相続放棄が相続税に与える影響と注意点

  1. 相続放棄とは

民法上、相続放棄をすると「最初から相続人ではなかった」とみなされます。
そのため、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、
借金などのマイナスの財産(債務)も一切相続しないことになります。

  1. 相続税法における扱い

相続放棄をして相続人でなくなったとしても、
遺言書などによって財産を受け取る「遺贈(いぞう)」を受けた場合は、
相続税の納税義務が発生することがあります。
例えば、生命保険金や退職手当金を遺贈扱いで受け取った場合や、
本来放棄したはずの被相続人の債務を一部負担した場合などは、
税金の計算に影響を与えるため注意が必要です。

  1. 基礎控除額の計算

相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という計算式で算出されます。
この「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含まれます。
つまり、放棄によって基礎控除額が減ることはありません。

  1. なぜ税額が高くなる可能性があるのか

相続放棄をしたことで、
最終的な相続税額が高くなってしまうケースがあります。
主な理由は以下の通りです。

  • 非課税枠の適用外: 相続人であれば利用できる生命保険金や退職手当金の「非課税枠」が、放棄をした人には適用されません。
  • 債務控除の制限: 相続人であれば負債を資産から差し引ける「債務控除」が受けられますが、放棄をした場合には適用されないケースがあります。
    これらの要因により、課税対象となる価格が増え、結果として税額が高くなる可能性があるのです。
  1. 実務におけるアドバイス

借金などの負債が資産を大きく上回っている場合は、
速やかに相続放棄を検討することをお勧めします。
相続放棄の手続きは、
原則として「相続の開始を知った時から3か月以内」に
家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
まずは専門家に相談して正確な税額をシミュレーションし、
その結果を踏まえて冷静に判断することが非常に重要です。

https://youtu.be/UycwWgJ-vYo

管理しきれない土地があって、
その土地を相続したくないと安易に、
相続人でなくなる相続放棄を選択すると、
その後遺贈によって財産を受け取ると相続税額が高くなる!?
というテーマで、
相続放棄をする際の注意点を解説します!

相続放棄をするとき、知っておきたいこと

1.相続放棄したら「相続人」ではなくなる!

民法上、
相続放棄をすれば最初から相続人ではなかったとみなされます。
つまり「相続人」の立場で受け取るはずのプラスの財産・マイナスの債務も
一切相続しない状態
になるわけです。

2.でも、相続税はどうなるの?

相続税法の視点では、
相続放棄して「相続人」でなくなっても、
遺贈(遺言書などで直接財産をもらうこと)によって、
財産を受け取った場合は、
相続税の納税義務が発生することがあります。

・生命保険金等や退職手当金等を「遺贈扱い」で受け取った人
・被相続人の債務を放棄したはずなのに一部負担した人

こういった場合は、
放棄していても税金計算に影響がありますので注意しましょう。


相続放棄しても「相続税の総額」は同じ?増える?

1.相続税の総額の考え方

相続税は、
「放棄がなかったもの」と仮定した人数で基礎控除額を決め、
さらに「誰がいくら財産を取得したか」で最終的に税額が決まります。

・基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
・法定相続人の数:相続放棄があっても「放棄していないもの」として計算

つまり、
放棄した人の存在は「人数」においてはカウントされるので、
基礎控除の額は変わりません。

2.じゃあ、どうして増えることがあるの?

・生命保険金や退職手当金が全額課税対象

相続人として受け取る場合は非課税枠があるのですが、
相続放棄した人が受け取る場合は、
その非課税枠が使えません

結果的に課税価格が増えてしまいます。

・被相続人の債務を負担しても控除できない

相続人なら「債務控除」で相続税の課税価格を減らせますが、
相続放棄してしまうと「相続や遺贈で取得した人」には当てはまらない場合があり、
控除を受けられません。

このようなケースでは、
課税価格が増えるため最終的な相続税額が高くなる可能性があります。

具体的なイメージ:保険金受取と債務がある場合

たとえば、
甲さんが亡くなって、
保険金1,000万円を甲さんの妻乙さんが受け取りました。

1.ケースA:相続放棄しない

・保険金は非課税枠(一定額まで)があり、課税額が圧縮できる。
・債務があればその分控除できる。

2.ケースB:相続放棄した

・保険金が「遺贈扱い」となるので、非課税枠が使えない。
・(仮に放棄したのに)一部債務を引き受けるようなケースだと、債務控除は受けられない。

結果として、
ケースBの方が課税対象が大きくなり、
相続税が増える…ということが起こり得ます。

相続放棄は慎重に選ぼう

相続放棄は「借金を背負いたくない」などの理由で、
魅力的な選択肢に思えるかもしれません。
しかし、
生命保険金や退職金を受け取っていたり、
何らかの債務との関わりがあると、
相続税の負担がかえって増えることがあります。

一方で、
相続放棄しても相続税上の基礎控除の人数にはカウントされるため、
ほかの相続人の税額が下がるわけではありません。
要するに、
「相続放棄=一律に税金が減る」とは限らない、
ということです。

だからこそ、
専門家にしっかり相談しながら、
メリット・デメリットを天秤にかけて決めることが大切です。

要約(MECE

- 定義と効果(民法)

  - 相続放棄=最初から相続人でなかったものとみなす。
プラス資産もマイナス資産(債務)も一切承継しない。

- 税法上の扱い(相続税法)

  - 放棄しても「遺贈」で財産を受け取れば相続税の課税対象(生命保険金・退職手当金の遺贈扱い、放棄後に債務の一部負担など)。

- 基礎控除の人数カウント

  - 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。
放棄者も「数」に含む(控除が減らない)。

- それでも税額が増える理由

  - 非課税枠の適用外:放棄者は生命保険金・退職手当金の非課税枠が使えない。

  - 債務控除の制限:放棄者は負債の控除が使えない場合がある課税価格が増えやすい。

- 実務上の注意

  - 相続放棄は原則3カ月以内に家庭裁判所へ申述。
まず資産・負債・税額の試算を行い、
限定承認・国庫帰属等の選択肢も比較検討。

この動画から得られること(Learning Outcomes

- 民法と相続税法の違いを1枚で理解(放棄の効果/課税の発生) 

- 基礎控除の正しい人数計上(放棄者もカウント) 

- 税額が増える典型原因(非課税枠の不適用/債務控除の制限) 

- 期限3カ月の進め方(資産・負債・税額試算放棄/限定承認の選択) 

- 代替案の比較軸(限定承認/相続土地国庫帰属など)と判断のフローチャート

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例え話

相続放棄は「試合に出ない」選択に似ています。
出場(相続)しなければ点は入らず失点(債務)もありません。
ただし観客席(税法)では、
招待席(遺贈)に座ればチケット代(相続税)がかかることもある
——ルールの違いを理解して席を選ぶことが大切です。

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専門家としての付加価値(実務の勘所)

- 事前試算の型:相続財産目録(資産・負債・みなし相続財産)/基礎控除/非課税枠/債務控除の可否をチェックリスト化 

- 放棄の期限管理:起算日(死亡の事実を知った日)記録→3カ月以内に家庭裁判所へ申述利害関係人・検討延長の可否 

- 限定承認の使いどころ:プラスの範囲内で債務を承継。共同相続人全員で申述が原則 

- 保険・退職金の扱い:相続人受取と遺贈扱いで非課税枠の可否が変わる受取人指定の見直し 

- 実務上の落とし穴:放棄後の債務支払い(弁済)の意図せぬ承認/遺贈による課税の見落とし

視聴後アクション

1) いまの数字を出す:資産・負債・保険・退職金を一覧化し、基礎控除と非課税枠・債務控除の可否をチェック。 

2) 期限を確認:死亡の事実を知った日から3カ月の最終日をカレンダーに記入。延長の可否も専門家に相談。 

3) 選択肢を比べる:相続放棄・限定承認・通常相続の税額と家計影響を比較表で可視化。 

4) 専門家に相談:家庭裁判所の申述、税額試算、保険受取の設計などは税理士・弁護士へ早めに相談。

正しい順序と数字で、
後悔のない相続放棄を選びましょう。

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引用
税理士法人A to Y メルマガ 令和7年2月22日配信
【相続】相続放棄が相続税に与える影響

税理士法人 A to Y
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