身近な親族がおらず、
相続人が一人もいない場合、
故人と特別に親しい関係にあった人が財産を受け取れる
「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」
という制度があります。
今回は、
特別縁故者として財産分与を受ける際の手続きの流れと、
知っておくべき税務上の注意点について解説します。
- 「特別縁故者」とは
特別縁故者とは、
亡くなった方(被相続人)に法定相続人がいない場合に、
以下の条件に当てはまる人を指します。
- 被相続人と生計を同じくしていた人(内縁の配偶者など)
- 被相続人の療養看護に努めた人
- その他、被相続人と特別に密接な縁があった人
- 財産分与を受けるまでの流れ
相続人がいない場合、
手続きは非常に複雑で時間がかかります。
- 相続財産清算人の選任:
家庭裁判所が、
財産を管理・整理する「相続財産清算人」
(弁護士などが選ばれるのが一般的)を選任し、
公告を行います。 - 相続人の捜索と債権者への確認:
一定期間、
相続人が名乗り出ないか、
また故人に借金がないかなどを確認するプロセスを経て、
残る財産を確定させます。 - 分与の申し立て:
特別縁故者が家庭裁判所に対し、
「財産を分けてほしい」と申し立てます。
裁判所が認めれば、
正式に財産を受け取ることができます。
※この手続きには、
最短でも9ヶ月、
長い場合は数年から10年近くかかることもあります。
- 税務上の扱いと注意点
特別縁故者が受け取った財産は、
税務上「遺贈(いぞう)」による取得とみなされ、
相続税の対象となります。
- 適用の法令:
相続税の計算には、
被相続人が亡くなった時点の税法が適用されます。 - 財産の評価時期:
財産の価値(時価)は、
実際に分与を受けた時点の価格で計算します。
亡くなってから分与まで数年空いた場合、
その間の価格変動が影響します。 - 基礎控除の制限:
特別縁故者は法定相続人ではないため、
基礎控除額は「3,000万円の一律枠のみ」となります
(「600万円×法定相続人数」の加算は受けられません)。 - 相続税の2割加算:
配偶者や子供、親以外の人が財産を取得するため、
算出された相続税額に20%の加算がなされます。 - 生前贈与の持ち戻し:
亡くなる前3年〜7年以内に受けた贈与も、
相続財産に加算して計算する必要があります。
- 申告期限
相続税の申告・納税は、
「裁判所による分与の決定を知った日の翌日から10ヶ月以内」に行う必要があります。
通常の相続(死亡を知った日から10ヶ月以内)とは起算点が異なるため注意してください。
まとめ
特別縁故者の制度は、
遺言書がなくても大切な人に財産を遺せる貴重な仕組みですが、
手続きには多大な労力と時間が必要です。
もし身近に頼れる人がいる場合は、
元気なうちに「遺言書」を作成しておくことで、
こうした煩雑な手続きを大幅に簡略化し、
確実に想いを届けることができます。
資産承継や特別縁故者に関するお悩みがある場合は、
早めに司法書士や税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。
記事の要約(MECE)
- 制度の趣旨
- 相続人がいない場合でも、被相続人と生計同一・療養看護・特別な関係にあった「特別縁故者」に、
家庭裁判所の審判で相続財産を分与できる制度。
- 流れ(手続)
1) 家庭裁判所が相続財産清算人を選任し公告(相続人探索)
2) 債権者・受遺者への弁済で残余財産を確定
3) 特別縁故者が財産分与の申立て→審判で認容→分与確定
- 課税関係(相続税)
- 取得は「遺贈」扱い。
被相続人の死亡時点の相続税法で計算。課税価格は「分与確定時点の時価」。
- 基礎控除は3,000万円のみ(法定相続人加算なし)。
2割加算の対象(配偶者・子以外)になり得る。
生前贈与の加算(持戻し期間は3年→7年へ拡大移行)。
- 申告・納付期限:分与が認められたことを知った翌日から10カ月以内。
- 実務の留意
- 手続は最短でも9カ月、長ければ数年〜10年近く要する。
時価評価・申告準備を早期に。証拠・書類の整備が不可欠。
この動画から得られること(Learning Outcomes)
- 仕組みの理解:特別縁故者の定義、手続(清算人・公告・弁済・分与申立・審判)
- 課税の要点:遺贈扱い、死亡時法×分与時価、基礎控除3,000万円、2割加算、生前贈与加算
- 期限管理:分与確定→申告・納付10カ月、長期化を見込んだ逆算スケジュール
- 評価・書類:時価評価の準備(不動産・有価証券・現金)、分与審判書・財産目録・評価明細・申告書の整備
- リスク回避:情報欠落・時効・加算税の回避、自主修正の活用、専門家
(弁護士・税理 士・不動産鑑定士)連携
例え話
特別縁故者の分与は「長距離リレー」に似ています。
スタート(清算人選任)から中継(公告・弁済)を経て、
ようやくバトン(分与確定)が渡されます。
最後の直線(10カ月の申告)でスピードを落とさないために、
前半から配布物(書類)とペース(スケジュール)を整えておくことが大切です。
専門家としての付加価値(実務の勘所)
- 手続の設計:複数財産の洗い出し→評価難物(不動産・非上場株)は早期に鑑定・時価算定を手配
- 税務の線引き:死亡時法×分与時価の併存を前提に、物件ごとに評価基準日を明確化
- 2割加算・基礎控除:法定相続人でない前提の税額試算を早期に実施(納税資金計画を同時に策定)
- 贈与加算:被相続人から特別縁故者への過去贈与の有無を網羅的に確認(3年→7年移行期の注意)
- 期限対応:長期化に備えた逆算Gantt(審判見込み→評価→申告)と、加算税回避の自主修正オプション
視聴後アクション
- まず流れを確認する
1) 清算人選任→公告→弁済→分与申立→審判確定の順番を紙に書き出しましょう。
- 必要書類を集める
2) 財産目録・通帳・不動産資料・有価証券明細・負債一覧を集め、評価が必要な資産をマークします。
- 税額の目安を掴む
3) 基礎控除3,000万円のみ・2割加算を前提に概算税額を計算。
納税資金(預貯金・売却・借入)を検討します。
- 専門家に相談する
4) 弁護士(手続)・税理士(相続税)・鑑定士(評価)に早めに相談し、
分与確定から10カ月の申告に間に合う計画を立てましょう。
「長期戦」を見据え、
今できる準備を着実に。
数字と書類で“もらった後”に慌てない体制を整えましょう。
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引用
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