相続税の税務調査で、
申告漏れが指摘される財産の一つに名義預金があります。
相続人名義の口座でも
実質的に被相続人の資産と税務署が判断すれば、
名義預金とみなされることがあります。
今回は、
名義預金の判断基準と認定を避ける具体的な対策を解説します。
名義預金をめぐる裁判事例として、
妻名義の預金が名義預金と認定された事例を紹介します。
この事例では、
病弱だった被相続人が妻の将来を心配して、
預金口座を妻名義にしていました。
妻はその講座で独自に証券取引などを行なっており、
また、
不動産も被相続人から妻に生前贈与を行い、
その名義変更と贈与税の申告をしていました。
判例では、
夫婦間において
妻が夫の財産を管理・運用することは必ずしも不自然ではなく、
それだけで妻が所有者であるとは言い切れないと判断されました。
さらに、
預金については、
贈与契約書が作成されておらず、
贈与税の申告もなされていなかったことから
他の財産の贈与の事実と比較して、
生前贈与の成立は認められませんでした。
相続で名義預金とみなされないようにするためには、
次のような対策を講じることが重要です。
①出捐者から名義人である配偶者や子供に管理・運用を変更するため
名義人に通帳を渡し、登録の印鑑を変更するなど、
名義人が自由に預金を使える状況にする。
②贈与契約書を作成し、贈与の事実を記録する。
③現金の手渡しを避け、銀行振込で記録する。
④贈与税の申告を行い、贈与の適法性を証明する。
家族が将来も安心して生活できるよう
今のうちに相続対策を始めることが大切です。
まず、預金の名義や内容を確認しましょう。
目的と前提
– 対象読者:相続税申告を予定・検討している方、不動産オーナー、資産管理担当者、税務・法務の実務者
– 主題:相続税調査で問題になりやすい「名義預金」の判断基準と予防策、関連判例の要点
重要ポイント(要旨)
名義預金の典型的判断要素
– 資金の出所(誰が拠出したか/生活費の余剰か)
– 口座開設の経緯と通帳・印鑑・カード・IDの管理者
– 利息・運用益の帰属と実際の使途決定者
– 贈与の成立要件(贈与意思の合致・履行=資金移転・受贈者の支配、申告の有無)
判例の示唆
– 妻の運用があっても、贈与契約書・贈与税申告がなく、
管理や資金源が被相続人と評価されれば名義預金認定の可能性
認定回避の実務対策
– 通帳・印鑑・カード・オンライン権限を名義人へ移管
– 贈与契約書を作成し、振込で資金移動を記録
– 必要に応じ贈与税の申告を実施
– 名義人による独自の使用実績(生活費・投資・納税など)の蓄積
名義預金に関する誤解と対策
税理士法人 A to Y
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