評価)に早めに相談し、分与確定から10カ月の申告に間に合う計画を立てましょう。

 

「長期戦」を見据え、
今できる準備を着実に。
数字と書類で“もらった後”に慌てない体制を整えましょう。

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引用
税理士法人A to Y メルマガ 令和7年3月19日配信
-相続- 特別縁故者が財産分与を受けた場合の課税関係

税理士法人 A to Y
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