経営者であれば必ず知っておきたい、
会社法で定められた「利益相反取引(りえきそうはんとりひき)」について解説します。
特に中小企業や同族経営では、
知らず知らずのうちに対象となっているケースが多く、
後々のトラブルや税務上のリスクを招く可能性があります。
- 利益相反取引とは
利益相反取引とは、
会社と取締役の利益が衝突する取引のことです。
簡単に言えば、
「取締役が自分の利益のために、会社に不利益を及ぼすような取引を行うこと」を指します。
会社法では、
こうした取引を行う場合、
重要な事実を開示した上で、
取締役会(または株主総会)の承認を得ることが義務付けられています。
- 取引の2つの形態:直接取引と間接取引
利益相反取引には、
大きく分けて「直接取引」と「間接取引」の2種類があります。
- 直接取引(取締役が当事者となるケース)
取締役個人が会社と直接売買などを行うことです。- 例:取締役が所有する土地を、
相場より高い価格で会社に売り付ける。 - この場合、取締役個人は得をしますが、
会社は損をするため、
利益が相反します。
- 例:取締役が所有する土地を、
- 間接取引(第三者との取引に会社が関わるケース)
取締役と第三者の間の取引において、
会社が保証人になるなどの行為です。- 例:取締役個人の借金に対して、
会社が連帯保証をする、
あるいは債務を引き受ける。 - 会社にとってはリスクを負うだけの行為であり、
取締役個人の利益を優先しているとみなされます。
- 例:取締役個人の借金に対して、
- 利益相反にあたらないケース
すべての取引が制限されるわけではありません。
「会社側にのみメリットがある、あるいは不利益がない取引」は、
利益相反には該当しません。
- 取締役から会社への無利息での貸し付け。
- 取締役から会社への資産の無償譲渡(プレゼント)。
※これらは会社が一方的に得をするため、
法的な承認手続きは不要です。
- 中小企業や同族経営に潜むリスク
中小企業、特に「一人株主・一人取締役」の会社では、
自分自身で承認することになるため、
手続きが形骸化しがちです。
しかし、以下のリスクには十分注意が必要です。
- 親族間・相続時のトラブル
兄弟や親族で経営している場合、
仲が悪くなった際に
「あの時の取引は利益相反であり、会社に損害を与えた」
として損害賠償請求の対象にされることがあります。
過去の不明瞭な取引が、
後から火種になるケースは少なくありません。 - 名義株の放置
創業時の経緯で、
親戚などに名前だけを借りた「名義株」が存在する場合、
相続のタイミングでその権利を主張され、
過去の取引の妥当性を厳しく追及されるリスクがあります。 - 税務署による「脱法行為」の疑い
税務調査において、
適切な承認手続き(議事録の作成など)がない利益相反取引は、
所得隠しや役員賞与(寄附金)とみなされ、
課税対象となる可能性があります。
税務署は「恣意的な操作による脱税行為」がないかを厳しくチェックします。
- まとめ:事前の対策と記録の重要性
利益相反取引そのものが禁止されているわけではありませんが、
「事前に承認を得て、そのプロセスを記録に残すこと」が極めて重要です。
- 株主総会や取締役会の承認を得る:
たとえ一人会社であっても、
形式を整える必要があります。 - 議事録を必ず作成する:
承認があった証拠を公的に残しておくことが、
将来の自分や会社を守ることにつながります。 - 事前に専門家へ相談する:
取引が利益相反に該当するか、
価格が妥当か判断に迷う場合は、
事前に税理士や弁護士などの専門家に確認しましょう。
「知らなかった」では済まされないのが法律です。
リスクを最小限に抑えるためにも、
透明性の高い経営を心がけましょう。
要約
- 定義
- 利益相反取引=会社と取締役の利益が衝突する取引。
会社法は「重要事実の開示+事前承認」を義務付け。
- 2類型
- 直接取引:取締役個人が会社と売買等(例:自宅土地を会社に相場超で売却)。
- 間接取引:第三者取引に会社が関与(例:取締役個人の借入に会社が連帯保証・債務引受)。
- 該当しない典型
- 会社のみが得し不利益なし(無償譲渡・無利息貸付等)=利益相反に該当せず。
ただし税務や社内規程の確認は要。
- 中小・同族でのリスク
- 手続形骸化→親族・相続時の紛争火種。
名義株の顕在化。
税務は「役員賞与・寄附金」認定や否認リスク。
- 実務の要点
- 取締役会設置会社=取締役会承認/非設置会社=株主総会承認。
重要事実の開示、利害関係役員の議決除斥、事後報告、価格妥当性の外部証拠化が肝。
この動画から得られること
- 制度理解
- 利益相反の定義、直接/間接の区分、承認要否の基準、事後報告の位置づけ
- 手続の実務
- 取締役会設置会社/非設置会社の承認フロー、利害関係者の議決除斥、重要事実の開示項目
- 証拠化と価格妥当性
- 第三者評価書・相場資料・見積比較・算定根拠の整備方法
- リスク管理
- 紛争・株主代表訴訟・役員責任、名義株、税務否認(役員賞与・寄附金)への備え
- テンプレ活用
- 承認議案・議事録、関連当事者取引(RPT)ポリシー、利益相反レジスターの運用
専門家の付加価値(実務テンプレート)
- 承認議案の骨子
- 取引当事者・内容・目的・条件(価格・金利・担保)
会社の不利益の有無
利害関係役員の氏名と関与
第三者算定の有無
代替案の検討結果
- 議事録(要旨)
- 重要事実の開示、利害役員の退席・除斥、承認決議、反対・保留意見の記載、事後報告の方法
- 価格妥当性の証憑
- 外部評価書(不動産・株式)、国税路線価・公募相場・同型案件比較、見積3点比較、DCF等の算定根拠
- RPTポリシー(関連当事者取引方針)
- 定義・適用範囲・承認基準・モニタリング・年次開示・違反時対応
- 利益相反レジスター
- 取引一覧、承認日、利害役員、証憑リンク、事後報告日、モニタ結果
- 税務チェック
- 寄附金・役員賞与認定の赤旗(相場乖離、無償・著しく低廉/高額、手続欠落)、
印紙・登録免許税、
消費税の取扱
視聴後アクション
- 取引を仕分けする
- 直近1年の役員関連取引を「直接/間接/承認不要」に分類します。
- 1件、承認を取る
- 影響の大きい1取引を選び、承認議案と議事録を作成し、承認手続を完了します。
- 価格根拠を揃える
- 相場資料・評価書・見積比較を1ファイルに集約し、算定根拠メモを作ります。
- 議決除斥を徹底
- 利害関係のある役員は審議・採決から退席する運用を文書化します。
- RPTポリシーを策定
- 2ページでよいので関連当事者取引方針を作り、社内に周知します。
- 専門家に事前相談
- グレーな取引は弁護士・税理士に価格と手続の妥当性を照会し、書面意見を保存します。
例え話
交差点でウインカーを出さずに曲がるのは自分も他人も危険です。
利益相反取引も同じで、進路(目的・条件)を示し、
合図(承認)とドライブレコーダー(議事録)を残して初めて安全に曲がれます。
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