なぜ相続税の基礎控除額は引き下げられたのか?
基礎控除額が引き下げられた理由を一言で言えば、
国が「もっと税金を徴収したいから」です。
一般の私たちの感覚と、政府の考え方は大きく異なります。
政府の基本的なスタンスは、
「お金や財産を持っているのだから、もっと税金を払うべきだ」というものです。
先祖代々受け継いできた財産であっても、
自力で築いた財産であっても、
そこは考慮されません。
「財産を持っているのだから、そこから税金を頂く」という一律の概念に基づいています。
過去と現在の基礎控除額の比較
- 過去: 5,000万円 +(法定相続人の数 × 1,000万円)
- 現在: 3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
かつての制度では「恩恵を与えすぎている」と判断され、
現在の基礎控除額は従来の「6掛け(60%)」にまで引き下げられました。
この大幅な基礎控除額の引き下げにより、
相続税の申告が必要な人は確実に増えています。
以前は、亡くなった方のうち相続税がかかる人の割合は全体の一部でしたが、
改正後は確実に数パーセント上昇しています。
基礎控除引き下げによる影響:金融機関の動きと納税額の減少
この法改正を機に、
銀行や証券会社などは「相続対策・遺言」をビジネスのチャンスと捉え、
盛んにプロモーションを行うようになりました。
その結果、
本来であれば相続税の心配をする必要がない、
一般的なご家庭の方までもが
「うちも相続税がかかるのでは?」と不安を抱くような状況が生まれました。
国としては、
税収を増やすという意味でこの改正は成功だったのかもしれませんし、
金融機関も関連ビジネスで利益を上げているのでしょう。
しかし、
ここで一つ興味深いデータがあります。
相続税を納税する「人数」は圧倒的に増えたのですが、
実は相続税の「納税総額」は減っているのです。
その要因の一つは、
土地の評価額の変動です。
近年、一部の地価は上昇していますが、
全体的に見れば地価が下がっていたり、
安定していたりする時期が長かったことが影響しています。
もう一つの要因は、
多くの方が「生前贈与」などを活用し、
意図的に財産を減らす対策を行ったことです。
アベノミクスで景気が良いと言われていた時期であっても、
相対的に見れば、
将来の相続税負担を避けるために財産を減らした人が多かったのです。
日本の相続税は世界一厳しい? 海外との違い
日本の相続税は世界的に見ても非常に厳しいと聞いたことがあります。
そのあたりはどうなのでしょうか?
財産を受け取った側(相続人)が、
これほど高額な税金を払わなければならない仕組みは、
世界的に見ても珍しいです。
私が知る限り、
日本は最も厳しい部類に入ると思います。
諸外国では、
相続税が全くない国もありますし、
税金がかかるとしても、
財産を「渡す側(被相続人)」が払う仕組み(遺産税方式)の国が多いです。
基本的には贈与税と同じで、
渡す側が負担し、
受け取る側は税金がかからないか、
かかってもごく少額というケースが一般的です。
過去の事例:武富士の相続税訴訟と法改正
かなり昔の話になりますが、
消費者金融大手の「武富士」の相続をめぐる事件はご存知でしょうか?
相続総額が120億円〜130億円とも言われた大規模な案件でした。
当時、亡くなられた創業者のご子息お二人は海外に居住しており、
海外にある財産をそのまま相続しました。
当時の日本の法律では、
海外居住者が海外財産を相続した場合、
日本の相続税はかかりませんでした。
しかし、課税当局(国税庁)はこれに課税処分を行い、
裁判に発展しました。
結果として最高裁まで争われ、
国側が敗訴しました。
国は徴収した約30数億円の還付金を利息付きで返還することになりました。
この敗訴を受けて、国は法律を大きく改正しました。
現在では、
被相続人(亡くなった方)が日本に住んでいる限り、
日本の法律が適用され、
財産が世界中のどこにあろうとも、
そして財産を受け取る相続人が世界のどこに住んでいようとも、
日本の相続税が課税されます。
日本の課税から逃れられるのは、
「財産も、渡す人も、受け取る人も、全員が海外にいる場合」のみ、
という非常に厳しい全世界課税のルールになっています。
『ハリー・ポッター』の翻訳者の方のケースも、
似たような話でしたよね?
日本に住んでいなかったのに、
印税に対して日本から多額の課税を受けたという。
それも日本が課税権を主張して訴訟になりました。
現在の日本の課税当局は、
「日本に関わりがある財産や人であれば、世界中どこまでも追いかけて課税する」
というスタンスです。
養子縁組で相続税の基礎控除額を増やすメリット
基礎控除額が「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」に下がった現状で、
法定相続人の数を増やせば基礎控除額も増えますよね。
例えば、奥様と息子さん2人の計3人が相続人の場合、
息子さんの配偶者(お嫁さん)を養子縁組して、
法定相続人を増やすことは可能です。
この「養子縁組」を活用した場合のメリットとデメリットを教えてください。
まずメリットからお話しします。
- 基礎控除額の増加
最大のメリットは、
法定相続人が増えることで基礎控除額が増えることです。
養子1人につき、
基礎控除額が600万円プラスされます。 - 生命保険の非課税枠の拡大
生命保険の死亡保険金には
「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
養子縁組によって法定相続人が増えれば、
この非課税枠も1人につき500万円増えます。 - 相続の権利が2箇所で発生する(二重相続)
例えば、息子の配偶者(お嫁さん)を養子にした場合、
お嫁さんは「養親(夫の親)」の法定相続人になると同時に、
「実の親」の法定相続人としての権利も失いません。
つまり、実家と婚家の両方から相続を受けられるメリットがあります。
養子縁組のデメリットと注意点
次に、デメリットや注意点についてです。
- 税法上の人数の制限
民法上は、何人でも養子にすることができます。
しかし相続税法上、基礎控除の計算に含めることができる養子の数には制限があります。- 実子がいる場合:
養子は1人までしか法定相続人の数に含められません。 - 実子がいない場合:
養子は2人まで含められます。
何十人を養子にしても、
実子がいれば税法上の特権を得られるのは1人だけです。
- 実子がいる場合:
- 離縁(養子縁組の解消)が難しい
一度養子縁組をすると、
それを解消する「離縁」は簡単ではありません。
行政に離縁届を提出する必要がありますが、
当事者間の話し合いで解決しない場合、
調停や裁判に発展するケースも少なくありません。
例えば、
「妻側の親族を養子にしたが、妻が先に亡くなってしまった」ような場合、
残された夫側の親族と養子との関係がこじれることがあります。 - 親族間のトラブルの火種になる
税金対策のためだけに、
他の親族(実子など)に内緒で養子縁組をしてしまうと、
後々大きなトラブルになります。
実子からすれば、
突然「この人も相続人です」と言われて、
自分の取り分が減ることになるわけですから、
争いの原因になりやすいです。
まとめ:養子縁組は慎重に判断すべき
相続税を減らしたいという目的だけで、
安易に養子縁組をするのはおすすめしません。
まずは現状の財産を正確に把握し、
遺言書の作成、生前贈与、特別寄与料の活用など、
他の選択肢も含めて総合的にプランニングを行うことが重要です。
その上で、「一つの選択肢として養子縁組も検討する」というスタンスが良いでしょう。
まずは全体像を把握した上で、
どの手法がベストかを専門家と一緒に考える必要があるのですね。
日本の相続税は厳しいですが、
「税金を払うほどの資産を残せた」と前向きに捉えることも大切かもしれませんね。
不動産などの資産は、
現金と違ってすぐに売却して納税資金に充てることが難しい場合があります。
バブル期には、
地価高騰により莫大な相続税が課せられ、
支払いに窮した結果、
悲劇的な結末を迎えたケースもありました。
「資産を持っているのだから払えるはずだ」と一律に考える国の制度には、
まだまだ見直すべき点があると感じます。
特に、現金ではなく不動産などの非流動資産を多く持つ方への配慮は、
今後議論されるべき課題ですね。
要約
- 基礎控除の引下げと背景
- 旧:5,000万円+1,000万円×法定相続人
→ 現在:3,000万円+600万円×法定相続人。
課税ベース拡大(納税者数増)が主眼。
- 金融機関の相続営業活発化で「不要な不安」も増加。
一方で納税総額は地価推移や生前贈与の浸透で伸び悩み。
- 日本の課税スタンス(国際比較)
- 日本は受け取る側課税の厳格運用。
武富士事件後、全世界課税の適用が強化(渡す人・財産・受け取る人の全員が非居住でない限り国内課税)。
- 養子縁組で増える非課税枠(メリット)
- 基礎控除が法定相続人1人増で+600万円。
死亡保険の非課税枠も+500万円/人。
- 養子は「実親」「養親」双方の相続権を持つ(二重相続の可能性)。
- デメリット・制約(税法・実務)
- 税法上の人数制限:実子あり→養子1人まで(控除計算に算入)。
実子なし→養子2人まで。
- 離縁は困難。
親族間の不信・争いの火種に。
小規模宅地等の適用設計や将来の資産偏在に注意。
- 結論(方針)
- 養子縁組は「最後に検討する選択肢」。
まずは財産把握→遺言→贈与(暦年/精算)→特別寄与料等を含む全体最適で設計。
流動性(納税資金)確保は必須。
この動画から得られること
- 基礎控除引下げの経緯と、日本の相続課税(全世界課税)の正しい理解
- 養子縁組のメリット(基礎控除・保険非課税・二重相続)と税法上の人数制限
- 小規模宅地等・遺留分・家族合意の論点を踏まえた適用是非の判断軸
- シミュレーション手順(控除増・税額差・納税資金)と計算例
- 争族を避ける合意形成・遺言・家族会議の実務チェックリスト
例え話
養子縁組は「高速道路の追い越し車線」を増やすようなものです。
通行(控除枠)は広がりますが、
料金所(税法の人数制限)や合流地点(親族調整)を誤ると
渋滞や接触(争族)を招きます。
地図(全体設計)を用意してから増線しましょう。
専門家としての付加価値
- 即使える計算例(概算)
- 例)遺産1億2,000万円・相続人3人→基礎控除=3,000+600×3=4,800万円
- 養子1人追加(実子ありの上限1人)→基礎控除=3,000+600×4=5,400万円(差+600万円)
- 生命保険非課税:500万円×3→1,500万円 → 養子追加で2,000万円(差+500万円)
- 合計非課税枠の増加目安:+1,100万円(税率帯に応じて税額差を試算)
- 意思決定ツリー
1) 目的は控除拡大か、争族予防か、事業承継か(最優先の1つを明確化)
2) 実子の有無→税法上算入できる養子数(実子あり:1人/なし:2人)
3) 小規模宅地等の適用見込み(自宅・事業・貸付の別)と資産配分への影響
4) 遺留分・家族合意の見通し→家族会議・公正証書遺言の併用可否
5) 納税資金(保険・売却・融資)の用意
- 争いを防ぐ運用
- 家族会議の議事録化、付言を盛り込んだ公正証書遺言、養子縁組は戸籍届出前に「同意書」を回収
- 二次相続(配偶者死亡時)の税負担・資産偏在の試算(一次で軽くし過ぎない)
- よくある落とし穴
- 養子縁組のみ先行→遺言なし・説明なしで反発
- 小規模宅地等を失う設計(承継者・居住要件を欠く)
- 納税資金不足(非流動資産偏重)→保険・売却計画の未整備
視聴後アクション
- 具体ステップ(5項目)
1) 財産目録(不動産・預金・保険・負債)と推定相続人一覧を作成
2) 基礎控除・保険非課税の現状と、養子1人追加時の差額を試算
3) 小規模宅地等・遺留分・二次相続の影響を確認(簡易シミュレーション)
4) 家族会議を開催し、目的・背景・代替案(贈与・遺言)を共有
5) 専門家(税理士・司法書士)に事前相談し、遺言(公正証書)・戸籍届出・保険設計を一体で進行
- 用語の簡潔説明
- 基礎控除:課税遺産額の算定で差し引ける非課税枠(3,000万円+600万円×法定相続人)。
- 小規模宅地等の特例:居住・事業用宅地の相続税評価額を最大80%減額できる制度(要件あり)。
補助資料
- チェックリスト(抜粋)
- 推定相続人・養子の税法上算入数(実子の有無)を確認
- 基礎控除・保険非課税の増分計算表
- 小規模宅地等の適用可否(居住・事業・貸付の要件)
- 二次相続の税負担・資産配分の見取り図
- 家族会議議事録・遺言(付言事項含む)・養子同意書の整備
- 相談テンプレ(要点)
- 件名:養子縁組を含む相続設計のご相談
- 本文:家族構成/資産概要/養子検討の目的/控除・特例の試算/懸念点(争族・二次相続・納税資金)
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