日本の多くの家庭にとって、
自宅の庭に神々を祀る習慣は伝統の一部です。
このように、
敷地内にある日常礼拝用のご神体のことを『庭内神し(ていないしんし)』といいます。
自宅に庭内神しがある場合、
一定の条件を満たしていれば相続時に庭内神しの敷地が非課税対象になります。
今回は、自宅に庭内神しがある場合の土地評価について解説します。
お稲荷さんには相続税がかからない?
『庭内神し』とは、
ご神体を祀る小さな社や祠など自宅の敷地内に設けられた日常礼拝の用に供しているものの総称です。
ここでの『ご神体』とは、
「稲荷、不動尊、道祖神など、特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているもの」を指します。
墓所、霊廟および祭具ならびにこれらに準ずるものは相続税法上の非課税財産と定められており、
庭内神しは「これらに準ずるもの」として、非課税財産として取り扱われます。
一方で、
庭内神しのある敷地については、
庭内神しとは別個のものであり、
相続税の非課税の適用対象とならないものとして取り扱われてきました。
しかし、
2012年に国税庁が庭内神しのある敷地などに関する相続税の非課税規定の取扱いの変更を公表し、
庭内神しのある敷地やその附属設備も非課税財産として認められることになりました。
現在、庭内神しのある敷地やその附属設備は相続税の非課税財産に該当すると一般的に考えられることが多いのですが、
ただちに非課税財産と認められるわけではないため、注意が必要です。
国税庁によると、
以下の3点を踏まえたうえで、
庭内神しと社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといえる相当範囲の敷地や附属設備である場合には、
庭内神しと一体の物として相続税の非課税財産に該当すると判断しています。
1.庭内神しの設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
2.その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
3.現在の礼拝の態様等も踏まえたうえでのその設備及び附属設備等の機能
また、
非課税財産と認められるためには、
設置から一定の時間が経過し、
その機能が実際に社会的に認識されていることが必要です。
そのため、
相続直前に神社や祠を設けた場合は、
非課税財産として認められないことがほとんどです。
庭内神しがあるからといって、
無条件に相続税法上の非課税財産として取り扱われるわけではありませんので、
今一度要件を確認することに留意しましょう。
相続税の申告時に注意すべき点
前述のとおり、
庭内神しの敷地やその附属設備については、
2012年に相続税の非課税規定の取扱いが変更されています。
そのため、
直近に土地を相続し、
その土地に庭内神しの敷地が含まれている場合は、
過去に非課税財産にならなかったといって、
庭内神しの敷地を土地の評価額に含めてしまうと非課税の恩恵を受けることができないので注意しましょう。
なお、
庭内神しの敷地やその附属設備を、相続税法上の非課税財産とするためには、面積を算出するための現地調査が必要です。
具体的には、
庭内神し設備の距離を計測して図面を作成したうえで、
面積を算出し、
その面積分を差し引いて土地の評価額を出すことで、
非課税財産として扱われます。
また、
すでに土地を相続された方で、
庭内神しの敷地が存在するが相続税の申告時に現地調査を行なっていない場合、
対象となる敷地の面積がわからないため土地評価額の減額がされていない可能性があります。
その場合、
相続税の申告期限から5年以内であれば、
税務署に対して『更正の請求』を行うことで相続税の還付を受けられる場合があるので、
可能性がある方は専門家に相談してみましょう。
庭内神しが自宅の敷地内にある場合、
一定の条件を満たせばその敷地や附属設備は非課税対象となり、
土地の評価額から省いて相続税を算出することができます。
しかし、
前述のとおり、
庭内神しの敷地やその附属設備が非課税財産と認められるためには一定の条件があります。
相続が間近になって後からご神体などを追加した場合は認められない可能性が高いなど、
ご自身での判断がむずかしいケースも十分に考えられますので、
その分野に精通した専門家に相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。
引用
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