相続した不動産にローンが残っていたらどうなる?

家を建てる際、多くの場合は30年程度の住宅ローンを組みます。
30
代や40代で家を建てた場合、
完済前に親が亡くなり、
ローンが残った状態で相続が発生することは珍しくありません。

もし住宅ローンが残っている不動産を相続することになった場合、
その後の支払いや手続きはどうなるのでしょうか。
税理士の視点から詳しく解説します。

  1. 原則:ローン(負債)も相続対象になる

不動産を相続するということは、
プラスの財産だけでなく、
住宅ローンの残債という「負債(マイナスの財産)」もセットで引き継ぐことになります。
相続人が相続を承認した段階で、
ローンの返済義務も相続人に移ります。

もし相続人自身がすでに自分の住宅ローンを抱えている場合、
親のローンと合わせて「二重ローン」の状態になり、
非常に大きな負担となる可能性があります。

  1. 救世主となる「団体信用生命保険(団信)」

ただし、日本の住宅ローンの多くには「団体信用生命保険(通称:団信)」が付随しています。
統計的には約95%の人がこの保険に加入しています。

団信とは、
住宅ローンの債務者が死亡したり、
高度障害状態になったりした際、
生命保険金によってローンの残債が完済される仕組みです。

  • 保険金受取人: 銀行などの金融機関
  • 効果: 保険金が直接銀行に支払われ、ローンが全額相殺される

この場合、相続人はローンがゼロになった状態の不動産を相続できるため、
返済を引き継ぐ必要はありません。

  1. 注意が必要な「未加入」のケース

非常に稀ですが、
健康上の理由や年齢、
あるいは借入条件によって団信に加入していないケース(残り5%程度)があります。
その場合、保険による完済は行われないため、
相続人が現実に残債を引き継ぎ、
支払いを続けなければなりません。

万が一、返済が困難で「相続放棄」を選択する場合、
ローンだけでなく、
預貯金や他の不動産など「すべてのプラスの財産」も放棄することになるため、
慎重な判断が必要です。

  1. 事業性融資やアパートローンは対象外

注意すべきなのは、
いわゆる「アパートローン」や「事業性融資」です。
これらは一般的な住宅ローンとは異なり、
団信が組み込まれていないことが多くあります。

土地活用の一環で、
多額の借金をして賃貸物件を建てている場合、
相続発生時に保険でローンが消えないため、
相続人がその多額の債務を背負うことになります。
特に収益性の低い物件の場合、
家賃収入でローンを返済できず、
結果として負債だけが残るという「負の遺産」になりかねません。

  1. 相続対策としてのチェックポイント

親がローンを抱えている場合は、
以下の点を確認しておくことが大切です。

  • 団信に加入しているか:
     加入していれば安心ですが、
    未加入の場合は別途、
    死亡保険などでカバーする対策が必要です。
  • オーバーローンの確認:
     特に新築物件は、
    売却価格がローンの残債を下回る「オーバーローン」の状態になりがちです。
    不動産の時価と残債のバランスを把握しておきましょう。
  • 税金の優遇:
     住宅ローンは「債務控除」として、
    相続税の課税対象額から差し引くことができます。
    一方で、亡くなった親が受けていた「住宅ローン控除」を
    相続人が引き継ぐことはできません。

まとめ

相続が発生してから「こんなはずではなかった」と慌てないためには、
事前の現状把握が不可欠です。
親のローンに団信がついているか、
アパート経営などの事業性融資はないか、
まずは確認してみてください。

もし対策が思い浮かばない場合や、
複雑な状況にある場合は、
早めに税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。
ローンを組まない投資手法を検討するなど、
将来の相続を見据えた出口戦略を立てておくことが、
家族を守ることに繋がります。

要約

- 原則(負債も相続対象)
  -
不動産を相続すると、住宅ローン(負債)もセットで承継。
    相続を承認すれば返済義務が相続人へ移転。
    自分の住宅ローンと重なると二重ローン化のリスク。

- 団体信用生命保険(団信)の効力
  -
住宅ローンの約95%は団信加入。
    被相続人の死亡・高度障害で保険金が金融機関に支払われ、
    残債は完済=相続人はローンゼロの不動産を承継。

- 例外(未加入・特約外)
  -
健康・年齢・商品性で団信未加入(残り約5%)は完済されず、相続人が返済継続。
    相続放棄は負債だけでなくプラス財産も一括放棄となるため慎重判断が必要。

- 事業性融資・アパートローンの落とし穴
  -
賃貸経営のアパートローンや事業性融資は団信なしが多い。
    家賃収入<返済・維持費なら「負の遺産」化の危険。
   オーバーローンだと売却で精算不能に。

- 税務の要点
  -
住宅ローン残債は相続税の債務控除として課税ベースから控除可能。
    被相続人が受けていた住宅ローン控除(所得税)は相続人に引き継げない。

 

この動画から得られること

- ローンが相続対象となる仕組みと、団信で完済されるケース/されないケースの判別軸
-
アパートローン・事業性融資に潜む「負の遺産」化のリスクと見抜き方
-
相続放棄の影響(負債のみならずプラス財産も放棄)と判断の留意点
-
相続税の債務控除と、住宅ローン控除が引き継げない点の整理
-
事前にやるべき調査・確認のステップ(団信・時価・残債・保険・賃貸CF

 

例え話

住宅ローン付きの家は「自動運転の車」に似ています。
団信という安全装置が作動すれば
事故(相続)時に車は安全停止(完済)しますが、
装置が無ければ運転(返済)を引き継ぐ必要があります。
さらに事業用の大型車(アパートローン)は
安全装置が無いことが多く、
燃料(家賃CF)が不足すれば動かせません。
装置の有無と燃料残量を、
出発前(相続前)に必ず点検しましょう。

 

専門家としての付加価値

- 事前チェックリスト(5点)
  1)
団信の加入有無・補償範囲(死亡・高度障害・特約)と保険証券の確認 
  2)
物件の時価と残債(オーバーローン判定)/売却諸費用の概算 
  3)
事業性融資の有無(アパート・店舗・太陽光など)と団信/返済状況 
  4)
賃貸物件のCF(家賃−空室・運営費−修繕−返済)とDSCR(目安1.2以上) 
  5)
相続税の債務控除見込/納税資金手当(現金・保険・売却計画)

- いざ相続発生時の最短動線
  - ①
金融機関へ連絡(団信発動・残債確定)
    ②保険会社へ請求
    ③固定資産・借入一覧の確定
    ④時価査定・売却シミュレーション
    ⑤税理士と債務控除・納税資金の設計

- 判断分岐の基準
  -
団信完済=保有/売却の選択を時価・維持費・将来CFで判断 
  -
団信なし=持続可能なCFDSCR≥1.2)か、早期売却/相続放棄も含め総合判断

 

視聴後アクション

- 具体ステップ(5項目)
  1)
親御さんの借入一覧と団信の加入有無・補償範囲を確認(保険証券・約定明細) 
  2)
対象不動産の時価査定と残債を並べ、オーバーローンの有無を判定 
  3)
賃貸中なら直近12カ月の家賃・空室・運営費・修繕・返済でDSCRを計算 
  4)
相続税の債務控除・納税資金の初期試算を税理士に依頼 
  5)
団信なし・事業性融資ありなら、早期の売却/保有/放棄の選択肢を家族会議で合意

- 用語の簡潔説明
  -
団体信用生命保険(団信):ローン債務者が死亡・高度障害時に保険金で残債を完済する保険。
                                                受取人は金融機関。 
  -
債務控除:相続税計算で被相続人の債務(未払金・借入金)を遺産総額から差し引ける制度。
                      証憑が必要。

 

補助資料

- チェックリスト(抜粋)
  -
団信加入の有無・補償範囲・特約 
  -
不動産の時価・ローン残債・売却諸費用 
  -
賃貸CF明細とDSCR(営業CF/元利) 
  -
事業性融資の返済条件(金利・期間・保証) 
  -
相続税の債務控除資料(契約書・返済明細・残高証明)

- テンプレ(要点)
  - DSCR
簡易計算シート(家賃・運営費・修繕・返済入力) 
  -
相続直後の連絡・手続フロー(金融機関・保険会社・税理士) 
  -
家族会議アジェンダ(資産負債の棚卸・団信有無・選択肢比較)

 

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