厚生労働省の「令和元年人口動態統計」によると、
年間の離婚件数は約21万組に上ります。
これほど離婚が一般的になった現代日本において、
再婚後に直面する大きな問題の一つが「相続」です。
特に「先妻との間に子供がいる」場合、
どのように対策を立てれば自分の望む家族に財産を残せるのか、
税法と民法の観点から解説します。

  1. 相続権の整理:前妻と子供の立ち位置

まず大前提として、
相続権の有無を確認しましょう。

  • 前妻(先妻):
     離婚した時点で配偶者ではなくなるため、
    再婚の有無にかかわらず、
    前妻に相続権はありません。
  • 子供:
     親が離婚しても親子関係は消滅しません。
    先妻との間の子供と、
    現在の妻との間の子供は、
    法律上「嫡出子」として全く平等な相続権を持ちます。

多くの再婚家庭では
「現在の妻や、今の生活を共にしている子供に多く財産を残したい」
と考えるのが人情ですが、
先妻の子供を完全に除外することは法的に困難です。

  1. 遺言書でも避けられない「遺留分」の壁

テレビドラマなどで
「全財産を現在の妻に譲る」といった遺言を遺すシーンがありますが、
現実には「遺留分(いりゅうぶん)」という権利が存在します。
遺留分とは、
法定相続人に保障された「最低限の取り分」のことです。

たとえ遺言書で「先妻の子には一切与えない」と明記しても、
先妻の子が「遺留分侵害額請求」を行えば、
現在の家族はその分を金銭で支払わなければなりません。
死後に先妻の子が相続の発生を知り、
権利を主張した場合、これを拒むことはできません。

  1. 望む相続を実現するための具体策

現在の家族に最大限の資産を残し、
かつトラブルを未然に防ぐためには、以下の準備が有効です。

遺留分を侵害しない範囲で配分を決める

あらかじめ遺留分相当の額を把握し、
それを先妻の子に渡す前提で遺言書を作成する方法です。

例えば、「現在の妻、現在の妻との子1人、先妻との子1人」という構成の場合、
先妻の子の遺留分は全体の「8分の1」となります。
この最低限の範囲をあらかじめ確保しておくことで、
死後の泥沼の紛争を避けることができます。

相続税を「コスト」と捉えて最適化する

相続税は会社経営におけるコストと同じです。
生前贈与や各種控除を上手に活用して相続税を最小化できれば、
結果として現在の家族の手元に残る財産を増やすことができます。

生前の話し合いとコンタクト

心情的に難しい場合も多いですが、
生前に先妻の子と連絡を取り、
「相続放棄」について相談しておくことも選択肢の一つです。
ただし、「亡くなる前の相続放棄」は法律上無効であるため、
あくまで「死後に手続きをしてくれるよう、生前に合意し、相応の解決金を渡しておく」
といった信頼関係に基づく交渉が必要になります。

  1. 「秘密」が最大のトラブルを招く

最も避けなければならないのは、
現在の家族に過去の離婚歴や先妻の子の存在を隠したまま亡くなることです。
死後、相続手続きのために戸籍謄本を取り寄せた際、
初めてその事実を知った家族は大きなショックを受け、
パニックに陥ります。
そこから見ず知らずの先妻の子との交渉が始まれば、
精神的な負担は計り知れません。

もし現在、家族に伝えていない事実があるならば、
残される家族への責任として、
生前に正直に話し、
法的な対策(遺言書の作成や生前贈与など)を講じておくことが、
最大の愛情と言えるでしょう。

まとめ

相続トラブルは、
事後に対処しようとするから困難になるのです。
自分の健康や将来に不安がある場合は、
早めに専門家へ相談し、
遺留分を考慮した「争族」にならないための準備を始めることが、
何よりの近道です。

 

要約

- 相続権の整理
  -
先妻(離婚した配偶者)には相続権なし。
    先妻の子も現妻の子も、法律上は完全に平等な相続権を持つ。

- 遺言の限界(遺留分)
  -
「全財産を現家族へ」という遺言でも、
     先妻の子は遺留分侵害額請求(原則金銭)で最低取り分を回収できる。
     拒絶は不可。

- 実現可能な対策(3本柱)
  1)
遺留分を侵害しない配分設計(遺言):全体像を算定し、先妻の子の遺留分を前提に設計。
  2)
相続税をコストとして最適化:生前贈与・各種控除の活用で税負担を下げ、現家族の手残りを最大化。
  3)
生前の合意形成:先妻の子へ事前連絡・説明・解決金を伴う信頼ベースの調整
                               (相続放棄の約束は生前は法的効力なし死後に正式手続)。

- 最大のリスクは「秘密」
  -
家族に前婚や子の存在を隠したまま逝去戸籍で発覚し、精神的・実務的ダメージが甚大。
    正直な開示+遺言・贈与での法的整理が最良の愛情。

 

この動画から得られること

- 先妻・現妻・子の法的地位(誰に相続権があるか)の正しい理解 
-
遺留分侵害額請求(原則金銭)の実務と、侵害しない遺言設計の要点 
-
相続税を経営コストとして下げる発想(贈与・控除・資産配置)の具体策 
-
生前の連絡・説明・合意(解決金)の現実的な進め方と注意点 
-
秘密が招く最大のトラブルを回避する「開示+書面化」の型

 

例え話

相続の配分は「最終盤の将棋」に似ています。
王(遺言)だけで詰ますのは難しく、
金銀(遺留分・税・合意)を適所に配置して
はじめて勝ち筋が見えます。
盤面(家族構成)を隠したままでは、
味方の駒(家族)の連携も取れません。
見える化と布陣が要です。

 

専門家としての付加価値

- 遺留分のクイック算式(概念)
  -
遺留分算定基礎=(相続時点の財産+特別受益加算)− 債務 
  -
遺留分=算定基礎×遺留分割合(直系尊属のみ=1/3、配偶者・子がいる=1/2を各人按分) 
  -
例)現妻・現妻の子1・先妻の子1 → 遺留分は全体の1/2
           先妻の子の取り分目安=1/2×1/31/6(ケースにより変動)

- 設計SOP5ステップ)
  1)
戸籍で家族構成と相続関係図を確定(隠れ相続人をゼロに) 
  2)
財産目録を作成(現金・有価証券・不動産・保険・借入)、特別受益を棚卸 
  3)
遺留分の試算侵害しない遺言(公正証書)ドラフト(予備受遺者・遺言執行者・付言) 
  4)
税最適化:暦年贈与/配偶者控除(居住用2,000万円)/死亡保険(非課税500万円×法定相続人)/資産配置の見直し 
  5)
生前合意:先妻の子へ開示・説明解決金レンジを提示死後の放棄/取り下げを前提に信頼ベースの合意(書面化と記録)

- 注意点
  -
生前の相続放棄は無効死後の家庭裁判所手続で正式化が必要 
  -
解決金は贈与税課税の可能性金額・時期・根拠の整理(顧問税理士と一体設計) 
  -
保険の受取人設計(受取人控除・即時資金化)と遺留分の整合性をチェック

 

視聴後アクション

  1) 戸籍一式を取り寄せ、相続関係図を作成(前婚・子の有無を確定) 
  2)
財産目録と特別受益の棚卸、遺留分の一次試算 
  3)
公正証書遺言の骨子作成(配分・予備受遺者・執行者・付言) 
  4)
税最適化(贈与・保険・資産配置)と納税資金の確保策を税理士と設計 
  5)
先妻の子へ事前連絡・説明の計画を立て、合意形成の選択肢(解決金レンジ・手続)を準備

- 用語の簡潔説明
  -
遺留分侵害額請求:遺留分を侵害された相続人が、受遺者・受贈者に対し金銭での補填を請求できる権利。
  -
付言:遺言の法的効力はないが、分け方の理由や想いを伝えるメッセージ。
               争いの予防に有効。

 

補助資料

- チェックリスト(抜粋)
  -
戸籍・相続関係図の整備 
  -
遺留分・特別受益の試算表 
  -
遺言ドラフト(配分・執行者・付言) 
  -
贈与・保険・資産配置の税務メモ 

  - 生前合意(解決金)に関するリスク・文面の雛形

- テンプレ(要点)
  -
遺留分計算ワークシート 
  -
公正証書遺言 ひな形(付言・予備受遺者・執行者) 
  -
生前説明メモ(開示項目・合意オプション)

 

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