【あいも変わらず掛け声のみ】令和6年度税制改正が目指す先にあるものは繁栄か滅亡か

令和6年度の税制改正大綱が発表されました。
例年通り、
自由民主党・公明党の与党案がそのまま政府案として採用されています。
今回は、
不動産投資家や中小企業経営者に関わりの深い項目を中心に、
その実態と課題を解説します。

  1. 政治資金問題による「先送り」の目立つ改正

昨年末の政治資金パーティーを巡る混乱の影響もあり、
防衛増税の開始時期など、
多くの重要な議論が先送りされました。
全体として、
目先の調整に終始した印象が拭えません。

  1. 「定額減税」の非効率性と矛盾

今回の目玉とされるのが、
所得税・住民税合わせて14万円の「定額減税」です。

  • 内容:
     所得税3万円、住民税1万円の減税。
  • 課題:
     減税事務を企業(給与支払者)に強いる仕組みは極めて煩雑です。
    また、住民税分を一度国が地方へ交付税として配分し、
    そこから還付させるという二度手間が発生しています。
    最初から国が一括して給付・減税すれば済む話であり、
    行政コストの無駄遣いと言わざるを得ません。

さらに、
この減税の裏で
「高校生(16歳〜18歳)の扶養控除」
の縮小が検討されています。
児童手当の拡充を理由に控除額を減らすというもので、
実質的には増税となる世帯も多く、
所得再配分という掛け声とは逆行する動きです。

  1. 不動産・住宅関連:現状維持とハードルの引き上げ

不動産・住宅関連の税制については、
多くが現行制度の「期間延長」に留まりました。

  • 住宅ローン控除:
     省エネ性能の低い一般住宅に対する控除が原則ゼロ(令和6年以降)となり、
    認定住宅やZEH水準など、
    高度な省エネ住宅でなければ十分な控除が受けられなくなります。
  • 優遇措置の延長:
     登録免許税や不動産取得税の軽減措置、
    住宅取得資金の贈与非課税制度などは期間が延長されました。
    しかし、
    これらは数十年前から延長を繰り返しているものであり、
    実質的な景気刺激策としての効果は限定的です。
  1. 中小企業関連:一部の朗報と「経営セーフティ共済」の改悪

中小企業経営者にとって注目すべき点は以下の通りです。

  • 交際費の基準緩和:
     損金算入できる「飲食代」の基準が
    1
    5,000円から10,000円に引き上げられました。
    これは数少ないポジティブな変更です。
  • 少額減価償却資産:
     30万円未満の資産を一括償却できる特例も延長されました。
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)の制限:
     これまで利益調整に活用されてきた同共済ですが、
    解約後2年間は再加入しても掛金を損金算入できなくなります。
    節税封じの一環ですが、
    資金繰りに苦しむ企業をさらに追い詰めることになりかねません。
  1. 根本的な議論の欠如:デフレ脱却と消費税

政府の基本方針には
「四半世紀続いたデフレからの脱却」や
「可処分所得の拡大」
が謳われています。
しかし、
その一方で
「消費税の減税や廃止」
の議論は一切行われていません。

バブル崩壊後の強引な経済失速策、
その後の構造改革、
そして「安い日本」を招いたアベノミクス。
これら過去の政策に対する真摯な検証がないまま、
小手先の減税をアピールする姿勢は、
国民を欺く「手品のトリック」のようなものです。

本来、
税制とは国の繁栄か滅亡かを左右する重要な選択であるはずです。
官僚が作成した資料をなぞるだけの議論ではなく、
将来の日本を見据えた、
真にダイナミックな税制改革が求められています。

本日のポイント:

  • 定額減税は事務負担が大きく、非効率。
  • 高校生扶養控除の縮小など、隠れた増税に注意。
  • 不動産関連は「省エネ性能」が控除の鍵に。
  • 経営セーフティ共済の再加入制限など、中小企業への締め付けが強化。
  • 消費税議論を避けたままの「可処分所得拡大」は、言葉だけの掛け声に過ぎない。

要約

- 総論(今年の特徴)
  - 政治資金問題の影響で「先送り」が目立ち、実質は現状維持が中心。
    掛け声と整合しない施策が混在。

- 個人税(家計)への影響
  - 定額減税(所得税3万円+住民税1万円)は事務負担が大きく非効率。
    住民税を経由させる設計も二度手間。
  - 高校生(1618歳)の扶養控除縮小が検討され、世帯によっては実質増税に。

- 不動産・住宅税制
  - 多くは期限延長の継続。
    住宅ローン控除は省エネ性能が鍵となり、一般住宅は控除縮小・ゼロが原則化。
  - 軽減(登録免許税・不動産取得税・贈与非課税)は延長するも、景気押し上げ効果は限定的。

- 企業税制(中小企業)
  - 交際費の損金算入基準を「15,000→1万円」に引上げ(朗報)。
  - 少額減価償却資産(30万円未満即時償却)は延長。
  - 経営セーフティ共済は解約後2年間の再加入・損金算入制限(利益調整封じで運用の自由度低下)。

- 構造論(抜本議論の欠如)
  - 「可処分所得の拡大」「デフレ脱却」を掲げつつ、消費税減税の議論はゼロ。
    過去政策の検証不足と小手先の減税が並立。

 

例え話

 客席に向けて「演目は刷新します」と言いながら、
舞台裏では大道具の配置を少し入れ替えただけの状況に近い。
演者(家計・企業)が体感できる演目の根本改訂(税の全体設計)こそ必要です。

 

この動画から得られること

- 定額減税の仕組みと家計・実務負担(住民税処理の二度手間)の理解
- 高校生扶養控除縮小の影響試算と家計調整の考え方
- 住宅ローン控除の新基準(省エネ要件)と控除可否の判定軸
- 中小企業向け朗報(交際費1万円・少額償却延長)と留意点
- 経営セーフティ共済(倒産防止共済)の再加入制限の実務対応
- 今年度の資金計画・投資計画・節税計画の更新手順

 

専門家としての付加価値

- 家計
  - 定額減税の家計反映:源泉控除月の平準化、住民税通知時の差異確認。
    高校生扶養控除縮小シナリオを入れた年間可処分所得の再試算。

- 住宅・不動産
  - 住宅ローン控除は性能証明(認定長期優良・ZEH水準等)の取得時期と書類不備がボトルネック。
    着工前に証明取得計画を確定。控除不可の場合の代替(贈与非課税の枠活用・登録免許税軽減の適用確認)。

- 企業
  - 交際費1万円の運用ルール(人数・領収書記載・社内規程改定)を明文化。
    少額償却は年度末の前倒し投資判定とTCO管理。
  - セーフティ共済は「再加入制限2年」を踏まえ、
    解約のタイミング・資金繰り表の平準化・他制度(中小企業倒産防止共済以外の共済・保険の活用)を比較。

- ガバナンス
  - 会社側の定額減税事務は給与計算システムの更新・従業員レターで周知・問い合わせFAQ整備が必須。
    住民税の控除調整は自治体差を想定。

 

視聴後アクション

- 家計の再計算をする
  - 定額減税と高校生扶養控除の変更を入れて、今年の手取り額を月別に試算する。

- 住宅計画を点検する
  - 住宅ローン控除の対象か性能要件を確認。
    証明書の取得スケジュールと代替策を決める。

- 交際費ルールを更新する(会社)
  - 1人1万円の社内規程・精算書様式・領収書の記載要件を今月中に改定する。

- 設備投資の優先順位をつける
  - 30万円未満の即時償却枠を踏まえ、年度内に前倒しすべき小口投資をリスト化する。

- 共済の扱いを再設計する
  - セーフティ共済は解約→再加入の2年制限を前提に、
    解約時期と代替資金クッションを資金繰り表に反映する。

- 税理士に相談予約を入れる
  - 会社と個人の両面で、今年の改正点の適用可否と必要書類を確認する。

 

 まず「数字を見える化」しましょう。
今日、家計の手取り再試算、住宅控除の要件確認、
会社の交際費規程改定と共済運用方針の見直しを同時に進めてください。
小手先の改正でも、
先に手を打てば確実に効きます。
制度に振り回されず、
制度を使いこなす側に回りましょう。

 

 

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