相続において、
現金や預貯金、不動産などは目に見えやすいため、
手続きを忘れることは比較的少ないものです。
しかし、意外と見落とされがちなのが「株式などの有価証券」です。
今回は、株式を相続する際の手続き方法や、
万が一忘れてしまった場合のリスク、
そして事前に確認しておくべきポイントについて解説します。
- 株式は「見えない資産」になりやすい
自身の親が株式投資をしていることを知っていても、
具体的に「どの銘柄を、どのくらい持っているか」まで
把握している人は少ないのではないでしょうか。
投資家の中には
「利益が出ているときは家族に話すが、損失が出ているときは黙っている」
という心理が働く方もいます。
また、インターネット取引が普及する前の古い銘柄を、
そのまま放置しているケースも珍しくありません。
現在は「ほふり(証券保管振替機構)」の制度により、
上場会社の株券が電子化されているため、
昔のようにタンスの奥から紙の株券が出てくることはありません。
しかし、証券会社からの通知や配当金の計算書など、
手元に届く書類を注意深く確認していないと、
相続時にその存在を見落としてしまうリスクがあります。
- 見つけにくい「非上場株式」の存在
上場企業の株だけでなく、
以下のような「非上場株式」を保有しているケースは、
発見がさらに困難です。
- 地域密着型の古い企業:
例えば、かつての「ナゴヤ球場」のように、
地域住民が協力して設立した会社の株。 - 鉄道会社の株:
非上場で第三者割当を行っている鉄道会社の株。 - 創業に関わった会社の株:
創業メンバーとして出資し、
退職後も株式を持ち続けているケース。
非上場株式の場合、
会社側が株主の名簿管理を独自に行っているため、
証券会社を通じて照会することができません。
また、会社側が財務情報の開示に消極的な場合、
相続人が株の評価額を算定するだけでも一苦労となります。
- 株式の遺産分割、3つの方法
株式をどのように分けるかについては、
主に以下の3つの方法があります。
- 現物分割:
株式をそのまま相続人で分け合う方法。
(例:100株を50株ずつ分ける) - 換価分割:
株式をすべて売却して現金化し、
その現金を相続人で分ける方法。 - 代償分割:
相続人の一人が株式をすべて引き継ぐ代わりに、
他の相続人に対して法定相続分に相当する現金を支払う方法。
非上場株式や価値が変動しやすい株式の場合、
相続人間での合意形成が難しく、
争いの種になることもあるため、
どの方法が最適かを慎重に検討する必要があります。
- 手続きを忘れた際のリスク
相続税の申告期限である「10ヶ月」を過ぎてから株式が見つかった場合、
以下のようなペナルティや手間が発生します。
- 修正申告の必要性:
遺産分割協議書を再度作成し、
相続税の修正申告を行う必要があります。 - 過少申告加算税:
本来よりも少なく申告していたことに対するペナルティ(税金)が課されます。 - 延滞税:
期限から遅れた期間に応じた利息としての税金が発生します。
悪意がなくても、
結果として余分な税金を支払うことになってしまいます。
- まとめ:生前の「資産一覧」作成が最善の策
株式の相続で最も大切なのは、
「生前の確認」です。
- 親がどの証券会社と取引があるか、名刺やDMを確認しておく。
- 配当金の振込履歴がないか、通帳を確認する。
- 可能であれば、親が元気なうちに「資産一覧表(財産目録)」を作っておいてもらう。
非上場株などの見つけにくい資産については、
親戚や昔の仕事仲間にそれとなく聞いてみるのも一つの手です。
相続税申告の10ヶ月という期間は、
意外とあっという間です。
後から「こんな株を持っていたのか」と慌てないよう、
早め早めの準備を心がけましょう。
要約
- 株式は「見えにくい相続財産」。
証券会社の口座や非上場株を把握できず、相続時に発見が遅れるケースが多い。
- 上場株はほふり(証券保管振替機構)で電子化済だが、
特別口座や休眠口座、古い名義のまま放置が見落としの主因。
- 非上場株は株主名簿管理人(多くは信託銀行)や発行会社で管理。
情報開示が乏しく、評価・名義書換の実務負荷が高い。
- 遺産分割は現物分割・換価分割・代償分割の3類型。
非上場株や価格変動が大きい銘柄は合意形成が難しく、設計が要点。
- 手続きを忘れると、修正申告・過少申告加算税・延滞税の負担が発生。
10か月の申告期限内に網羅的な洗い出しが不可欠。
- 最善策は「生前の資産一覧化(財産目録)」。
証券会社の取引先、配当入金履歴、株主通信の送付先を整えておく。
この動画から得られること
- 上場株・特別口座・休眠口座を含む「口座の見つけ方」と照会手順
- 非上場株の所在確認、株主名簿管理人(信託銀行等)へのアプローチと評価の勘所
- 相続での名義書換・相続届の実務(必要書類と注意点)
- 現物分割・換価分割・代償分割の選択基準とトラブル回避策
- 10か月期限を前提にしたスケジュール設計と、修正申告・加算税・延滞税の最小化
- 生前の資産一覧化(財産目録)の作り方と、家族での情報共有プロトコル
専門家の付加価値(実務ポイント・チェックリスト)
- 発見ルートの優先順位
- 通帳の配当入金履歴→証券会社の特定
- 郵送物(取引報告書・配当計算書・株主通信)→銘柄と口座の紐付け
- ほふり経由の口座照会(証券会社ごと)と特別口座の有無確認
- 非上場株は発行会社/株主名簿管理人(信託銀行)へ照会
- 必要書類の標準セット
- 被相続人の除籍・改製原戸籍、相続人の戸籍、法定相続情報一覧図
- 遺言書または遺産分割協議書、印鑑証明、本人確認書類
- 証券会社所定の相続届、名義書換請求書(非上場は発行会社所定)
- 名義書換と売却の判断軸
- 流動性(上場・非上場)、議決権の集中度、配当方針、評価変動リスク、相続人の資金需要
- 分割スキームの選定
- 現物分割:少数口座・少額銘柄でシンプルに
- 換価分割:価格変動が大きい・合意困難時
- 代償分割:非上場株や議決権の維持が重要な場合(代償資金の手当計画を同時設計)
- タイムライン管理(10か月対応)
- 0〜1か月:口座・銘柄・非上場株の所在確定
- 2〜4か月:必要書類収集・評価・分割方針の合意
- 5〜8か月:名義書換・売却実行・納税資金手当
- 9〜10か月:申告・納税、漏れの最終チェック
- リスク低減
- 修正申告が不可避な場合は早期に自主修正で加算税軽減
- 相続人代表を一本化し、証券会社との窓口を集約
視聴後アクション
- 今日やること:通帳の入出金履歴を確認し、配当入金のある口座と証券会社名を書き出してください。
郵便物の「配当計算書」「取引報告書」も一か所に集めます。
- 今週中:証券会社のコールセンターに「相続手続き窓口」を確認し、相続届の必要書類リストを入手。
非上場株が疑われる場合は、会社名と株主名簿管理人(信託銀行)を調べます。
- 今月中:遺産分割の方針(現物・換価・代償)を家族会議で決定。
代償分割なら資金手当(預金・保険・融資)の見通しを立てます。
- 期限まで:名義書換・売却を完了し、10か月以内に相続税を申告・納付。
もし後から株が見つかったら、すぐに税理士へ連絡し、修正申告で余計な加算税を抑えます。
- 迷ったら:専門用語は不要です。
通帳・郵便物・本人確認書類を持参し、
税理士・証券会社に「相続で株を整理したい」と伝えるだけで始められます。
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