【インボイス制度】課税事業者が免税事業者との取引で注意すべき法的リスクと交渉術
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、
買い手側が仕入税額控除を受けるためには、
登録事業者から発行された適格請求書の保存が必須となりました。
これに伴い、
取引先が免税事業者である場合に、
下請法や独占禁止法に抵触するようなトラブルが懸念されています。
優越的地位の乱用と法的リスク
取引上の優位な立場にある事業者が、
その立場を利用して相手に不利益を強いることは
「優越的地位の乱用」にあたります。
インボイス制度に関連して、
特に以下の3つの行為を強制することは、
下請法や独占禁止法違反となる可能性が高いため、
厳に慎まなければなりません。
- インボイス登録の強制:
免税事業者に対し、
課税事業者への転換を強要すること。 - 一方的な値下げ要求:
「控除できない消費税分を値引け」と、
ダイレクトかつ一方的に要求すること。 - 一方的な取引打ち切り:
課税事業者にならないことを理由に、
交渉もせず契約を解除すること。
これは銀行が融資の条件として
コンサルティング契約や保険加入を迫る行為が禁止されているのと同様、
取引上の優位性を背景にした不当な圧力とみなされます。
違反にならないための交渉方法
法的リスクを避けるために最も重要なのは、
「双方の合意」です。
制度変更に伴い、
自社の税負担が増えるといった事情を説明し、
今後の取引条件について誠実に協議を行うこと自体は問題ありません。
一方的な通告ではなく、
双方が納得できる着地点を見つけるための対話が不可欠です。
また、
免税事業者が新たに課税事業者になった場合の負担を軽減する制度として、
売上税額の2割を納税額とする
「2割特例」などが設けられています。
こうした制度の存在を共有し、
無理のない取引継続を模索することが、
健全なビジネス関係の維持につながります。
日本の税制への提言:公平な税の在り方とは
そもそも、
日本の消費税制には根本的な課題があると感じます。
ヨーロッパのように、
生活必需品を免税(ゼロ税率)とし、
贅沢品には高い税率を課すといった徹底した仕組みが取られてきませんでした。
現状のインボイス制度は、
元々の税制にあった綻びを小手先の修正で繕っているに過ぎず、
結果として複雑な事務負担を現場に押し付けています。
政治や行政は、
増税や出世といった目先の利益ではなく、
100年先を見据えた公平で納得感のある税制を構築すべきではないでしょうか。
納税は国民の義務ですが、
それは誰もが「公平である」と納得できる仕組みであって初めて成り立つものです。
場当たり的な制度運用で現場に混乱を招くのではなく、
一度仕組みを白紙に戻してでも、
本来あるべき税の在り方を考え直すべき時期に来ているのかもしれません。
今後の展望
不動産投資の現場や周辺の取引においても、
インボイス制度による実務上の影響は多岐にわたります。
今後も具体的な事例や実例を収集し、
皆様に役立つ情報として共有していきたいと考えています。
要約
- 何が変わったか
- 2023年10月開始のインボイス制度で、
買い手が仕入税額控除を受けるには「適格請求書(登録番号付)」の保存が必須に。
- どこがリスクか(法務)
- 免税事業者に対し、
(1)登録の強制、
(2)控除不可分の一方的値下げ、
(3)一方的打切り—は、
下請法や独占禁止法(優越的地位の濫用)に抵触し得る。
- どう交渉すべきか(実務)
- 基本は「双方合意」。
自社の税負担増の経緯と根拠を示し、価格・条件調整を粘り強く協議。
合意過程と決定内容を記録化。
- 免税→課税転換の負担軽減策(2割特例:2023/10〜2026/9)の情報共有、
経過措置(免税事業者からの仕入80%→50%→0%控除)を踏まえた段階的調整。
- 何を準備すべきか(ガバナンス)
- 取引先の登録状況の洗い出し、
社内購買フローのアップデート(適格番号の収集・検証)、
価格改定の方針と文面テンプレ、
交渉記録の整備。
- 提言(制度論)
- 生活必需品のゼロ税率や簡素な運用など、長期視点の公正な消費税制設計が必要。
現場負担と取引紛争を抑える制度改善が望まれる。
例え話
橋の通行ルール(インボイス)が変わったからといって、
後ろからクラクションを鳴らして相手を押し出す(強制・一方的値下げ)のは違反です。
譲り合いの合図(情報開示)と合意のサイン(書面化)で、
安全に渡るのが正解です。
専門家としての付加価値
- 法務・コンプライアンス
- NG行為の具体例:登録強制、対価の減額・一方的変更、協賛・費用負担の押し付け、合理性なき打切り。
- 下請法の対象判断(資本金要件等)を法務で事前チェック。
独禁法は資本金に関わらず適用可能性あり。
- 税務の要点
- 経過措置(免税仕入の控除割合):2023/10〜2026/9=80%、2026/10〜2029/9=50%、2030/10以降=0%。
- 2割特例(新規課税転換者):2023/10〜2026/9の各課税期間、納税額=売上税額×20%で簡便計算可。
- 交渉設計(テンプレ骨子)
- 目的と背景:制度変更での税負担増の見える化(試算表添付)。
- 提案:価格・条件の段階的見直し案(経過措置期間に合わせた逓減)。
- 配慮:2割特例、事務負担軽減策(発行頻度・フォーマット統一)を併記。
- 合意:発効日・適用範囲・見直しタイミング。署名と議事録保存。
- 証跡・運用
- 適格番号の収集・検証(国税庁サイトAPI/CSV)、
請求書フォーマット統一、
社内購買マニュアル改定、
交渉記録(メール・議事録・試算)の保全。
この動画から得られること
- 下請法・独禁法で問題となる行為(登録強制・一方的値下げ・打切り)の具体像
- 2割特例(2023/10〜2026/9)と控除経過措置(80%→50%→0%)の使い分け
- 合意形成型の価格・条件調整フレーム(資料・手順・文面)
- 適格請求書番号の収集・検証と購買フロー改定のポイント
- 交渉記録の作り方(議事録・メール・試算表)とリスク管理
- 中長期の税制設計に関する視座(負担の公平と現場運用の簡素化)
視聴後アクション
- 取引先を整理する
- 免税/課税・登録番号の有無を一覧にし、金額ベースで優先度を付ける。
- 社内ルールを直す
- 請求書の受入条件に「適格番号記載・検証」を追加。検証方法と保管先を決める。
- 価格調整の案を作る
- 経過措置に合わせた段階案(例:80%期間は据置/その後は一部見直し)を試算し、上申用の1枚資料に。
- 交渉の準備をする
- 提案文(背景・負担増の根拠・調整案・実施時期)をテンプレ化。面談議事録フォーマットを用意。
- 制度情報を共有する
- 2割特例や登録手順の説明資料を同封し、相手の事務負担軽減策も提示する。
- 記録を残す
- 交渉メール、議事録、試算表、合意書をフォルダ管理。更新履歴を付ける。
まずは「棚卸・設計・合意」です。
今日、取引先の登録状況リストを作成し、
経過措置に沿った価格調整案を試算。
適格番号の受入ルールと交渉テンプレを整え、
面談日程を確定してください。
合意と記録で、
控除と関係性の両方を守れます。
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