相続対策として「生前贈与」を検討する際、
主に「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの制度のどちらを選択するかが
重要なポイントとなります。

  1. 2つの制度の基本概要
  • 暦年課税制度(れきねんかぜいせいど)
    最も一般的な贈与の方式です。
    年間110万円までの贈与であれば非課税となります。
    毎年コツコツと資産を移していくことで、
    将来の相続財産を減らす効果があります。
  • 相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)
    原則として60歳以上の父母または祖父母から、
    18
    歳以上(制度利用当時は20歳以上)の子や孫に対して
    贈与する場合に選択できる制度です。
    累計2,500万円までの贈与が一時的に非課税となります。
    ただし、
    その名の通り「相続時に精算」する制度であり、
    贈与した財産は将来の相続時に
    「贈与時の時価」で持ち戻して相続税を計算することになります。
  1. 事例で見る「相続時精算課税」の活用

今回ご相談いただいた事例では、
85
歳の祖母が、
住宅購入を予定している孫(30代)に対して資金援助を検討していました。

ハウスメーカーや不動産業者からは
「おばあちゃんのキャッシュで支払って、名義をお孫さんにすればいい」
と安易に勧められるケースも少なくありません。
しかし、何も対策をせずにこれを行うと、
多額の贈与税が発生したり、
将来の二次相続で不利益を被ったりするリスクがあります。

このケースでは、
2,500
万円の非課税枠がある「相続時精算課税制度」を活用し、
お孫さんの名義で資金を贈与することで、
当面の贈与税負担を抑えつつスムーズな住宅取得を支援することが可能になります。

  1. 「相続時精算課税制度」のメリットとデメリット

【メリット】

  • 多額の資産を一度に移せる
    2,500
    万円まで非課税で贈与できるため、
    住宅購入資金などの大きな資金移動に向いています。
  • 値上がりが見込まれる財産に有利
    相続税の計算には「贈与時の時価」が適用されます。
    そのため、将来的に値上がりしそうな不動産や株式を早めに贈与しておけば、
    将来の増税分を回避できる可能性があります。

【デメリット・注意点】

  • 暦年課税(110万円枠)との併用不可
    一度この制度を選択すると、
    その贈与者からの贈与については、
    二度と「暦年課税(年間110万円の非課税枠)」に戻ることはできません。
  • 「小規模宅地等の特例」が使えない
    相続税対策で非常に効果の高い
    「小規模宅地等の特例(自宅の評価額を最大80%減額できる制度)」は、
    生前贈与された土地には適用できません。
  • 相続時に税負担が出る可能性がある
    贈与した財産が相続時に加算されるため、
    結果として相続税の支払いが発生する場合があります。
  1. 専門家への事前相談が不可欠な理由

不動産業者やハウスメーカーは
「物件を売ること」「資金を工面すること」のプロですが、
税制の細かな仕組みや将来の相続税への影響まで深く理解しているとは限りません。

「良かれと思ってやったことが、後から取り返しのつかない税負担を招く」
という事態は避けなければなりません。
特に土地や建物といった大きな資産が絡む場合は、
制度を総合的に判断する必要があります。

贈与を実行してから
「やっぱり別の制度にすればよかった」と後悔しても、
やり直しは不可能です。
案件が上がってきた段階で、
まずは信頼できる顧問税理士や専門家に事前相談を行い、
ご自身の状況に最適なアドバイスを受けることが、
確実な相続対策への第一歩となります。

要約

- 生前贈与の二本柱
  -
暦年課税:年間110万円まで非課税。
                      毎年こつこつ移転して相続財産を縮小。
  -
相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与時は非課税。
                                ただし相続時に「贈与時価」で合算し精算。

- 事例の適用示唆(祖母孫の住宅取得支援)
  -
祖母(85歳)孫(30代)への住宅資金は、相続時精算課税で名義を孫にしつつ大口移転が可能。
    無策での立替払い・名義合わせは高額贈与税や将来の不利を招く。

- 相続時精算課税の要点(メリデメ)
  -
メリット:2,500万円まで一括移転/値上がり資産を早期移転で有利。
  -
デメリット:選択後は当該贈与者から暦年課税に戻れない
                     /小規模宅地等の特例が原則使えない
                     /相続時に税負担が生じうる。

- 実務の落とし穴
  -
書面不備(贈与契約・入出金経路)で「名義預金」扱いのリスク
  /不動産は贈与時点で同族内移転に伴う諸税・登記費用
  /将来の二次相続の偏り。

- 結論
  -
制度選択は「目的・資産の将来価値・家系の相続構造」を踏まえた総合判断。
    大口案件は必ず事前に税理士へ相談し、失敗のやり直し不可を回避する。

 

この動画から得られること

- 暦年課税と相続時精算課税の構造と向き不向きの明確化
-
住宅資金贈与で税負担・名義・将来の不利を避ける実務手順
-
相続時精算課税のデメリット(戻れない/特例制限/相続時精算)の回避設計
-
名義預金・立替払いの否認リスクを防ぐ書面と入出金の型
-
家系全体(一次・二次相続)での最適化フレームと相談ポイント

 

例え話

生前贈与の制度選択は、
片道切符と回数券の選択に似ています。
相続時精算課税は「片道切符」

——一度乗れば途中で回数券(暦年課税)に戻れません。
大きく早く移動するには有利ですが、
途中下車(相続時精算)の費用も見込んだ計画が要ります。

 

専門家としての付加価値

- 制度選択の意思決定ツリー
  1)
目的は「住宅等の大口一括支援」か「長期分散移転」か
     -
一括:相続時精算課税を一次選択
     -
分散:暦年課税を基本
  2)
対象資産は「値上がり見込み」か「横ばい〜下落」か
     -
値上がり:早期移転(精算課税)優位
     -
横ばい:暦年で十分
  3)
将来の相続特例(小規模宅地等)を使う可能性は高いか
     -
高い:現時点の生前移転は抑制
     -
低い:精算課税も選択肢

- 相続時精算課税の実務ポイント
  -
贈与者:60歳以上の父母・祖父母/受贈者:18歳以上の子・孫(年齢要件の確認)
  -
必須書類:贈与契約書(目的・額・日付)/受贈者名義口座への入金エビデンス/登記・請負契約の名義一致
  -
将来精算:相続時に贈与時価で合算する前提でキャッシュ確保計画を並走

- 暦年課税の実務ポイント
  -
110万円以下は原則非課税でも、贈与の事実(意思表示・受領・資金移動)の証拠を整備
  -
「生活費・学費」の授受は原則非課税の範囲も、恒常的・過大は注意

- 注意論点(否認・不利益の芽)
  -
名義預金:贈与の実質(支配・管理)が贈与者に残ると否認リスク
  -
小規模宅地等の特例:生前移転した宅地は原則対象外(将来の居住・事業の実態も勘案)
  -
住宅取得非課税の特例:年度ごとに枠・要件が変動。併用可否は最新の国税庁資料で確認

 

視聴後アクション

- 具体ステップ
  1)
目的を一文で定義(例:孫の住宅資金を今年中に2,000万円支援)
  2)
対象資産の将来見通しを整理(値上がり/横ばい)し、制度の一次選択を仮決定
  3)
贈与契約書の草案作成(目的・金額・日付・当事者)と入出金フロー図(贈与受贈口座支払)
  4)
家系の相続構造(一次・二次)と小規模宅地等の特例見込みを専門家と確認
  5)
申告・届出・登記のスケジュール表を作成し、証憑の保管フォルダを用意

- 用語の簡潔説明
  -
名義預金:名義は家族でも、管理・支配が贈与者にある預金。
                      相続財産へ組入れリスク。
  -
小規模宅地等の特例:一定要件の宅地評価を最大80%減額。
                                       生前移転宅地は原則対象外。

 

補助資料

- チェックリスト(抜粋)
  -
贈与目的・金額・時期の定義/贈与契約書の作成有無
  -
受贈者名義口座への資金移動エビデンスの確保
  -
不動産の名義・請負/売買契約名義の一致
  -
小規模宅地等・他特例の将来適用可能性の検討メモ
  -
相続時精算課税選択届出の要否・期限の確認

- 相談テンプレ(要点)
  -
件名:生前贈与(暦年/相続時精算課税)の制度選択と住宅資金贈与のご相談
  -
本文:家族構成/贈与目的・金額・時期/対象資産の見通し/特例の想定/確認したい論点と希望期限

 

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